
村上春樹と同じくノーベル賞候補と知って手にとってみた。
ドイツ語でも文章を書いている人。。すごいな。。。
生き方の憧れになった。
言葉に対してとても丁寧に生きている印象を受けた。こんな意識を「ラップを書いてみたくなる」とかおちゃめなところもある。非常に素敵な人だと思う。
この本を読んでいると、多和田さんの比喩というか発想が非常に柔軟であることがよくわかる。「スイスを平らに伸ばしたら」とか。The Blue Heartsの「千のバイオリン」の歌詞を思いだした。
通勤中にこの本を読む時間は幸せだった。
P5
スイスには深い谷間と高い山がたくさんある。もし大きなアイロンでスイスを平らに伸ばしたら、とても大きな国になるに違いない
-> What a thought. I'd never imagined it.
P18
神経という日本語はオランダ語の「Zenuw」の訳。杉田玄白たちが訳した「解体新書」に初めて姿を表した。……それ以前は何と言ってたのか。
「にくきもの」が近いかも知れない。不快さを神経に触ると言って痛みを感じるのではなく、「にくい!」と突き放すところに平安時代の健康さを感じる。
P20
芯の柔らかい鉛筆が好き
→Me, too
P33
作家が自分の書いた本の一部を朗読して聴衆の質問に答える催しは、ドイツではごく日常的に行われている。
→いいね。こういうことを提供できる場所を作れたらと思う。
P35
どこかに絶対の規制が存在すると仮定するよりも、全てが常に運動の中にあると考えた方が言語とは付き合いやすい
P39
レヴィ=ストロースは1977年と1988年の間に5回も日本を訪れた。
→知らんかった。。
P41
古事記にエキゾチックな生き物が出てくる。鰐(ワニ)が出てくる。でも、わにはサメ・フカを意味するという方言という学説もある。
-> Very insteresting
-> このエッセイは素晴らしい。終わり方。「鰐のように口をあけて笑った。」漢字も「口」が2つも使われた漢字。This essay is constructed so well.
P49
推敲について
そしていつの日か、「これでいい」が「これ以上いじると悪くなる」に変わる瞬間が訪れる。……それまでに何晩も眠らなければならない。深い眠りが良い推敲の条件である。眠りによって、全体をばっと動物的にとらえる能力が脳の全面に出てくる。この能力がなければ、何時間推敲しても意味がない。どこにどういう単語をどう使えば決め手になる要素は山のようにある。仮に今わたしがライオンであったとして、少し先に鹿の姿が見えたとして、少し先に鹿の姿が見えたとする。風向き、草の濡れ具合、鹿の立ち位置、鹿の年齢、自分の今日のコンディション、など個々にいちいちチェックして計算していたら、鹿は逃げてしまう。一瞬にして総合的判断をする必要がある。
P52 やれやれ
「thank God」。神なき国の訳。「やれやれ」
->やれやれ
P61
「駄」という漢字はS56年に常用漢字に加えられた。
P79 「けり」について
「けり」という助動詞が日本語から消えた。岩波古語辞典によれば、「けり」の意味は「そういう事態なんだと気がついた」ということ。
->確かにすごい言葉だと思う。
P114
ドイツでは夏目漱石はほとんど知られていない
->明治というか日本人的な葛藤はドイツ人には無いのかも知れない
P126 エクソフォニー作家
エクソフォニーはドイツ語で日本語の外に出た状態一般を指す
P133
「不安」という言葉は、利益のみを求める工業社会に生きる個人の生活感覚を表す言葉として、20世紀始めに流行しだした。曰く、夏目漱石の「それから」
P160 トルコ語の表記
1928年にアラビア文字を廃止して、アルファベット表記に改め、その際、アラビア語からの外来語を人工的に減らしたらしい、とはいえ、まだかなり多い。
P161 早起きは三文の徳
「得」ではないのだ。。。
P162
「わたしのようなミツバチがたくさん、花から花へ飛びうつり、蜜を運び、少しずつ混ぜていく。ミツバチはそれぞれ個性があるが、身体が小さいのが共通の特注である。自分の羽では小さすぎるので、ペガサスやコウノトリやガルーダや鶴に乗せてもらって空を飛ぶ。中央司令部のようなものは全く存在せず、それぞれがそれぞれの思惑で飛び回っている
->いい表現だと思う、とても。
P166 歌謡曲
歌謡曲は、自分で選んで聴く好きな音楽と違って、本人の意思に反して記憶に刷り込まれるので、それがよみがえってきた時、共同体の時間がよみがえり、わたし個人が選んだわけではない時代の色や匂い、雰囲気などに取り巻かれる。
->この洞察力。すごい。。
P187 主語を省略できる言語
六対一の割合で、主語を省略できる言語の方が多い。
->実際の割合は知らんが、多いことに間違いはないだろう。
P195
人間が時間を区切っている。自然は関知しないよね。
P226 トーマス・マン
物語の展開に合わせて、文体を変えて書いていた。
美少年が現れた瞬間にすっきりとした文体に変えたり。。
P229
何度も同じ夢にうなされる人はその夢の続きを自分で書いてしまうと良いらしい