自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

ちょっと早いのですが、芭蕉の秋

2013年08月28日 | Weblog

   此の道や行く人なしに秋の暮

 或る連句の席でこの句は詠まれたが、その時もう一句、

   人声や此の道かへる秋の暮

もつくり、「此二句の間、いづれをか」と門人らに示したという。良い方を発句にしようというのである。それで、前句の方が良いということになって、これを発句として半歌仙(十八句の連句)が巻かれた。
 しかし、この二句はどちらが良いというものではなく、芭蕉の内面では等量の重みをもっていたのではないか。人の群の中で生きることと、単独者として生きることは、芭蕉にとっては二者択一の問題ではなかったと思う。人の群の中で生きながら、なお単独者として己の道を追求したのが芭蕉だったと思う。
 芭蕉でなくても、秋には人の群の中で単独者でいる己を見出すこともあろう。

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