ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

成瀬巳喜男・24~『娘・妻・母』

2020年07月07日 | 日本映画
『娘・妻・母』(成瀬巳喜男監督、1960年)を観た。

東京は山の手らしき所。
坂西一家。
長男の勇一郎と妻和子には子がいて、母あき以外に三女春子も同居している。

そんな時、夫と何となくうまく行っていない長女早苗が遊びに来ていて、運悪くその里帰り中に夫が事故で亡くなってしまう。
その後、早苗は離縁され、実家に戻って来て生活費を入れながら住むことになる。
坂西家には、嫁いでいる二女薫や、結婚して他に住んでいる次男礼二も何かと出入りしている。

勇一郎は、妻和子の叔父である鉄本庄介の町工場に資金を投じている。
その鉄本がもう少し融資してくれるよう、勇一郎に金の無心をしてくる。

夫に死なれた早苗は実は、夫の生命保険の金100万円を手にしている。
鉄本に頭を下げられた勇一郎は、早苗から50万円を融通してもらう。
姑とうまく行っていない二女薫は、姑と離れて暮らしたいと早苗に頼んで20万円借りることに成功する。

ある日、鉄本の工場は人手に渡り、本人も行方をくらましてしまった。
実は、融資していた勇一郎は、兄弟にも黙って家を抵当に入れていたため、ことは大事になってくる・・・

元々、早苗以外の勇一郎の兄弟は、いずれの相続の時は、この家の価値を見積もってなにがしかのお金が入るのを期待している。
だから、家を手放さなければいけない家族会議の内容も深刻になってくる。

いつものと言っては悪いが、成瀬特有のお金にまつわるニッチもサッチもいかない話。
そんな中、三女春子の関係で、早苗は醸造技師をしている黒木信吾と知り合う。
早苗、原節子。黒木、仲代達矢である。

黒木は早苗が好きになる。
早苗は黒木に惹かれながらも、若い黒木をやんわりとかわす。
仲代達矢の情熱を秘めた想いが凄い。
とうとう二人はキスをする。
原節子と仲代達矢がキスをするのである。
実際にはしていないかもしれないが、観ている方としては衝撃的な事柄である。

早苗は黒木の将来も考え、見合い相手である京都のお茶の宗家、五条宗慶のところへ嫁ごうと決心する。
なにしろ早苗にとって、実家が売り払われるとなると、母親あきをどうするかということが切実な問題である。
五条宗慶は、一緒になるのなら母親も連れてきていいと言うのである。
この五条宗慶が、上原謙。

片や、勇一郎夫婦。妻和子は、小さなアパートに住むことになってもお母さんとうまくやっていけるのではないかしらん、とそのようなことを夫に言う。
勇一郎が森雅之で、和子は高峰秀子のコンビ。

一方、母親のあきは老人ホームにでも入ろうかなと考えている。

そんな風に、物語は解決を与えずに終わる。
だが、この作品には何度でも観てみたいとの想いをそそられる。
それは、我々の身近な現実の要素が散りばめられていて、そうだそうだと自然と納得させられてしまうからではないか。
小津もそうだけど、このような成瀬の映画にはとっても惹かれる。



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2 コメント

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ツカヤスさまへ (くりまんじゅう)
2020-07-08 17:49:56
この作品は観てないですが1960年とは もう60年前になりますね。
なかなかの豪華配役で今現在 健在なのは草笛光子
仲代達矢・宝田明さんがすぐに浮かびますが あとはもういませんね。

原さんが未亡人で 事故死した夫の生命保険代が当時としては
すごく大金の100万円はいって そのお金を巡り話は展開していくのですね。
原さんと仲代達矢氏とのキスシーン 見たかったなぁ。

三益愛子さんは以前BSプレミアムで 溝口健二監督の
『赤線地帯』で年配の娼婦を演じた姿が思い出されます。
この作品はバックに流れる音楽も ひゅ~~んという独特のものでした。

総天然色 冷房完成 という文字が時代を物語っており いいですね。 
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>くりまんじゅうさんへ (ツカヤス)
2020-07-08 20:38:11
この作品、珍しくカラーでした。
そして、内容、人物設定としては他の作品とよく似ているところがありました。
高峰秀子の叔父で町工場をしているのは加東大介とか、二女草笛光子の嫌味な姑が杉村春子とか、馴染んでいる雰囲気がいっぱいでした。
そればかりか三益愛子と森雅之はそんなに年が違わないのに母親と長男だったりします。
俳優はその他、二男が宝田明、三女は団令子と名を挙げればキリがないほど本当に豪華でした。
特に印象に残るのが、ほんの少ししか出番がないラストシーンでの笠 智衆。
飽きが来なくって、とってもいい映画でした。

それと『赤線地帯』。
京マチ子、若尾文子の印象はあるのですが内容がぼやけてしまっているので、チャンスがあれば他の溝口作品と共に再度観てみたいなと思っています。

これをキッカケに、またブログを書いていこうかなと、意欲が出た気がします。
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