ポケットの中で映画を温めて

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ロベール・ブレッソン・5~『バルタザールどこへ行く』

2019年04月23日 | 1960年代映画(外国)
『バルタザールどこへ行く』(ロベール・ブレッソン監督、1966年)を観る。

フランスの小村ピレネー。
教師の娘マリーは、仲のいい農場の息子ジャックと、生れたばかりのロバを拾い、“バルタザール”と名付け可愛がる。
しかし、ジャック家は農場と共にバルタザールも手放し、引っ越していく。
それから何年か経ち、鍛冶屋で重労働させられていたバルタザールが逃げて、マリーの家にやって来る。
マリーは、バルタザールとの久しぶりの再会を喜び夢中になる。
マリーに思いを寄せているパン屋のジェラールは、それを見て面白くない。

その頃、農場を手に入れていたマリーの父とジャック家との間で訴訟問題が起きる。
マリー家はそのために家を手放し、バルタザールはジェラールの家に買われていく。
マリーへのモヤモヤのために、ジェラールは不良仲間と一緒になってバルタザールを痛めつけ、こき使う執念に燃える・・・

例のごとく、ブレッソンの冷静で淡々とした映像の流れ。
その個々のカットから、作り手のほとばしる内なる思いが見えてくる。
しかしそのようなことは納得できても、物語の筋書きの細部がイマイチ理解できない。
要は、物語の背景があまりにも徹底してそぎ落とされていて、観客を度外視した作りのためだろうとしか思えない。

だから、インターネット上でこの作品の物語の筋をいろいろと読んでみて、再度観直し、やっと成る程と納得できた。
そのようにしてDVDで確認しながら観ればさすがの内容と感心するが、劇場で鑑賞した場合、やはり、分かったようで分からない気持ちを抱いたままになるのではないか。

小さかった時のジャックとマリー。
将来はマリーと一緒になれると夢想していたジャックが、大きくなったマリーに会う。
マリーは言う。
“あなたが見ているのは昔の思い出、私は変わってしまった。
私たちの愛の誓いは子どもの頃の思い出、想像の世界。現実は違う“と。
それでも、昔の夢を手に入れようと、一歩踏み出したマリーにショックな出来事が襲う。

人間社会による諸々の小さな出来事。
それに影響されるバルタザールのその時その時の運命。
このロバの、バルタザールの心優しいとか言えない眼差しが強烈な印象として残る。

それと、少女マリーを演じたアンヌ・ヴィアゼムスキー。
ブロッソンは、シロウトばかりを起用する監督なので、この時当然ヴィアゼムスキーは映画初出演だった。
後に、ジャン=リュック・ゴダール監督と結婚するきっかけのゴダール作品『中国女』(1967年)に出演する。

若かった頃、部屋の壁にこの『中国女』の大きなポスターを貼っていた。
思えば当時、何がなんでもゴダールでなければと粋がっていた頃が懐かしく蘇る。

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