ポケットの中で映画を温めて

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『万引き家族』を観て

2018年06月18日 | 日本映画
『万引き家族』(是枝裕和監督、2018年)を観てきた。

街角のスーパーで、鮮やかな連係プレーで万引きをする、父の治と息子の祥太。
肉屋でコロッケを買って、寒さに震えながら家路につくと、団地の1階の廊下で小さな女の子が凍えている。
母親に部屋から閉め出されたらしいのを以前にも見かけていた治は、高層マンションの谷間に建つ古い平屋に女の子を連れて帰る。
そこは母・初枝の家で、妻の信代、彼女の妹の亜紀も一緒に暮らしている。

信代はボヤきながらも、女の子に温かいうどんを出してやり名前を聞く。
「ゆり」と答えるこの子の腕のやけどに気付いた初枝がシャツをめくると、お腹にもたくさんの傷やあざがあった。

深夜、治と信代がゆりをおんぶして団地へ返しに行くが、ゆりの両親の罵り合う声が外まで聞こえる。
信代には、「産みたくて産んだ訳じゃない」とわめく母親の元へゆりを残して帰ることは、到底できなかった・・・
(パンフレットより一部抜粋修正)

下町らしい場所で、見るからに汚らしい家に寄り添うように暮らす一家。
生活の糧は、主に母親・初枝の年金に、副業的に万引きといったところか。
もっとも、治も信代も仕事には就いていたが、他力的出来事で思うようにいかない。

そんな環境状態であっても、この家族は生き生きしている。
それは、生きるため、生活していくためには、バラバラであってはやっていけないから。
だから、必然的に絆が強く、一家揃っての愛情に満ちあふれている。
そこに、おさな子の「ゆり」が「りん」と命名されて、一家に加わる。

りんを万引きに加担させている祥太は、駄菓子屋の店主から“妹を万引きをさせるな”と咎められる。
このことがあって、祥太の心に万引きに対する考えが徐々に変化していく。
そして、終盤のクライマックス。

家族としての幸せとは何か。
つい最近の、生々しい幼児虐待死の事件も連想させられる。

一緒に生活をしている者同士、そこに互いを思いやる愛情があれば、血の繋がりがあろうがなかろうが、それは二の次の話になる。
そのことを是枝裕和は、社会批判映画にせずに、社会そのものを提示して切り取ってみせる。

少ないシーンしか出なくっても脇役がガッチリと固めて光り、見終わった印象は重厚な作品を観れたと、無条件に感動する内容だった。

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