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ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『TATAMI』を観て

2025年04月07日 | 2020年代映画(外国)

2週間ほど前に、『TATAMI』(監督:ガイ・ナッティブ/ザーラ・アミール)を観てきた。

ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。
イラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリは、順調に勝ち進んでいくが、
金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられる。
自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、怪我を装って政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるか、
レイラは人生最大の決断を迫られる・・・
(公式サイトより)

この作品は、日本武道館で2019年に行われた世界柔道選手権での実際に起こった事件をベースにしているという。
イスラエル出身のガイ・ナッティヴとイラン出身のザーラ・アミールが共同して監督し、
この映画に携わったイラン人全員が、イランから亡命しているという事実も絡み、権力が個人を強圧することについてスポーツを通して浮き彫りにしていく。

個人であるスポーツ選手を国が利用し、国の都合次第で圧力を掛ける。
それも家族を人質にする手段を使って個人としての選手を否応なしに服従させようとする。
勝利に向かって努力してきた選手のプレッシャー、やり切れなさは想像以上のもののはずである。

そればかりか、コーチのマルヤム・ガンバリも以前、レイラ・ホセイニと同じ道を歩まされて来た。
国家からの命令を伝え、レイラを説得するマルヤム・ガンバリのジレンマが痛々しい。
その役を監督しているザーラ・アミールが演じる。

準々決勝で、着用していたイスラム教徒としてのヒジャブ(スカーフ)をレイラは脱ぐ。
さりげなく込められたそのメッセージは心に深くのし掛かかり、モノクロの映像とともに、将来忘れ去る訳にはいかないと感じた。