チェコスロバキアの作品、『春の調べ』(グスタフ・マハティ監督、1933年)を観た。
新婦のエヴァは、新郎エミルとの新居のアパートでの生活に夢を膨らます。
しかし、年の離れている夫エミルは、妻に対して優しい気遣いをすることもなく、無頓着である。
そんな夫に対してエヴァは、自分を構ってくれないことに内心失望し、気持ちの持って行き場がない。
ある日、エミルが一匹の虻を無慈悲に打ち殺すのを見たエヴァは、夫に憎悪を感じる。
そして、田舎の実家へ逃げ帰ったエヴァは、離婚の手続きをして・・・
実家にいるエヴァは、ある日、馬に乗って森の中の河に泳ぎに行く。
しかし当の馬は、他の馬がいることに気づいてそちらに行ってしまう。
困ったエヴァは、素っ裸で馬を追う。
そして、若い建築技師のパウルと出会う。
全裸で泳ぐ場面 があるために、当時この作品は、全世界で衝撃だったようで、日本公開でも検閲でズタズタにされたと言う。
今の感覚で鑑賞すれば、何ということもない、ただバストが一瞬映る程度の話で、泳ぐシーンも、遠くで泳いでいるなと言うぐらい。
でも時代も考えれば、何事も初と言うことは、それはやはり凄いことではないか。
そうやって、物事はひとつずつ徐々に壁を乗り越えて、今に繋がっているはずだから。
パウルとエヴァが結ばれるシーンでも、端的に言えば、エヴァの表情とその周辺が映るだけである。
そのようにして、全体のイメージを描く。
まさしく時は、サイレントからトーキーに移った時期だから、セリフも最小限。
そして、風景描写を巧みに使い、それを補うように、全編に渡る音楽が雰囲気を醸し出す。
ただ残念に思うのは、未だにカットされた場面が相当箇所あるようで、オリジナルで観れないこと。
だから、DVDで鑑賞できるのは1時間チョットの作品で、ラストはオリジナルと異なるという。
それでも、歴史的価値のあるはずの作品は、やはり観れないより観れた方が余程いい。
ただし観る側が、現在の観賞眼のままで作品と対峙しても失望があるだけだろうし、もし内容に不満を感じたら、その作品に対しても礼を失することになると思う。