原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

フランス人の勘違いが始まりだった。

2015年06月16日 09時33分06秒 | 自然/動植物
道東は6月になるとフランスギクが一斉に花開く。群生する性質を持ち、野が白い花で埋め尽くされる。この季節の道東の風物詩の一つでもある。だが、この花のことを「マーガレット」と思っている人は意外に多い。名前は違っても同じ花だと思っている人も多い。この誤解はフランス人の勘違いに端を発しているのだが、ちょっとばかり複雑な事情があり、誤解もやむを得ないものがある。基本、マーガレットは寒さに弱く、北海道では自生しない。野に咲くのはフランスギクでしかないのだ。

ヨーロッパが原産のフランスギクが園芸用として日本に持ち込まれたのが江戸時代である。この時の名前が「マーガレット(英名)」であった。実はフランスではこの花を今でもマーガレット(仏語ではマルグリット)と呼称している。日本人がこれをマーガレットと呼ぶのは当然であった。ところが明治の後期ごろ、本当のマーガレットが持ち込まれる。外観はそっくりなのだが、実はいろいろな点で違っていた。原産地はアフリカのカナリー諸島。そのため寒さに弱い。寒さに強く、農園から外へ飛び出て自生するようになったフランスものとはまったく対照的であった。よくみると違いは明確にある。マーガレットの筒状花の中心は少し平らなのにフランス製はふっくらとしている。一番の違いは葉にある。マーガレットの葉は切り込みの裂け目がはいっているが、フランス製の葉はのこぎり状の端をもっている。


違いに気付いた日本では、フランスと同じものをフランスギクと名前を変え、マーガレット(木春菊)と区別したのである。しかし、フランスではいまだマーガレット(マルグリット)の呼び名を変えようとしていない。頑固で自分中心のフランス人気質が垣間見える。彼らは自分たちの間違いを決して容認しないのだ。混乱の責任はアメリカにもある。木春菊であるマーガレットに対して「パリス・デージー」という別名を与えているからだ。つまり「パリの菊」と呼んでいる。フランスで言うマーガレットは木春菊ではないというのに。これではフランスギク=マーガレットと誤解されてしまうのはやむを得ない。こうしてチョットした誤解とボタンの掛け違いがそのまま継続し、多少の混乱を引きずったままとなっているのである。北海道の野に咲くマーガレットは存在しないと記憶しておけば、こうした間違いもなくなると思うのだが。


帰化種であるフランスギクが、いまや北海道の原野にしっかりと根をおろしている。これもまた時代の流れと受け止めなければいけないことの一つなのかもしれない。

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