道東の春の野山でも特に印象的な花である。通称シロザクラ。正式和名はミヤマザクラ。バラ科サクラ属であるからヤマザクラと同じ仲間。開花時期がヤマザクラより数週間遅い。しかも開花する前に葉が出るため、花が目立たない。花は空に向かって花を開くため葉の上に出てしまう。下から見ると花がよく見えない。木を上から見るとよく見えるのだが、高い木が多く人目につきにくい。それだけにこの花を見つけた時は、心が躍る。まるで森の妖精のように感じるからだ。昨年は気候のせいか、あまり目にできなかった。今年は野山の成長も順調のように感じる。
道東の野山は本格的な花のシーズンを迎えた。毎年のことなのだが、時計が正確に時を刻むように、順番に花を咲かせていく。太古の人々は、にこうした自然の変遷をカレンダー代わりに利用していた。アイヌの人たちは福寿草が咲く時期になるとイトウが釣れるようになるところから、この野花を「イトウの花」と呼ぶ。山に残る残雪の形で春の訪れを知り、田畑を耕したり米作りの時期を決めたという歴史もある。野山の変化は我々の生活と今も密接にかかわっている。
日本で一番遅く楽しめる道東の桜(エゾノヤマザクラやチシマザクラ)が咲くのが、5月の中旬頃から。少し遅れてヤエザクラが花開く。桜つながりでいえば、この少し後にシベリアザクラが満開となる。ほぼ5月が終わる頃からはシバザクラの見ごろとなる。そして6月の初旬を過ぎるころ(つまり現在)、シロザクラが満開となる。そしてさらに少し遅れてやってくるのが、コリンゴである。
道東の野山は5月からの一カ月間、花の品評会のように順次開花して楽しませてくれるのだ。野ではタンポポを筆頭に有名無名を問わず一斉に花を咲かせ、原野を彩る。長い冬の厳しい世界から、一気に解き放たれたかのように生命が躍る。一番華やかで輝く時でもある。
その野山のステージもシロザクラが花開いて二幕目を迎えた。花弁を天に向け、伸びて突き出て黄色くなった先端を見せているのが雄蕊。花弁の姿には他の桜とちょっと違う特徴がある。遠くから見ると木の葉に雪が積もっているかのようにも見える。美しく、慎ましくも見える。
今年のシロザクラは昨年よりずっと多く花開いたように見える。昨年より天候がいいという証拠なのかもしれない。この直後に花を咲かせるコリンゴ(ズミ)も満開を前に身構えているようだ。これまた昨年よりはるかに豊作に感じる。
東日本に大震災をもたらした地球の自然ではあるが、花の贈り物だけは今年は良いようだ。季節の移ろいを告げる自然のカレンダーがあまり変化しないことを、ただ願う。
ウレシイ限りですが、都会にいた時はこの生命の躍動を感じる歓声が鈍化してた。
ただ、この2~3日、寒いですね。JR、HACなど人災もいろいろ起こって、北海道はなんかヘンだぞ・・。
花を見るようになってまだ三年ですが、名前はいくら覚えても毎年忘れています。脳が歳をとっていくのがよくわかります。