川湯の硫黄山の眼前に広がるツツジが原。100ヘクタールの広大なエリアには、この時期イソツツジの白い花が一斉に咲いている。2.5キロにわたる遊歩道が続き、イソツツジの群れの中を散策できる。雄大な硫黄山をバックとした景観は見るだけでも価値があるが、自然が織りなす裏事情を知ってさらに興味がわいた。もっとも、こんな話は専門家なら先刻承知ことばかりだろう。が、無知な私にとっては目から鱗の話ばかりだった。
そのいくつかを紹介したい。
まずイソツツジという和名。イソは磯(海辺や水辺)からついたと思うのが普通だ。これが違う。なにしろイソツツジはハマナスのように海岸周辺に生息するツツジではない。ではなぜそうなったのか。意外なことに単なる間違いが原因だった。当初はエゾツツジが正式名であった。エゾとイソを誰かが間違えてしまったというのである。いまでは正式名として登録され、ツツジ属、イソツツジ科となっている。硫黄山を紹介するガイドの中にエゾイソツツジが満開という解説があった。間違いはさらに複雑に進行している。
(イソツツジの花の中で見つけたヤマアリ)
イソツツジの花は一つの枝に十個ほどの白い花をつける。葉の上に落ちた雪の塊にも見える。この群れの中に手を入れて揺らすと手の中に心地よい香りがつく。アロマテラピーで体験するあの香りである。この花には抗菌、殺菌作用をもつ成分があり、アロマの材料としても利用されている。しかし、一方では毒もある。防虫剤の材料としても利用されているからだ。心地よい香りに誘われて長時間この中にいると頭痛や目眩を感じる人も出る。まさに要注意の花なのである。歩いていると気づくが、ツツジが原に入るとそれまでうるさく付きまとっていた蚊や虫たちが姿を消す。それもこのツツジが持つ成分のおかげなのである。ただ唯一の虫として存在するのがアリ。どうやらここに棲むヤマアリはツツジの毒は効き目がないらしい。ツツジの下にはアリの巣が密集している。
(イソツツジとハイマツ)
イソツツジと並んでツツジが原の名物にハイマツがある。両者とも硫黄山から噴き出す噴煙の影響で作られた酸性土壌に強い植物である。だがハイマツは高山植物。本州では標高2500m以上、北海道でも1500m以上の高山でしか見られない。川湯の標高はわずか150m前後。なぜここにという謎が残る。気まぐれなカラスが種を落として意外なところで植生を伸ばすハイマツがあることもある。その一つなのかどうか、実は不明なのである。
ハイマツはその名の通り地面を這うように伸びる。ところが川湯のハイマツは背が高い。高いもので5mを超すものもある。どうやら年々背を伸ばしているらしい。理由があった。ハイマツが地面を這う理由は毎冬の積雪にある。上からの重いプレッシャーで地面に這うように育つのである。ところが近年の積雪の少なさが、彼らの性質を変えた。ハイマツは空に向かって背を伸ばすようになった。ハイマツからタテマツへ、自然が変わると生物も変わるのである。
(シラカバの幼木もちらほら)
アイヌの人たちはイソツツジをハシボという。葉を湯に浸してお茶としていたという。英語ではマーシュ・ティーという。温原の茶という意味。やはりお茶として使われている。毒性もあるが薬としての効果があることが分かる。
ただ景色を眺めて観賞するのもいいが、自然の裏事情を知ると、いっそう景色が面白くなる。自然はそうしたことをさりげなく伝えている。
*ここにあげたこぼれ話の情報は「川湯エコミュージアムセンター」でレクチャーを受けたものの抜粋です。
そのいくつかを紹介したい。
まずイソツツジという和名。イソは磯(海辺や水辺)からついたと思うのが普通だ。これが違う。なにしろイソツツジはハマナスのように海岸周辺に生息するツツジではない。ではなぜそうなったのか。意外なことに単なる間違いが原因だった。当初はエゾツツジが正式名であった。エゾとイソを誰かが間違えてしまったというのである。いまでは正式名として登録され、ツツジ属、イソツツジ科となっている。硫黄山を紹介するガイドの中にエゾイソツツジが満開という解説があった。間違いはさらに複雑に進行している。
(イソツツジの花の中で見つけたヤマアリ)
イソツツジの花は一つの枝に十個ほどの白い花をつける。葉の上に落ちた雪の塊にも見える。この群れの中に手を入れて揺らすと手の中に心地よい香りがつく。アロマテラピーで体験するあの香りである。この花には抗菌、殺菌作用をもつ成分があり、アロマの材料としても利用されている。しかし、一方では毒もある。防虫剤の材料としても利用されているからだ。心地よい香りに誘われて長時間この中にいると頭痛や目眩を感じる人も出る。まさに要注意の花なのである。歩いていると気づくが、ツツジが原に入るとそれまでうるさく付きまとっていた蚊や虫たちが姿を消す。それもこのツツジが持つ成分のおかげなのである。ただ唯一の虫として存在するのがアリ。どうやらここに棲むヤマアリはツツジの毒は効き目がないらしい。ツツジの下にはアリの巣が密集している。
(イソツツジとハイマツ)
イソツツジと並んでツツジが原の名物にハイマツがある。両者とも硫黄山から噴き出す噴煙の影響で作られた酸性土壌に強い植物である。だがハイマツは高山植物。本州では標高2500m以上、北海道でも1500m以上の高山でしか見られない。川湯の標高はわずか150m前後。なぜここにという謎が残る。気まぐれなカラスが種を落として意外なところで植生を伸ばすハイマツがあることもある。その一つなのかどうか、実は不明なのである。
ハイマツはその名の通り地面を這うように伸びる。ところが川湯のハイマツは背が高い。高いもので5mを超すものもある。どうやら年々背を伸ばしているらしい。理由があった。ハイマツが地面を這う理由は毎冬の積雪にある。上からの重いプレッシャーで地面に這うように育つのである。ところが近年の積雪の少なさが、彼らの性質を変えた。ハイマツは空に向かって背を伸ばすようになった。ハイマツからタテマツへ、自然が変わると生物も変わるのである。
(シラカバの幼木もちらほら)
アイヌの人たちはイソツツジをハシボという。葉を湯に浸してお茶としていたという。英語ではマーシュ・ティーという。温原の茶という意味。やはりお茶として使われている。毒性もあるが薬としての効果があることが分かる。
ただ景色を眺めて観賞するのもいいが、自然の裏事情を知ると、いっそう景色が面白くなる。自然はそうしたことをさりげなく伝えている。
*ここにあげたこぼれ話の情報は「川湯エコミュージアムセンター」でレクチャーを受けたものの抜粋です。
イソツツジの見ごろは7月上旬で終わりますが、遊歩道はいつでも楽しめます。歩いた後の温泉もいいですよ。川湯の湯は別格です。
川湯エコミュージアムセンターのすぐそばにアカエゾマツの森があります。ここもいいのでぜひ訪れてみてください。
温泉卵はもちろんあります。でも例の人たちはさすがに撤退したようです。硫黄の匂いの中で食する卵は格別です。なお、夏に歩くには水もお忘れなく。
いや〜つつじも色々ありますが、これは初めて見ました。
これまた綺麗ですが、イソ〜だけにその辺に咲く花ではないんですね。
エゾ…イソ。いい加減だなあと思う反面そんなことも面白いと感じます。
それにしても硫黄山の遊歩道行ってみたいな〜。
なぜか硫黄山のあの臭いが好きなんです。
今年のお盆は卵持参で行ってみようかな。
(自分で作っちゃいけないんでしょうかね?昔あのゆで卵はヤバイ人達の専売だったとか聞いたことがありますが…ウソかなあ)
それにしてもかなりいい加減な話で常識が作られることも知りました。
こうしたブログも心すべきなのかも。
郷土史家、郷土生態系研究家として磨きがかかってきましたね。
それにしてもエピソードは面白かった。「エゾ」と「イゾ」ね!う~ん、ありそうだなぁ。