遊民ヤギ爺

俳句と映画のゆうゆう散歩

映画 「生きる」

2018-02-07 08:56:24 | 映画
平成30年2月7日(水)

映画 生きる

1952年(昭和27年)10月9日公開
    東宝映画、創立20周年記念映画



生きるって何だろう、、、、
この映画では、主人公の男が長年勤務する役所の仕事を
自分の身体の変調と伴に次第にやる気を失くし、、
日々怠惰に過ごしている。そんな空気は職場内に蔓延。
或る日、意を決し病院を訪れた主人公は「自分は癌」だと
察知する。家から大金を持出して一夜の放蕩をするが、、
虚しさが残り帰宅する彼の所に元部下の女性が現われ、
彼女の奔放さと若い生命力を感じた主人公は、、
突然豹変、、、やる気を戻し役所に戻ると早速、
棚上げになっている町の公園作りに没頭します。
やがて完成した公園のブランコで歌を口ずさみながら、
静に息を引き取ります。
この映画では何事もたらい回しにするお役所仕事を、
痛烈に批判し、根底にある庶民のヒューマニズムを
探っている様です。
最後の場面で、課長を引き継いだ部下が同様に怠惰を
繰返しています。
又、家庭内でも息子夫婦と老いた父親の葛藤等、、
今の世の中にそのまま受け継がれている様で、
戦後間もない時代に黒澤明監督は見抜いて居られた
様です。

「生きる」

スタッフ

監督 : 黒澤 明、  製作 : 本木荘二郎
脚本 : 橋本 忍、小国 英男
音楽 : 早坂 文雄、 美術 : 木公 山崇
撮影 : 中井 朝一  記録 : 野上 照代

キャスト

渡邊 勘治(市民課長) : 志村 喬
   光男(息子)   : 金子 信雄
   一枝(息子の嫁) : 関 京子
係長 大野(ナマコ)  : 藤原 釜足
課員 木村(糸蒟蒻)  : 日守 新一
   坂井(鯉 幟)  : 田中 春男
   野口(蠅取紙)  : 千秋 実
   小田切 とよ   : 小田切 みき
市役所 助役      : 中村 伸郎
病院 医師       : 清水 将夫
   患者       : 渡辺 篤
小説家         : 伊藤 雄之助
主婦          : 三好 栄子
            : 菅井 きん
ヤクザの親分      : 宮口 精二
    子分      : 加東 大介
※市民課員のあだ名は女性課員のとよが、暇に任せ
 仲間のあだ名を付けた。(課長への後日談より)

ストーリー



市役所の市民生活課長の渡邊は、怠惰の日々を
悶々と繰り返しています。
その空気は課員の中にも蔓延して、市民の陳情
も適当にたらい回しを居ている。


そんな折り、黒井町の主婦等が「空き地の水捌け
が悪く、ボウフラが沸き悪臭が漂っています。
公園を作って貰えませんか、、、、」と陳情に。
課員の坂井は「公園課」を紹介する。役所内では
「この問題はドコソコで、」次々とたらい回しに
します。下水課、環境衛生課、児童福祉課、土木
課、都市計画課、道路課、予防課、消防署等々、
主婦等は議員の所へ行くと直ぐに市の助役を紹介


助役は「そのために市民課が在る」と又市民課へ。

そんな或る日、市民課長の渡邊は意を決して、
病院で診察を受けます。


受診し、待合にいると患者がその症状について
しつこく「胃潰瘍は嘘、、実は癌なのに医者は
言わない、、、」動揺する渡邊は医者に、、
貴方は軽い胃潰瘍です」を繰返され、、、

癌を察した渡邊は、町をさ迷い、、、帰宅。

薄暗い部屋でじっとする渡邊を、帰宅した息子
夫婦は、父親への繰り言をしながら電灯を点け、
ギョッとします。


明くる日、家から5万円を持出し居酒屋へ行き、

小説家と知り合い「自分は癌である。今まで遊ぶ
事もせず、ただヒタスラ働いて居りました、、」
告白に驚き、同情した彼は、街へ連れ出し、





パチンコ店、ストリップ小屋、ダンスホール等を
転々と放蕩する渡邊、、、だんだんそれも空しく
なるばかり、、、、また薄暗い顔をして、、。


朝帰りした渡辺は、元部下の小田切という若い女性
と出会い「私、役所を辞めました。課長さんの
印を貰いたいので、、」
家に連れ戻り印を押し、ふと彼女の足元の破れた
靴下を目に、、それから二人で街へ出掛け、、。



二階から見つめる息子夫婦は「お父さんに若い女
が出来た、、」と叔父夫婦に相談する。



元部下の小田切から「今度はこんな物を作るの、
課長さんも何か始めたら、、」と縫ぐるみを見せ

突然その玩具を掴み、店を飛び出す渡邊は、、、
役所に戻り、見違える様に懸命に働きます。

助役に頭を下げ




ヤクザの脅しにも屈せず、

部下に命じ、棚上げになっている公園作りに
奔走し、助役に何度も頭を下げ、ヤクザに脅され
ながらも、、、公園が完成しました。



雪が降る夜、完成した公園のブランコに座る
彼は静かに、つぶやく様に「ゴンドラの唄」を
命短し、恋せよ乙女、、、、


口ずさみ、眠る様に息を引き取ります。




葬儀の席で、市民課の面々は口々に助役の功績
を讃えますが、、、



弔問に来た主婦たちは、「課長さん有難う、
貴方のお陰で公園が出来ました、、」
いたたまれなく助役が帰った後、交番の巡査が
公園で彼を見つけた情景を説明し


部下の木村は一人、課長の功績を讃える、


この時になり、やっと課員たちは課長の功績を
口にする様に、、、、。



市民課の課長をを引き継いだ部下は、相も変わ
らず、黙って印を押し、また元の緩慢な空気が
漂う市民課、、、


部下の木村は一人抜け出し、橋の上から新しい
公園を眺めて居ます。

この映画には殆どの黒澤作品に出ている三船敏郎
は出て居ませんが、鬼気迫る志村喬の演技は目を
見張ります。
白黒画面なのですが、久しぶりに今見ても新鮮で
見応えの在る素晴らしい映画でした。

今日の1句(俳人の名句)

大寒の埃の如く人死ぬる   高浜 虚子








 


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