遊民ヤギ爺

俳句と映画のゆうゆう散歩

十六むさし

2022-01-06 16:34:12 | 日記

令和4年1月6日(木)

十六むさしって何?

十六むさしは、平安時代に中国から渡来した「八道行成」

(八本の線が入った盤上で碁石を動かして勝負する遊び)

が、江戸時代」に入って「十六むさし」の形になったと

いわれ、初めは博打として行われていたが、後に正月用

の家庭遊戯となった。

子供の遊び、盤双六と十六武蔵」(くもん浮世絵ミュージアム)

奈良、おもちゃ博物館

 

挟み将棋に似たもので、盤上の図の中央に親石(黒)を

置き、外郭に子石(白)を16個を囲む様に並べる。

親から先に動いて二つの子石の間に割り込むと親石の両側

の石は取られる。

亦、子石が親石を囲んで動けなくすると親石の負けとなる。

子石が親石を牛部屋と呼ばれる盤外に在る三角形の部分に

追い込んで動けなくすると子の勝ちとなる。

明治時代頃までは行われていた遊戯だが、現在では一般的に

余り見かけなくなった。

樋口一葉の「たけくらば」には、十六むさしが登場している。

 

俳人の夏井いつきさんの著書「絶滅寸前季語辞典」の新年の

季題に「十六むさし」の記述があり、紹介したい。

【私の生家は、村の特定郵便局だった。その頃は集配業務も

やっていたので、郵便配達のおじさん達がたくさん出入りし

ていた。自転車と船とが郵便配達の足であったが、未だ国道

へのトンネルが抜けていなかったので、山を越えて徒歩で配

達する場合もある。

「外勤のオッチャン」と呼ばれていたオジサンたちは暇な時

は、局舎と自宅の間に在る中庭で日向ぼっこをしながら、将

棋や囲碁や花札に興じていた。いつもは陽気なオッチャンば

かりなのに、イザ勝負となったらやけに熱くて何日かに一度

は「ちょっとその手は待て」「いや待たぬ」の、ささいな事

から大ゲンカが始まった。 「もう二度とお前には勝負せん、

郵便局もブチ止めちゃる」と、いつも啖呵を切るオッチャン

がいたが、翌日には平然とハガキの仕分けをしていた。

将棋も囲碁も弱いのに十六むさしだけは強いというオッチャン

も居た。彼は私を膝に抱き上げ、十六むさしを教えようとした

が、私にとってみれば積み上げた碁石の山を崩さないように、

交互に碁石を取り合う遊びの方がずっと面白かった。

十六むさしをマスターしないうちに、そのオッチャンが郵便局

に来なくなった。名前を思い出そうにも思い出せないのだが、

ニッと笑うと目がなくなったように見える、小柄なオッチャン

だった。他の外勤のオッチャン達の「あれが、女と逃げるよう

な性根を持っとったとはのお」という、皮肉めいた会話の意味

が私にも判るようになるのは、まだまだ先の事であった。

(夏井いつき著:絶滅寸前季語辞典より引用した。)

 

今日の一句(俳人の名句)

渋茶置き十六むさし始まりぬ   阿波野 生保



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