写真は豚の紫蘇巻きを手にはしゃぐゾエ。
その日、常磐自動車道上り線は渋滞していた。ゾエと2人の現場を終え桜土浦から高速に乗って1時間、三郷料金所は遥か遠く車は利根川に架かる橋の上にいた。辺りは既に暗く、テールランプの光が何処までも続いていた。助手席で猛烈な睡魔に襲われている私に気を使ったのかゾエが問わず語りに始めた話はこうだった。
今を去ること5日前、ひさしぶりの休み、駅前の蔦屋に行こうとゾエは自転車を走らせた。
「駅前の自転車置き場に着いて気がついたです、タイヤの太い自転車で来てしまった事に」
どうやらその自転車置き場はレールに固定するタイプでゾエが乗って来た太いタイヤの自転車は止められないみたいだ。ゾエはこのほかに自転車を3台所有しているが、よりによって止められないないと知りながら太いタイヤの自転車で来てしまった。
「店の前の歩道に止めれば済むだろう」
「その辺りは自転車も駐車禁止です」
1度家に帰って自転車を変えて出直す事など色々考えた末、駅から少し離れた公園の脇のスペースにとめる事にした。そして買い物を済ませて戻ってみると、何者かによって自転車はパンクさせられていた。
「明らかに、お前に怨みのある者の犯行だな」
「違います。いるんですよ正義の名の下に天誅を下す人が、世の中には」
「この違法駐車め、天に変わって成敗してやる。ゾエを成敗する、分かるなその気持」
「わからないでください」
「で、どうした」
「バスで家に戻ってパンク修理道具を取ってきました。そして修理を始めたら材料が足りない事にきずいたのでまたバスで家に戻って材料をとって来て修理を始めました」
「相変わらず、段取り悪いな、もう二時間ぐらい経ってるのか」
「3時間ぐらい経ってます、なんとか修理を終えて帰ろうと顔を上げたらそこに自転車を引いたおかっぱ頭の女性が居たんです」
「綺麗な人か」
「そこですか、僕的には普通です」
なんでも、その女性の自転車もパンクしてしまったらしく駅2つ分自転車を引きながら修理して貰おうと来たのに自転車屋さんが休みだとの事。
「修理してあげたのか」
「あげました、でも時間がかかってしまい最後は少しイラついてました」
「メールアドレスとか聞いたのか、絶好のチャンスだろ」
「聞きません、誰かとは違います」
そんな事よりゾエが気がかりなのは、直した自転車が次の日また空気が抜けているので調べてみたら貼ったゴムが剥がれていた。ちゃんと直せてなかった。だとするとあのおかっぱ頭の女性の自転車も直せて居なかった可能性が高い。て言うことは。
「何も知らないおかっぱ頭の女性が自転車で疾走していると、いきなりタイヤの空気が抜けてバランスを失った女性は電柱に激突、大きく弧を描きながらちゅうに舞い地面に叩きつけられる。夥しい血が流れる。薄れていく意識の中で昨日パンクを直してくれた男の顔が浮かぶ、、、、、、」
「もういいです、早く寝てください」