早起き梟のひとりごと

仕事に追われる日々を少しだけ立ち止まって見つめてみると・・・

岡井隆死す。

2020-07-13 06:24:20 | 短歌

写真を、岡井隆の死を伝える日刊スポーツ紙。

自らをして余人を持ってかえ難しと称し、宮廷歌壇の頂に立ち続けた男の見たものがどんな風景であったのか、私には想像することさえ出来ない。

あえて歌は引かない。

どうか、成仏してください。

 


小池 光 歌集

2018-07-23 05:19:04 | 短歌

写真は、小池 光 歌集 砂子屋書房 1500円+税

歌を拾ってみよう。

 廃駅くさあじさゐの花占めてただ歳月はまぶしかりけり

 日なたにて干し柿くひぬ干し柿は円谷幸吉の遺書にありしや

 ひと夏の陽に食まれつつなお高くひまわりは父のたてがみ保つ

 夜の淵のわが底知れぬ彼方にてナチ党員にして良き父がゐる

 バルサの木ゆうべに抱きて帰らむに見知らぬ色の空におびゆる

 幻影の大きな手あらわれて地上にわかき鳩を抑えへき

 春ほそきあめくだる園の水のうえ自然死を待つ白鳥うかぶ

 目を閉じて菜の花のうえにわれは見つ海へなだるる野鼠のむれ

 

私のアンテナが鈍いのか、最近とんと小池光を見かけない。あの滋味深きエッセイや評論などを読んでみたい。今日あたりジュンク堂をのぞいてみますか。

 

 


死ぬほど 好きだから 死なねーよ

2018-03-31 05:02:02 | 短歌

写真は、「死ぬほど 好きだから 死なねーよ」石井僚一  短歌研究社 1700円(税別)

自分よりだいぶ若い人の歌集を初めて買ったような気がする。

           「死ぬほど 好きだから 死なねーよ」

そもそもこんな伝法な台詞みたいな言葉が歌集につけられて良いのか。

これは最早、短歌でなくて啖呵ではないのか。

歌を幾つか拾ってみよう。

    神様を引き摺り出して紙の上のユートピアから閉鎖病棟

    かの骨と十円玉を取り去ればそこは灰皿よりも灰皿

    何もしたくはない朝コーヒー一杯が冷めるのを待つだけの一日

    待ち合わせもろくにできない 茄子がまずい 君に会いたい 茄子が食えない

    愛は愛だ!ぼくはこたつをひっくり返し冬の空気を春に返した!

    手を振ればお別れだからめっちゃ振る 死ぬほど好きだから死なねえよ

そうでしたか、こんな上の句がつくんですね、そうだよね、死んだらおしまいだもの。

    

   


若山牧水

2016-12-07 07:34:31 | 短歌

写真は、若山牧水 コレクション日本歌人選 笠間書院 1200円(税別)

幾山河越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日(けふ)も旅ゆく

白鳥(しらとり)はかなしからずや空の青海のあおにも染(そ)まずただよう

ともすれば君口無しになりたまふ海な眺めそ海にとられむ

とこしへに解けぬひとつの不可思議の生きてうごくと自(みづか)らおもう

渓あひのみちはかなしく白樺の白き木立にきはまりにけり

やっぱり短歌は抒情だと思う。

口ずさんでみて欲しい、牧水の歌を。


浜田 到

2016-11-12 07:47:11 | 短歌

写真は、現代歌人文庫 浜田 到歌集 国文社 1009円(本体980円)

ふとわれの掌(て)さえとり落す如き夕刻に高き架橋をわたりはじめぬ

耳と夕焼わが内部にて相寄りつしづかに鰭(ひれ)ふるこの空尽きず

刻々に睫毛蘂(しべ)なす少女の生、夏ゆくと脈こめかみにうつ

硝子街に睫毛睫毛のまばたけりこのままにして霧は降りこよ

瞼-リーデルン-妻のそのながき縁手(ふちて)る毎に恵まれざりしは暫くもうれしく

もはや短歌とは呼べない破調。

私が生まれた頃に詠まれた歌。声に出して読むには辛い。じっと見つめていたい歌。私にとってはそんな歌だ。