鋼の素材を語るワードに、キルドとかリムドという対になるワードがある。つまり、こんな具合の記述だ。
「船体先端の素材は、良質なキルド鋼を用いて製造した。」
このキルドとリムドだが、音から受ける印象ではドイツ語かと感じるが英語のようだ、キルドのキルは死を意味し、リムドのリムは縁を意味する。
その本来の内容は製鉄・製鋼の話しに遡らねばならない。およそ40年くらい前に川崎製鉄・千葉事業所(現JFEスチール)を見学したことがある。鉄の製造はスクラップ鉄から行うのもありだが、本来は鉄鉱石から作る、いわゆる高炉処理を経て作られる。この高炉で作られる鉄は、銑鉄と呼ばれ、多くの炭素を含み、鋼(はがね)の良さは持ち合わせていない。この銑鉄を、転炉という回転する巨大な鍋に溶かして入れ、下部から酸素を送り脱炭という処理を行う。その他、転炉においては、ケイ素(シリコン)、リン、マンガン、スラグなどを除去することにより、必用な鋼(鋼)としての成分を整えていく。そして、未だ溶鋼中には酸素やチッ素を多く含むので、必用な添加物を加え脱酸を促す。そして、いよいよ転炉を倒して、鋼材の元になる鋼魂を作り出す作業となるのだが、その脱酸の程度により鋼魂の特性に差を生じるというものだ。
・リムド鋼
脱酸のレベルが低い場合、冷えて固まった鋼魂中には特に周辺(縁)に気泡を多く含む状態になる。この素材を圧延などして使用する場合は、気泡は押し潰され除去されるから問題ない。ただし、厚板のまま構造用物に使用する場合は、内部気泡の影響が信頼性に影響を与える場合があり得る。
・キルド鋼
脱酸レベルが高い鋼魂を作る場合は、そもそも鋳型に鋼魂を流し込んだ際に、火花を出すこともなく静かに(死)冷えて固まる。ただし、冷えて固まった鋼魂上部には大きな空洞が出来るから、歩留まりが悪くなる。このキルド鋼は、内部が均一で気泡もなく、高級鋼としてリムド鋼より信頼性が高いことから、厚物製品を中心に利用される。

その他、図に示す様にセミキルドというものもあるが、中間的な性質を持つと考えて良いだろう。と、ここまでの話しは一昔前のことの様だ。現在では、転炉から鋼魂を作り出す行程を、連続鋳造法という従来の巨大な鋼魂を作ることはしない。つまり、以下の様に解説されている。
現在、日本では鋼材の99%以上が連続鋳造法で製造されており、この製造法では(溶鋼中の酸化物による)連鋳ノズルつまりを避けるために溶鋼中の酸素を20~30ppm程度以下にする必要があります。つまり、全てキルド鋼になる。
「船体先端の素材は、良質なキルド鋼を用いて製造した。」
このキルドとリムドだが、音から受ける印象ではドイツ語かと感じるが英語のようだ、キルドのキルは死を意味し、リムドのリムは縁を意味する。
その本来の内容は製鉄・製鋼の話しに遡らねばならない。およそ40年くらい前に川崎製鉄・千葉事業所(現JFEスチール)を見学したことがある。鉄の製造はスクラップ鉄から行うのもありだが、本来は鉄鉱石から作る、いわゆる高炉処理を経て作られる。この高炉で作られる鉄は、銑鉄と呼ばれ、多くの炭素を含み、鋼(はがね)の良さは持ち合わせていない。この銑鉄を、転炉という回転する巨大な鍋に溶かして入れ、下部から酸素を送り脱炭という処理を行う。その他、転炉においては、ケイ素(シリコン)、リン、マンガン、スラグなどを除去することにより、必用な鋼(鋼)としての成分を整えていく。そして、未だ溶鋼中には酸素やチッ素を多く含むので、必用な添加物を加え脱酸を促す。そして、いよいよ転炉を倒して、鋼材の元になる鋼魂を作り出す作業となるのだが、その脱酸の程度により鋼魂の特性に差を生じるというものだ。
・リムド鋼
脱酸のレベルが低い場合、冷えて固まった鋼魂中には特に周辺(縁)に気泡を多く含む状態になる。この素材を圧延などして使用する場合は、気泡は押し潰され除去されるから問題ない。ただし、厚板のまま構造用物に使用する場合は、内部気泡の影響が信頼性に影響を与える場合があり得る。
・キルド鋼
脱酸レベルが高い鋼魂を作る場合は、そもそも鋳型に鋼魂を流し込んだ際に、火花を出すこともなく静かに(死)冷えて固まる。ただし、冷えて固まった鋼魂上部には大きな空洞が出来るから、歩留まりが悪くなる。このキルド鋼は、内部が均一で気泡もなく、高級鋼としてリムド鋼より信頼性が高いことから、厚物製品を中心に利用される。

その他、図に示す様にセミキルドというものもあるが、中間的な性質を持つと考えて良いだろう。と、ここまでの話しは一昔前のことの様だ。現在では、転炉から鋼魂を作り出す行程を、連続鋳造法という従来の巨大な鋼魂を作ることはしない。つまり、以下の様に解説されている。
現在、日本では鋼材の99%以上が連続鋳造法で製造されており、この製造法では(溶鋼中の酸化物による)連鋳ノズルつまりを避けるために溶鋼中の酸素を20~30ppm程度以下にする必要があります。つまり、全てキルド鋼になる。