インチキレストア談義
一昨日のことだが、知り合いのBPショップを2件ほど久しぶりに探訪しつつ、つい長話しで、仕事を邪魔してしまった。しかし、それぞれ、こういう話しで長話になるBPショップというのは、私と共通するクルマ好きで、仕事もホンモノを追求しているので、話しに熱が入り、時の経つのも忘れ、長話になってしまうのだろう。決して私が強いて、長話を強要している訳ではないことを強調しておきたい。
そんな中、1件のBPショップは、こと板金の製作ものなら、トップクラスの技量を持つと判断している私(65)より幾らか年配の工場主だが、以前に実物の修復過程も見ているのだが、通称ハコスカ(型式GC10)の全塗装で受託した車両(保険外)で、後部トランクルーム付近の腐食の修復過程で、「こんなことしてあってさ」という事例を書き表してみたい。
旧車において、腐食の修理というのは大小さまざまなれど、避けられない問題となるのだが、このハコスカの場合は、従前の修復で、トランク内(フロアおよび左右リヤフェンダー廻り)の腐食修復で、トランク内にFRPクロスが広範囲に貼り付けられていたのだ。その上で、さらに腐食が進行したので、貼り付けたFRPクロスはブカブカで、これじゃマトモに修理はできないと、まずはFRPクロスを完全除去。その上で、トランクフロアはほぼ全面製作して張り替え、リヤエンドパネルは米国製のリプロパーツを入手交換、左右リヤフェンダーは、腐食部位を切り取り、その部位を平板ボンデ鋼板(化成皮膜処理済み鋼板)から切り出し成型板金製作で合わせ接合という修復を行っていた。
そもそも、腐食部位が比較的に小面積で孔食が小さくイイカゲンな修理だと、アルミテープを貼り、その上にファイバー入りパテを厚盛りして成型して良しは良く見る光景だ。しかし、この修理のしかたは1年もすると、腐食が進行しパテが浮いて外面塗膜に膨らみが生じてくる。
今回の場合は、腐食が広範囲でアルミテープじゃとても埋まらないから、FRPマットを積層して堅め、そこで位置を固定しておいて、錆をサンダーで削り取りパテ仕上げという段取りだろう。しかし、FRP積層前に十分錆を除去などできないので、時間経過と共に、広範囲に腐食がFRP下で進行し、広範囲のFRP積層がブカブカになっているというものだ。
たしかし、前回この修復を行った者も、幾ら強度のあるFRP積層だって、その下の鋼板が腐食したままでは、時間経過と共に腐食が進行し、その内にFRPと鋼板との間に水が溜まれば腐食の進行はさらに加速度を増して進むことは想像ができたと思う。しかし、フロアパネルの大面積を平板鋼板から手作りで製作するとなると、相当な板金製作能力がなければムリな話しで、こういう工法になったのだろう。
しかし、今やこういう仕事ができる技能者も少なくなったと思う。それと、BPショップでも整備工場でもそうだが、私は損保の在職中からこういう会話を繰り返して来た。そんな中、私は板金の技能者ではないが、私のホンモノを見る眼力は育ったのだと回想する。現在の損保調査員(いわゆるアジャスター)諸君も、調査処理数とか帰社時間とか、中には工場所在時間まで会社に把握されるなど、自由な活動が困難になっているのかもしれないが、自研センターとか自社研修だけが自らの技能の研鑽の時間ではないと思う。自らの業務の中にこそ、研修以上の素材が内在していることを意識して欲しい。