このことは一般業界および一般ドライバーにはあまり認知されていないことなのだが、比較的最近のトヨタ系車（つまりダイハツも含む）において、一部のレッカー業のおいて現象認知されている事象としてお知らせするものだ。
同現象は、レッカー業社はユーザーからバッテリー上がり（放電過多）で救援要請を受ける事案は多い。そこで、救援用バッテリーもしくは始動用ジャップスターターを持参して、救援に駆けつける訳だが、まずは救援のためには、バッテリーのあるボンネットもしくはトランクを開けたいという前提になり、ドアロックの解錠を行うことになる訳だ。ところが、バッテリー上がりなどでスマートキー操作やリモコンのアンロック操作ができない訳で、メカニカルキーでのドアロック解錠操作を行うのだが、メカニカルキーでの解錠操作（アンロック）が不可能な場合がかなり生じているとの情報を２年ほど前から聞いている。
ドアキーのリモコンなどでのロックもしくはアンロック操作は、ロック機構内部の小型モーターによりその作動を行うが、バッテリー上がりを起こすと、その電圧低下でモーターは作動せず同動作はできない。ただし、取り扱い説明書にも、そういう場合にも、メカニカルキーでドアロックの解錠操作ができることが説明されている。従って、レッカー業社などは、車両オーナーより手渡された車両トランスミッターに組み込まれたメカニカルキーを取り出し、運転席ドアのキーシリンダーに差し込み、アンロック側に廻そうとするが、キーは廻らず従ってアンロック出来ないと云う事象が増えていると云うのだ。
この現象について、昨年（22年2月）に某オクで中古プリウス50の運転席側ドアロック機構を入手し、様々状態で再現実験して見たのだが、ドアロッキング機構がロックとアンロックのある中間値にあると、同現象が生じることが確認できた。要するに、ドアのアンロックは、駐車の際になされる訳だが、ドアロック機構の内部の動作抵抗が大きいとか、そもそもバッテリー電位が低いなどにおいては、ドアロックが物理的にはなされるものの、その時にロック、アンロック動作用カム位置によって中途半端なあるカム位置となる場合がある。そうなると、メカニカルキー経由のレバー操作により曲面カムを動かすことができない角度範囲が存在するということが再現実験により確かめられたのである。
この主因としては、そもそもカムプロフィールにより、カム位置がどのロック範囲でも、レバー操作によりカムが円滑に廻されることでアンロック側に廻されなければならないのだが、どうやらカムの曲面設計もしくは材質や表面精度の問題から、レバーがカムに食い込むだけでカムを廻すことができないと云う現象が起きていることが想定できた。
また、ロック機構には現在のロック状態を検出するポジションスイッチ機構があるが、このスイッチはしきい値が極めてアバウトで、完全ロック出なくてもロック位置を検出してしまう。従って、電気的なロックアルゴリズムとしては、ロックポジションスイッチに頼る、ロック動作と云うより、一定短時間のモーターのロック側への通電信号によりロック側端部までの動作を正常なら行える前提で設計しているものと思える。しかし、先にも記した通りロックポジションスイッチでは、必ずしもロック端部まで達していなくてもロック検出してしまうこともありそうだ。この際、通常の電源によりアンロック操作では、カムに頼らずモーターとウォームギヤによりロック機構をアンロック側に回転できるので問題ないが、メカニカルキーによる機械的動作としては、カムプロフィールに頼る機械的動作なので、今回の問題が生じる様だ。
問題のロック機構は、プリウス30以降とかヤリスなどトヨタ車多数およびダイハツ車の幾つかで確認されている。なお、今回入手して確認した部品サプライヤは「三井金属アクト」という昔は聞いたことがない企業だが、トヨタのロック機構が総て同社製かどうかは不明だ。
追記
同事案に出くわしたレッカー業社によれば、ダイハツなどの通常エンジン車であれば、ジャッキアップして車両下部から、スターターモーターもしくはオールタネーターＢ端子へ電源供給することで、リモコン動作によりアンロックができたという。ただし、プリウスなどのＨＶ車では、車両下部にスターターとかオルタネーターがなく、電源供給が困難で、諦めて扱いディーラーへドーリーで搬送したとのことでことであった。
【過去記事】
プリウス５０ドアロック機能調査
2022-02-07 | 問題提起
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/92c2711db36ad6459619886c60738360
