私の思いと技術的覚え書き

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保険の矛盾 その3 レバーレート問題

2020-08-27 | 問題提起
 今回はレバーレート問題を記してみたい。
 レバーレートは工賃を算出する基礎となる工員1人当り1時間の単価を表すものだ。(同義語:高賃率、man hour rate)従って、個別の作業量は次の算出で見積もしくは請求書に計上することになる。

 工数(もしくは指数、標準点数)×レバーレート=工賃

 では、レバーレートはどのように算出し確定するのかだが、以下の様な算式となる。

 レバーレート=工賃総原価(工員人件費+工場費+一般管理費)/直接作業時間×利益

 このレバーレートについては、かなり昔から時として損保もしくはユーザーと工場の間で問題になることがあり、かなり前だが運輸省(現国交省)で、レバーレートは個別工場が独自に原価計算の算出を行い提示することと指針が出されている。

 しかし、私の30年を超える実務においても、個別工場で原価計算に基づいたレバーレートの算出を行っていることは希で、その地区のリーディングプライス(最上位と見なされる価格)を見据え、適宜それと同等とか若干下げるとかとかして決めている様にも感じられる。また、工場が決めないで、損保側から押し付けられているという意見もあるだろう。

 損害保険会社に対しても、何年か前になるが、公正取引委員会が調査に入り、不当に価格統制していることはないのかという疑念が示されたことがある。この結果、各損保では、個別に各地域のトップディーラーと、その年度のレバーレートを協定し出したということがある。それ以前は、全国最上位となる東京の大手ディーラーとのみ協定を行っていた。

 ここで、正しい原価計算によるレバーレートがあれば、個別修理工場は自由にレバーレートを算出して提示しても良いことは間違いないことだ。ただし、周辺の工場から飛び抜けたレバーレートを提示した時、その商品(整備や板金)を買うか買わないかという自由も、購入者(ユーザーもしくは損保)にもある。ましてや、原価計算なども行わず、修理車が輸入車だからとか、高価な整備機器を導入しているからだけの言い分で、東京の輸入車ディーラーが提示しているという価格に相当する価格を主張しても理解は得られ難いだろう。

 そもそも、伝え聞く米国などのディーラーや修理工場では、フロント(受け付け)のユーザーが見やすい壁などに、レバーレート(man hour rate)が提示されているという。日本では、現在でもその様な姿にお目に掛かったことはない。ついでに、米国の板金工場では、レバーレートを、一般、フレーム修正、塗装などと、個別の作業毎に、変えて提示する場合があると云う。つまり、一般、フレーム修正、塗装と、一般的に想像すると、使用機器および作業者の技量がそれぞれ異なり、付加価値を明示しているのだろう。こういう思想も、日本の工場で見たことはない。

 こんな話題を記すのも、最近レバーレート絡みで訴訟があり、その結果を持って、埼玉県の修理工場側の代表者たるT社長が全国行脚していると聞いたことにある。(別紙参照)


 また、伝え聞く話しとして、札幌の裁判でもレバーレート絡みの修理工場の主張が提示されたが、これは近日のこと、判事側からの仲裁で判決を得ることなく示談となった様だ。

 最後に、個別工場はレバーレートの主張を自由に行うことに反意はまったくない。ただし、損保でなく対ユーザーの視線を常に意識せねばならないだろう。なんの商売でも同じだと思うが、あまり自己主張が強すぎると、損保はともかく、ユーザーに呆れられたら終わりだということだ。従って、損保の理解だとか強行突破する前に、自社の一般ユーザーから見てどうかの視点を忘れてはならないだろう。

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