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損害保険平均修理費統計から読み取れること

2022-01-23 | 車両修理関連
損害保険平均修理費統計から読み取れること
 損害保険業界では、損害保険料率算定機構(従前までは料率算定会)という損害保険業界全体の保険金支払データの提出を受けて、各種統計を行っている。この目的としては、損害保険全社というビックデータにより、その参考純率という指標となる統計をデータ提供の各保険会社にフィードバックしています。各損害保険会社絵は、この料率算定機構の算定純率に独自の解釈を加えることもできますし、そもそもこの参考純率には含まれない各保険会社の経費(事業運営費の比率で付加保険料率と呼ぶ)を加えて各社の保険料率=保険料金を決めています。

 この仕組みになったのは、1996年の日米構造協議での合意(端的云えば米国の圧力)によるのだが、それ以前は損害保険は損害保険料率算定会というところで決定した料率に従うことになされており、独禁法除外の適用を受けており、保険料は各社横並びの同一だったのだ。これは、損害保険というものは、公共事業ではないものの、極めて公共の福祉に影響のある業種と認識されていたからであるが、そのことは保険料が自油化されたされた現在でも変わらないことであろう。

 さて、先の保険料率算定機構では、同機関HP上において、年度別の自動車保険の概況という様な種目別の損害保険の収入保険料だとか支払保険金に関する統計をレポートしている。その中に、料率算定会時代から続く、平均修理費の集計があり、対物と車両と区分されているが、各科目で部品代、工賃、塗装費の金額と各割合が集計されているが、その平均修理費の集計表を添付表に示す。


1.保険の修理費統計の分析
①この表を見る前提として知っておくべきこと
・この集計はあくまで保険を使用した場合の集計なので、実際の修理工場での施行平均値としては、これより低いものであるだろう。そういう低額修理は、保険を使用しない場合が多いと推察されるからだ。

・車両と対物を比べた場合、車両の方が高いが、これは免責金額とか、先の保険使用をしない場合が多いからと想定できる。

②この表で判る傾向
・修理費は部品代、工賃、塗装の3区文に別れるが、それらが合計金額に占める割合は、車両と対物で完全一致しないものの、比較的近似値の割合を示している。すなわち、部品代55%前後、工賃25%前後、塗装20%前後と見受けられる。

・修理費は部品代、工賃、塗装の3区文に別れるが、91年と19年で約30年を経て、それら合計額は車両35%、対物53%upしている。

・それらup率を、部品、工賃、塗装の各項目別のアップ率として比較すると、部品代が車両で41%up・対物で56%upに。工賃で車両が29%up・対物で47%upに。塗装で車両が28%up・対物で47%upにと、端的に云えば塗装も工賃の一種であることを前提とすれば、部品代のアップ率より工賃(塗装含む)のアップ率は見劣りが見られる。

2.私見たる結論
 別添に消費者物価半世紀の推移グラフを掲載するが、あくまでも平均消費者物価としては、1990年からの約30年で13%上昇している。このことを踏まえて、改めて先の平均修理費の対比表を眺めて見ると、部品代はそれなりに平均消費者物価の上昇を上廻る上昇をしている。


 一方、工賃(塗装を含む)は消費者物価は上回るとはういものの、部品代の上昇に比べると見劣りする結果になっていると見えてしまう。

 この結論付けを見て、保険会社は車両メーカー(大企業と言い換えても、大手保険代理店とも解釈しても良いだろう)には受け入れつつ、比較的中小零細企業が多い自整業やBP工場には誠に巧く制御して来たと云えるだろう。

 ちなみに、工賃と記されている部分にも、その作業を熟知している者なら理解するところだが、様々な消耗品たる物品だとか近年では比較的高額となる機器までが必用になっている。具体的に記して見れば、それは、事故車復元に際して、ディスクグラインダーパットだとか、高張力鋼板用の高価なスポットカッター、各種パテ類、OBDスキャンテスター等が想定できる。それと、この10年程度で値上がりが著しく、既に近日値上げが実施されたかされるとアナウンスされている塗料価格などは、塗料自体も価格上昇が著しいが、硬化剤とかシリコンオフなど、著しい価格上昇を示している材料のことがある。おまけに記せば、近年益々廃棄物と発生する樹脂部品などの産業廃棄物について、損保は先の塗料や材料費や工具などは、レバーレートを決める原価要素の一つとなる工場費に含まれるという説明は良しとして、そのレバーレートがこの10年ほとんどアップされていないという現実をどう考えるかと云うべきを思う。

 なお、自整業とかBP工場は、損保の下請け工場ではないので、公正取引委員会が管轄する下請け法で規定される下請け業者になるのかと云えば、その解釈は難しい部分もあるだろう。しかし、多くの自整業やBP業が価格決定権を剥奪されつつ隷従せざるを得ない状態に置かれているという実態を再認識し、個別工場が自社原価を意識しつつ損保の提示する料金について、納得しうる説明を求めていく必用はあると考えているところだ。もし、まともな説明責任が果たされない場合は、損保が掲げるコンプライアンスに反する行為として許されることではなく、それは下請け法で云う「優越的地位の濫用」ということになるだろう。


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