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タカタ破綻のまとめ

2019-10-10 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 ここでは現在でも各車においてリコール作業が継続されているタカタ製エアバッグ類の取替作業について、経営破綻したタカタエアバッグが何故欠陥を生じたののかについて、記憶に留めるため書き留めてみたい。
 エアバックサプライヤーたるタカタは、エアバッグの大量リコールを原因として2017年に総額1兆円を超える負債を生じ経営破綻した。タカタ社は、エアバッグ以前からシートベルトなどの安全装備で世界的シェアを持っており、エアバッグ以外の事業をキー・セイフティー・システムズ(米国企業だが中国企業の100%子会社、なお後日同車はジョイソン・セイフティ・システムズに改称している。)

 そもそもエアバッグ関係を装備した各車両メーカーでの解説では、登場当初から、エアバッグを展開させるガスの排湿を単にチッ素ガス発生材としてか記載してこなかった。これは現在に至るも同様だ。ところで、エアバッグ登場当社(1980年代)のチッ素ガス発生材は「アジ化ナトリウム
だった。なお、全開で最初のエアバッグ採用車はダイムラーベンツ社であるが、日本ではホンダでタカタとの共同開発であった。このことが、最終タカタの破綻時点でも、ホンダ車にタカタ製エアバッグのシェアが多い理由の一つにもなっているのだろう。

 エアバッグは1990年代に急速に全世界で普及したが、作動以前のアジ化ナトリウムの毒性が問題視され、車両メーカーは積極的な公示はしていないが、チッ素ガス発生材の発生剤として非アジ化として別の物資に2000年代から置き換わった。この非アジ化として採用された物質としては、知られているものは2種で1つはタカタ社が使用してきた「硝酸アンモニウム」であり、もう一つが「硝酸グアニジン」となる。

 その後、2000年代初頭になって、米国NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration:自動車や運転者の安全を監視する米国運輸省の部局)発信として、エアバッグ作動時に金属片などが飛び散り、乗員を殺傷する事例が生じていることが公表された。その原因として、タカタ製エアバッグの「硝酸アンモニウム」が吸湿し易いこと、そして転移というある温度を境に膨らみ、温度低下と共に戻るという現象があることを指摘していた。この転移により、硝酸アンモニウムのペレットは無数にヒビ割れを生じ、ヒビ割れ表面積を増したペレットは、作動時に設計値を越えた爆発的な膨張を引き起こすということが報告される様になった。なお、ペレットのひび割れは最終的にペレットを粉状にまで至らせるという。この報告に基づき、NHTSAはタカタ社に対策と求めることになったが、タカタ社はチッ素ガス発生材変更による過大なコストを出し惜しみ、硝酸アンモニウムとエアバッグの異常破裂との因果関係はないと公言して、同製品を作り続けた。

 2008年頃よりエアバッグの異常破裂による事故が次々と判明、2015年11月NHTSAはタカタのエアバッグの欠陥を企業の不祥事と位置づけ、同社が適切なリコールや情報開示を行わなかったため、アメリカ国内で被害を拡大したとして最大2億ドル(約240億円)の民事制裁金を科すと発表した。NHTSAが一社に科す制裁金としては過去最高額。リコールでは過去最大となった[24]。タカタと自動車メーカーに対して、2019年末までにエアバッグの修理を完了するように命じた。制裁金に加えてリコール費用、訴訟費用が巨額に膨らむ可能性があり、会社存続の危機と指摘された。

さらに同月、最大顧客であるホンダがタカタの提出データに不適切な報告の形跡があると指摘、今後は開発中の新型車にタカタ製インフレーター(膨張装置)を使わない方針を表明した。これに続く形でマツダやスバルなど国内自動車大手も、タカタが製造したインフレーターを使わないと相次いで表明した。日本経済新聞によると、2016年4月時点でエアバッグのリコール対象となる搭載車は世界で1億台以上、費用は総額1兆円に上るものとみられる。これら結果、冒頭に記した通り、タカタは2017年に総額1兆円を超える負債を生じ経営破綻した。



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