私の思いと技術的覚え書き

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豪華客船建造中の火災事故から思うこと

2008-05-03 | 事故と事件

 今を去ること6年前のH14年10月1日のこと、 三菱重工・長崎造船所で建造中の豪華客船「ダイアモンドプリンセス」号が火災事故を発生しました。Photo_2同造船所は船艦「武蔵」も建造した歴史ある造船所です。
 この「ダイヤモンドプリンセス」号は「武蔵」(全長253m、72千トン)を超える、全長290m、総トン数113千トンという大型船で、推定500億円で受注された様です。同船は、進水を完了し船内の艤装工事中に火災事故を生じたのです。同火災は約36時間に渡り延焼し、これにより船内床面積の40%程を焼損し、その損害額は推定300億円とも伝わっています。この損害は船舶建造保険で補填された様ですが、メーカーは別途に納期遅延損害金として130億円を負担した様です。

 さて、この様な大規模な損失を生じた火災事故が何故に生じたのでしょう。本件火災原因は、ある作業員が配管用の金具を船内天井に直溶接作業を行い、その上部客室の床に置いてあった可燃物から出火し延焼したとのことです。当然、社内規則として天井の直溶接時は、事前の申請や見張り員の配置等が定められていました。しかし、作業員はこれらを軽視し、直属管理者もその行動を察知したにも関わらず、何らとがめ立てせぬという不作為を行ったのです。しかし驚くことはこの火災以前の工事中、同様原因による失火事故が4件生じていたことなのです。つまり、予兆となるべき事象が繰り返し起こっていたのです。しかし、同船開発全体を統括すべき管理者達は何らその危険を認知せず、危機管理の不足があったのです。なお、事故の背景として、工期の遅延も生じていたと云われています。

 近年の同様の大事故増加の潜在的要因として、リストラによる熟練者の不足や、士気の低下があると伝えられています。バブル崩壊以来の企業の収益悪化は、人材を排除し、その教育を低下させ、設備更新を遅れさせ、この様な大型事故を増やしているとも云われます。単にコンプライアンス等として規則強化を図っても、それだけではこの様な事故は根絶できないと感じます。労働の本質的な質を改善すべき問題の様に思えてなりません。




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