ブレーキという装置は運動エネルギーを熱として吸収する装置です。そんな訳で、昔のクルマで使用されたドラムブレーキは徐々に姿を消し、熱放散性が良いディスクブレーキが主流となってきた訳です。
ところで、最近発表された1500万円也のGTR・Vスペックに採用されたカーボンセラミックブレーキですが、ディスクプレート1枚が80万円位するそうです。多分、パッド交換2回毎位にディスクプレートを交換する様なことになるんでしょうから、ぜんご4枚とパット交換したら400万円近く要するのではないでしょうか。私には関係ないことですが、ビックリしてしまいます。
このディスクプレートのカーボン材ですが、カーボン繊維をカーボンで焼き固めたカーボン/カーボンとい云われるものです。スペースシャトルのノーズコーンにも使用されるという、極めて耐熱性の高い素材の様ですが、大量生産されていないこともあるのでしょうが、超高価な素材であると感じます。
この様なカーボンディスクプレートですが、あくまでも高温時に高い摩擦係数が得られることと、従来の鋳鉄より軽いことがメリットであって、純レーシングマシーン意外にあまりメリットはないようも感じられます。
ところで、クルマの発祥の頃のブレーキは、機械式のリンク機構を使用したものであって、例えて見れば現在のパーキングブレーキや自転車のブレーキ機構の様なものです。ところが、現在のクルマではほとんどが、油圧式ブレーキが使用されています。これは、液体の場合は圧力による体積変化が小さく、パスカルの原理により、各車輪毎に必要な油圧を遅滞なく伝えられるという大きな長所がなるためでしょう。
油圧式ブレーキの作動油ですが、オイルと呼ばずにフルード(液)と呼ばれます。これは、ブレーキ機構内に使用されるラバー部品の保護のために、通常の潤滑油とはまったく異なる成分を使用しているためです。
このブレーキフルードですが、DOT規格というのがあり、沸点性能に差異があります。すなわち、ブレーキフルードが高温で沸騰しますとベーパーロックといって、圧力が伝わらなくなりますから、高性能ブレーキを備えたクルマ程、高い沸点(高いDOT規格品)の使用が必要となります。なお、ブレーキフルードというのは吸湿性を持っており、使用期間中の水分混入により、沸点低下を起こす様ですから、車検毎位にはブレーキフルードの交換が推奨されています。
油圧ブレーキ意外に使用されるブレーキシステムに、エアーブレーキというのがあります。これは高いエアー圧により、ダイヤフラムを動かして作動させるものです。ところが、空気というのは液体と異なり、空気圧により大幅に体積変化します。つまり、ブレーキの作動遅れが生じ易いという欠陥を持っているのです。その作動遅延を減らすために、特に後輪等離れた部位用にリレーバルブ等も使用されますが、現在連結トレーラー車以外の単車においては、純粋なエアーブレーキを使用しているクルマは少ないのだと思います。
ここで、純粋なと記したのは、中型以上のトラックの運転席に乗り込むと、ブレーキペダルは、アクセルペダルと同様のオルガン式ペダルな訳です。そして、ブレーキペダルと踏んで離すとプシューとエアーが開放される音がしますから、エアブレーキだと思ってしまいます。この様なクルマの側面を見るとエアータンクの近くにエアーで倍力されるマスターシリンダーとブレーキフルードのリザーバータンクが設置されています。つまり。この様なクルマでは、ブレーキペダルからエアマスターまでが空圧で、その先のホイールシリンダーまでは油圧式というものなのです。この様なブレーキシステムを「エアーオーバーシステム」等と呼ばれます。
エアーブレーキの話に戻りますが、トレーラー等の随時連結と開放を繰り返すクルマでは、油圧式の様なエアー抜きの操作も入らず、単にエアーチャックを接続するだけで済みますので利便性が高いものです。但し、エアー圧がなくなると無制動状態となり危険でもあります。そのため。エアブレーキ車では、ブレーキチャンバー(ダイヤフラム)部に、スプリングブレーキ機構というのが採用されており、エアー圧が下がるとスプリング力で制動状態にしてしまう仕掛となっているのです。
話は離れますが、相当昔ですがシトロエン(種種は覚えていません)を若干乗る機会があったのですが、停止状態でブレーキペダルを踏んだら、まったくストロークが感じられず驚いたことがあります。これで、走ったら、デジタルじゃないけどON、OFFしかないブレーキで大丈夫かいなと思いながら、恐る恐る走ってブレーキを踏んだのですが、ペダルストロークはないけどちゃんと踏力に比例して制動力が働くのに関心してしまったことが思い出されます。