goo blog サービス終了のお知らせ 

 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

関心すべきレストア工場の記憶

2018-07-21 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 およそ古いクルマに魅力を感じ続ける中、種々の工場でレストアを手掛けていたり、その途上で放置状態で鎮座している姿などを度々見続けて来ていた。そんな中で知る知識から、レストアとは企業として取り扱うに、相当の難しさがあるということを痛感する。すなわち、必ずしも新品でなくても良いが代替え部品の入手が困難を極め続けることになる。そして、代替え部品相当を一品物として製作するにしても、その工数は相当なものとなる。しかも、クルマの様な構成部品が多いモノでは、総体としての工数はとてつもないものとなり、結局請求しきれないということになるからだろう。

 事例として、ある腐食バネルを修復する場合を考えてみよう。つまり鋼板パネルに孔食していたり、錆び除去の結果、孔食だらけになってしまうとかあるだろう。板厚0.9~1.6程度の薄板鋼板で形成されるボデーの各部位を、すべての錆び除去した結果、多くの孔食と板厚減肉により、その強度は折り紙細工の様なものとなってしまうだろう。これら傷みの酷いパネル部位を、別途の平板パネルを成型して、張り直して修復するのは、空恐ろしい工数が生じるだろう。そんなことから、多くの場合は錆び落としもそこそこ、その上にアルミテープを貼り上にパテを被せて塗装で仕上げてしまうということにならざるを得ない。それでも、表面上はなんら判らない訳である。しかし、そんなレストの寿命は、いいところ半年というものではないだろうか。そんなレストア車でもフルレストアと記されている場合もあるのだろうが、これは詐欺だろう。

 これは今から14年前(2004年)に現実に接し、大変驚いた記憶だ。
 仕事絡みで昭和40年式クラウンのパーツを探す中で、岡崎市にトヨタS800(通称ヨタ8)を得意にする驚くべきレストア工場さんと知り合うことが出来た。この工場さんは、元々が鈑金屋でなく整備工場だという。先にも記したと通り、ヨタ8が得意で、ほぼ専門ともいえるレストアを手がけているとのことだ。
現在、お客さんから預かっているヨタ8が20台位あるということであった。

 まず、レストア済み車両を見せてもらうが、外観は丁寧な作業さえ行えば十分このレベルのことは何処の工場さんでもやっていることと思う。しかし、エンジンルーム内を見れば、ボルト1本が、単なる金属製のブラケットが、新車同然の輝きというか質感を持っている。(各ボルトも新品同様のクロメート処理をしているとのことだ。)これらのことは、エンジン搭載前の作業途中の写真を見てもらえば、更に良く判ってもらえると思う。

 そして、別工場でのホワイトボデーのレストアの様子も見せてもらうが、ロッカーパネルからフロア関係等はほとんどが作り直している様子が伺える。しかし、驚くのは工場内にベンダーやシャーリングがあるのはともかく、プレス機までが鎮座しており、ある程度のパネルやブラケット類は内製しているとのことなのだ。別工場におけるボデー作業写真を見てもらえれば判ると思うが、フロアパネルの凹凸加工等もオリジナルに忠実に綺麗にプレス加工されている。何しろ、錆の生じたパネルはすべて切り取り、新製パネルに付け直すという作業を行っていることが判りる。インナーパネルについては、オリジナル同様にほとんどパテ付けすることなく作業がなされていることが判かる。但し、アウターパネルは、面出しのために総パテ(ポリパテ)にはなるとのことであった。

 しかし、驚くべきことは別にある。それは、工期(というか納期)のことなのだ。ここまでの作業を行う前提で、ユーザーからは3ヶ月を目処として受託しているとのことであった。この内、ボデー関係の修復に2ヶ月、そして組立に入って1ヶ月で仕上げるペースで進めているとのことであった。この工期については、私が今まで見聞きしてきたレストア作業とは一線を画す信じられない工期であろう。(通常レストア受託は納期なしの前提で受託する工場さんがほとんどだろう。)

 ボデー作業者は3名体制で何れも比較的若い方だが、以下の様な理由によって作業期間の短縮を達成されていることが伺えた。
・予め頻度の高い部分パネルをプレス機等で作りストックしていること。
・同一車種を繰り返し行うことによる作業の標準化が達成されていること。
・メカニカルパーツ等も膨大な在庫を保有していること。
 以上の様な理由により、いわゆる部品待ちの期間がないことも、工期短縮の大きな要因であると思います。しかし、同社社長さん曰わく、当初は時間が掛かってしまって、どうしたら短縮できるかを何度もミーテングを繰り返して来たと話されていたのが印象的に残る。また、同じく同氏は、当初はボデー修復を板金工場に外注していたが、納期が長く思った様な仕上がりにならないことや、こちらの要求を聞いてもらえず喧嘩になることもあったというがムリからぬところであろうと感じた。
 しかし、私が今まで読んだり見たり聞いたりして来た車両のレストアというのは、事業として採算を取ることが極めて困難であろうというものだ。(工期が掛かり過ぎその分の総てを請求しきれないというもの。)しかし、車種に特化し、総員10名弱だとお見受けする体制を維持しつつ、レストアを事業として進めているこの様な工場があることを知ったことは、驚き感心する出来事となったのだった。

追記
 同社社長の話として追記する。この納期3ヶ月も、比較的構造が簡単なヨタ8だから出来ることで、今までヨタ2000もやったが、複雑で部品点数が多く、到底出来るモノではなく、費用(工数)も空恐ろしい程に掛かるとのことであった。
















最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。