偶には技術アジャスターらしく、技術的な内容として記してみようと思います。
先日、丁度1年程前に新車購入したワゴンRステングレイで、妻に友人との一献の待ち合わせ場所へ送ってもらった際の、暗くなった時刻のことです。最近は軽でも生意気いなことにHIDヘッドランプが装着されている訳ですが、それに照らし出されて前方を走るスカイライン(最新型のV36だったと思う)ですが、リヤバンパーとトランクリッドの塗色が全然異なり「かっこ悪いツートンカラーの塗り分けだなあ」と思って見ていました。渋滞で停止したので、ヘッドランプを消して見ると、色差はなくなり同色であることが判りました。この現象は、「条件等色(メタメリズム)」というものです。
類似の現象に、高速道路等を走行中にトンネル内に入りと、ナトリウム灯に照らし出された自分の肌色がまったく異なって見えることに気付かされます。この様に「条件等色」とは、光源に含まれるスペクトルによって、物体表面の塗色に使用される顔料等の差異で色差が生じるという現象です。今回のスカイラインのケースでは、きっと太陽光線下では殆ど同色に揃えられている訳ですが、バンパー部分はウレタン塗装であり、トランクは熱硬化型(焼き付け)塗料な訳で、それぞれ別の顔料が使用されているから生じているのでしょう。
この条件等色ですが、事故における塗装修理の際にも問題となることがあります。現在、ほとんどのクルマはカラーコードという塗色別の記号で管理されており、補修用塗料メーカーによって、カラーコード別に各原色の混合割合がデータベース化がされています。ですから0.1g単位まで計れる正確な重量計によって精度良く、補修部位の塗色を作成することができるのです。
しかし、同一車であっても使用過程車では塗色部位別に退色の具合が異なっていたり、製造プラント(工場)や納入塗料メーカーの違いで、同じカラーコードであっても色の差(これを色振れと云う)が生じている場合があります。また、特に車体の下側に多いことですが、上塗り塗料の塗膜厚が薄く、下色の影響を受けている場合(これを透けと云う)があるからやっかいです。
何れにしても、塗料メーカー指定する割合通りに原色を混合し、試し板(テストピース)に塗装して、現車の該当部付近の塗色と比色してみる必要があります。この際に問題となるのが光源であり、蛍光灯の下で比色しても太陽光の下では異なってしまう可能性がありますから、太陽光下で比色する必要がある訳です。なお、太陽光と云っても、夜明けのと真昼では太陽光のスペクトルは異なる訳ですから、昼間の直射日光下でない日陰で比色することが一般的に必要となることです。
なお、この比色ですが、該当部位に垂直の視線で見ること(正面と云う)と、斜め方向からの視線で見る(スカシと云う)の2種類があります。(正確にはスカシ方向対し、光源の後方から見るものと前方から見る2種があるので3種類とも云えますが。)良く聞くのは、「正面はピッタリだけどスカシに赤みがないんだ」等との塗装職人の言葉な訳です。
最後に、昨今の塗色の難しさの中で、ある程度透けることを前提とした塗色(止まりの悪い色)が増えていることがあります。この様な塗色は、建物外の明るい環境と建物内の薄暗い環境での色差を生み出します。塗料の種別にソリッド、2コートメタリック&パール、3コートパールとあり、3コートパールが最も難易度が高いと一般には云われますが、2コートパールであっても、この明暗の差異による色差には苦労している塗装職人も多いものと感じています。
追記
前にも当ブログで記したかもしれませんが、濃色(黒っぽい色)と淡色(白っぽい色)でに色差は、淡色の方が圧倒的に目立つのが人の目の特性です。ですから、濃色の2コートパール(ブラックパール等)では、隣接パネルにボカシ(色差を区切りを曖昧にする技術)をしないで、ブロック(パネル単位)で塗り込んでいるケースも見掛けるものです。