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アルミの温度と強度・様々雑多な話し

2022-04-19 | コラム
アルミの温度と強度・様々雑多な話し
 アルミニウムそのもの(純アルミ)は強度が比較低小さく、強度部材などにはアルミニウム合金(ジュラルミン含む)が使用される。このアルミ合金だが、かなり多種別がある様だが、大きな特性としてザックリ知っておくとことは有用だと思える。つぎの様なことがらだ。

・アルミの融点は660℃と鋼(およそ1500℃)と比べれば低い。
・アルミは過熱し融点に達しても赤熱状態にはならない。
・アルミは高温側の過熱で急速に強度(引っ張り、降伏、耐性など)が低下する。一方低温側では強度が増す。
・アルミを400℃まで過熱すると、未だ融点以前だが、その結合結晶構造(面心立方格子)がバラケ、冷温に戻しても強度は復元しない。


 ということがあるが、自動車に使用されるアルミ合金の場合、アルミの比重は約3に対し鉄は約8で約38%と程軽いが、ヤング率(変型しやすさ)はアルミ70GPaに対し鉄は210GPaと約33%と小さい。従って、アルミによる軽量化は鉄より38%軽くできるかと云えば、単純に鉄の形状をアルミに置き換えた場合は大幅な強度不足になってしまう。単枚の板物の強度はその板厚により決まると考えて良いが、柱状とか構造物の強度となると、その断面積とか断面形状に左右されてくるが、大まかに一般論として想定すれば、鉄をアルミに置き替えた場合の重量は2/3程度が実情の様だ。なお、自動車の外板パネルなどの鋼板は0.9t前後が一般的だが、アルミ合金だと1.4t程度の場合が多い様だ。

 ところで、変型したアルミを修正しようとした場合、アルミは板厚が増やされておりしかも加工硬化しているので、予想を超えて抗力が強く直しづらいということがある。アルミに限らず鋼板でも、直す場合に冷温だと、変型し加工硬化しているがために、シワが直らないという場合に過熱して、ある程度軟化させて修正する場合がある。この鋼の過熱においては、オーステナイト温度(900℃)以上にしないという原則的なことがある。つまり、オーステナイト以上だと、鋼の与えられた特性がリセットされてしまうということなのだ。これをアルミ合金の場合だと200℃までが一定の昇温限界となる様だ。

 添付表はアルミの温度毎の強さを示したものだが、200℃でおよそ30%にまで下がるのだ。しかも、アルミは過熱により色相がほとんど赤熱するとか変化しない。だから過熱する場合は、指温塗料とか石鹸を塗って焦げを観察することで昇温させ過ぎない様に注意しなければならない。

 このアルミの耐熱性の低さは車両火災の車両を観察するとよく判る。鋼製部品は表面の塗料が燃え、直ぐ錆が生じるが、アルミ部品で強い火炎を受けた部位は、溶け落ちてしまっている場合を良く見る。これは鋼が1500℃の融点に対し、アルミは660℃融点ではあるが、400℃程度で既にほとんど強度を失い形状を保つことができなくなるためと思える。なお、車両火災の火炎温度は、400℃~余程高い場合でも600℃程度までだと推定できる。

 最後に、エンジンのシリンダーヘッドの燃焼室やピストンなどアルミ製だが溶けないではないかという疑問があるが、これは正常な範囲の燃焼を行っている場合、その燃焼の中心部は2千度近い高温になり、もってNOxなどの生成があるのだが、その燃焼室壁面との間には温度境界層という一種の膜ができて断熱されると解説されている。ただし、この温度境界層の膜も、異常燃焼の高速な爆風に晒されると、膜は保持できずに燃焼室を溶損するという事態になるのだ。

 と云うことで、アルミを軽いからとディスクプレートに使うことは考えられない。また、カーボンコンポジット剤も、カーボン自体は数千度の耐熱性があるが、くるむ樹脂は200℃までの耐熱性はない。ただし、カーボンデスクは、カーボン繊維とカーボン粉を超高温高圧で焼成したもので、すべてがカーボンなので、軽くて耐熱性が極めて高い。


#アルミ #様々雑多な話し


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