私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

バックラッシュのこと

2016-12-07 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 バックラッシュとは、クルマに限らずだが、複数ギヤ間における遊び(隙間)のことを指す。バックラッシュは設計時点において適正値が決められるが、そもそもバックラッシュゼロにすると、ギヤ歯間の油膜が作られず、歯面焼き付きを生じる。しかし、経時的なギヤの摩耗などに伴いバックラッシュが増大すると、ガタ打ち音など騒音の増大や、ギヤ歯の欠損を生じる要因となる。

 なお、トルク(回転)変動のあるギヤ間では、バックラッシュがあるがため、ガタ打ち音(ガラガラ音)を生じるのを嫌い、同軸上の薄いサブギヤをスプリングで予圧し、見掛け上のバックラッシュをなくしたシザーズ・ギヤなるメカを利用したものがある。現在は吸排気カムシャフトに進角機構を採用するため減ったが、一時期のトヨタツインカムでは吸排気どちらか一方をタイミングベルトで駆動し、カムシャフト間をシザースギヤを利用したヘリカルギヤで駆動伝達を行って騒音を生じない様にしていた。

 トランスミッションにおいて、今でもトラックなどのMTミッションで、アイドリングでガラガラ音を生じ、クラッチを切ると異音が消えるという現象を時々体験する。これは、インプットシャフトギヤとカウンターシャフトギヤのバックラッシュによる歯打ち音だ。これも、現在はATの占有によりMTの需要は減ったが、シザーズギヤと同様の仕組みを、カウンターギヤ側に持たせて、解消している例があった。

 なお、修理などにおいてシザーズギヤが使用されている場合、その使用を意識した取扱いが必用になる。つまり、ギヤを外す場合は、サービス用のボルト穴にロックボルトをねじ込んで、メインギヤとサブギヤ間をロックしてズレない様にすることである。これを意識しないで、ギヤを外しと組み付けを行うと、バルブタイミングが狂ったり、シザーズギヤの予圧が働かなくなり異音を生じたりの原因となる。

追記
 クルマのギヤで最も高精度かつ高負荷に耐え、しかも静粛性に優れるものとしてハイポイドベベルギヤがある。通常のベベルギヤが、交差する軸芯を一致させているのに対し、あえて軸芯をずらすことにより、同じリングギヤ歯幅でも、より長いピニオンギヤ歯幅を稼げることや、強い捻じれ角により同時に複数の歯間伝達できる特徴を持つ。また、リングギヤ下方にピニオンをオフセットさせることで、プロペラシャフト位置を下げることができる点も有利な点であろう。このハイポイドベベルギヤは、より高負荷に耐えうるギヤとしてFRや縦置きエンジンのFFやMIDエンジンには、多く使用されている。

 このパイポイドギヤだが米国グリーソン社の登録商標で、歯切りも今でも同社の工作機械に頼っている様だ。それと、歯切り後のラッピング(擦り合わせ)も行われ仕上げられる様であるが、このことは、リングギヤとピニオンは必ずセットでの取替が必要となることを示す。そして、正常な歯当たりを得るためには、ラッピング時にセットされた各ギヤ位置の関係を再現する必要があることが、ハイポイドベベルギヤ最大の肝要となる点であろう。





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