私の思いと技術的覚え書き

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SUキャブの回想(再録)

2017-11-22 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 1年ほど前に記した駄文解説だが、一部訂正して再録する。今や排ガス対策で絶滅せざるを得なくなったのがキャブレターだ。そのキャブレターの中でも、シンプルかつ合理的で中低速から高速域まで、非常にドライバビリティに優れたキャブであったと思いだす。
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SUキャブの回想 2016年11月18日
 燃料噴射以前のキャブレター全盛期の頃、ソレックスとかウェーバーは存在し、それなりの最高出力は得ていた。しかし、如何にせよ低中速の過渡特性が悪く、スポーティーカーの多くは、ツインキャブとしてSUキャブというのが多用された時代があった。

 このSUキャブだが、オリジナルはイギリスだと思うが、サイドドラフト(横向き通風式)で、英国のローバーミニなどではシングルキャブで使われた例や、ジャガーのストレート6ではトリプルキャブもあった。国産スポーティカーではツインキャブとしてほとんどが使用された。当方は、主にトヨタに触れたので、ここではトヨタエンジン(M-Bとか16R-B)のことを中心に記してみる。
 このキャブレターの特徴は、スロットルバルブの上流にベンチュリーを持つが、これが吸入空気量に応じて可変(可変ベンチュリー)することで、ベンチュリー下端に装着されたテーパー状のニードルが、キャブ本体のジェットホールを上下する機構となっており、アイドルから最大出力まですべてのミクスチャをこの機構だけで制御しているというものだ。一般的なキャブにある、メインとは別途のスロー系統もなく、急加速時の空燃費の薄さを補う加速ポンプもない。チョーク機構も、ニードルが刺さったジェットを機械的に下げて空燃費を濃くするという機構だ。

 外見上、徳利型をしたサクションチャンバーとその中を吸入空気量に応じて上下するサクションピストンがある。サクションチャンバーの上部中央には手回し式のプラグがあり、外してみると判るが、内部にオイルが入っており、ダンパーの役目を持たせている。つまり、吸入空気の変動をある程度ダンピングして、サクションピストンの過敏に上下することで、ドライバビリティが悪化することを防いでいるのだ。

 通常のキャブだとメイン系、スロー系、加速ポンプ系だとか複雑化するが、非常にシンプルかつ合理的な設計のキャブだったと回想する。また、要となるニードルのテーパー形状は、エンジン特性に合わせてセッティングされている。但し、欠点もあって非常に外気温など温度に敏感というものだ。この欠点をカバーするため、トヨタのSUでは、キャブのジェット下部にサーモエレメントというワックスを封入した機構が取り入れられていた。温度によってジェットの上下位置を自動調整するものだが、この不良が多発した。すなわち、ジェットが下がったまま戻らず上がらないから、全般に過濃ミクスチャとなり不調となったのだ。

 キャブ下部には、袋ナットがあり、これを外し内部のスクリューを廻すことで、ジェットの位置を調整することは出来た。COメーターを見ながら、適当な位置に調整することで、見違える様にクリーンに吹き上がるエンジンが回復したものだ。但し、このSUキャブではアイドルCOの調整は、全回転域に影響を与えるものであって、全域で空燃費リーンとなり過ぎると、当時のエンジン設計上の理由もあっただろうが、数ヶ月もしてピストンやEXバルブの溶損までが生じる事例というのもあったものだ。

 なお、ツインキャブ以上の場合は、アイドルにおいて、各スロットルバルブの開度を連携して同調させる必用があるが、これは従前SOLEXで記したこととまったく同様なので割愛する。



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