私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

昔を思い出すAT

2019-06-17 | 技術系情報
 写真は知り合いの板金屋さんで見た古いムーブ(L900系)のAT乗せ替えの際に撮影した旧AT(トランスアクスル)です。このくらいの年式だと未だ電子制御じゃないんだなぁと、スロットルケーブルがAT内部に繋がっているのを見て思ったたら、解体屋でスロットルケーブルぶち切ってあって付け替えたとのことです。

 まあ、解体屋さんじゃムリない話しだと笑いながら話しをしていたのですが、写真2(赤丸)の調整ボルトを見て、15年前にこういう調整ボルトを持ったAT作ってたんだとちょっと驚きました。以下は、板金屋さんとの一問一答です。

私:このATの不具合滑りですよね?
板金:そうだよ。
私:バックが滑って動かないんでしょ。
板金:良く判るじゃないの!

 てな会話ですが、この手のAT外部の調整ボルトは、トヨタで云えば40年前のトヨグライドといわれる時代まで使われた方式です。(オリジナルは米ワーナー社の方式でしょう。)

 AT(俗にステップATと呼ばれるCVTでないもの)では、プラネタリギヤユニットを複数使用して変速段数を生んでいます。プラネタリギヤは、サンギヤ、ピニオンとピニオンを束ねるプラネタリキャリヤ、そしてピニオン外周を内接するリングギヤの3つで構成され、この内の1つを固定し、その他の2つが入力と出力になるのはご存じのところでしょう。同軸上で加減速できますから、AT以外にもリダクションスターターの減速ギヤとか、古くはゼロ戦の様な星形エンジンの減速ギヤとしても使用されてきたものです。

 そこで、話しを先の外部調整ボルトに戻しますが、これがあるのはリングギヤを固定するブレーキが俗にバンド式と呼ばれる外縮式ブレーキ(一般的な制動ブレーキが内拡式の反対)であるのです。現代ATではプラネタリの各要素を固定するのは、総て多板式(ドリブン、ドライブの多層板ブレーキもしくはクラッチ)です。このバンド式は、摩擦面積が小さく寿命が短いので、現代ATではまず使われない方式です。

余談
 写真2の(緑丸)のタイトボルトですが、AT外観の何れかに合計3箇所あるハズです。これらは、①ラインプレッシャー(エンジン出力に相関)、②ガバナプレッシャー(車速に比例)、③スロットルプレッシャー(スロットル開度に比例)を持ち、それぞれに油圧計を接続しトラブルシュートを行えるもので、遙か昔のトヨタ技能検定を思い出します。




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