goo blog サービス終了のお知らせ 

 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

電子制御燃料噴射の昔話 その3

2022-05-01 | コラム
電子制御燃料噴射の昔話 その3
 ここでは、前回に続きガソリンエンジン用電子制御燃料噴射の昔話その3として記録したい。
 
 さて、燃料噴射を利用するメリットのことだが、これは自動車評論家などは機械に比較的無知で、説明されることが少ないこととして記したい。燃料噴射の利点が生じる副次的な利点の一つとして、キャブレターの場合はキャブレターという機構に給気管を集合させるがため、給気管の配置とか主に給気管の長さとか太さの自由度が奪われるという問題がある。
 燃料噴射では吸気ポート内にインジェクターを設置すれば、給気管長などの自由度が増えるという利点があるのだ。レシプロ内燃機関の吸排気管というのは、ピストンの上下運動により間欠的もしくはパルス的に吸排気が行われるのだが、そこには吸気慣性、吸気排気干渉、吸排気共鳴というべきパルス状波が与える効果を積極的に利用し、ターボみたいな付加物を付けることなく、加給効果を高められるというべき思想があったのだ。このことは、燃料噴射機構を持つ高性能実用エンジンだが、比較的長めの吸気管長をあえて与えているという姿を感心を持つエンジニア的素養のある者は気付くことだろう。

 一方、ボッシュはKジェトロで機械的エアフローを噴射ポンプと機械的リンクで接続する機構上、装置の制限があったり、より緻密な空燃比の制御を目指して、Dジェトロニックと呼ぶ給気管負圧を検出(独語"Druck"(圧力)を意味)して電子制御的に間欠噴射するメカを先行開発していた。これをDジェトロニックと呼び1967年に登場している。ところが、給気管負圧は、それが直ちにエンジン吸入空気量を決定するパラメーターでなく、未だマイクロプロセッサーもない時代に、コンデンサーの充放電時間を元にした二次関数的な噴射特性では、必ずしもガソリンエンジンに求められる適正空燃比とはならず、過渡特性にやや難点を持つのが当時のDジェトロニックだったと思える。結局、これが解消されるのは、エンジン制御にマイクロプロセッサーを使用し、空燃比のマッピングテーブルを記録しておき、随時参照して空燃比を決定できる時代まで待たねばならなかった。

 ボッシュ社はDジェトロとKジェトロを開発して来て、電子制御においても、空燃比を決定できるパラメーターとして吸入空気量を直接計量(独語のLuft(空気)の意味)することが極めて有効と認識し開発されたのがLジェトロニックで1974年より採用された。この吸入空気量を直接計量するタイプをマスフローコントロールとか、空気量とエンジン回転数で基本空燃比が決定されることから、スピードデンシティ方式とも呼ばれる。なお、当初のエアフローメーターは、正に空気量を計測するフラップ式だったため、空気温度により密度の影響を受けることもあり、これを保障する目的で、エアフローメーター内に吸気温度センサーが設置されていた。なお、後年、エアフローではなくエアマスセンサーと呼ぶ空気重量を計測する熱線式センサーが主流となった。これによる基本噴射量は、以下に示す計算式で決定される。

 基本噴射量(噴射時間)=(吸入空気量/回転数)・係数

 なお、係数は一定の定数であり、吸入空気と回転数で基本噴射量は決定されると考えてよいだろう。なお、この基本噴射量は、理論空燃比にセットされるのだが、エンジンの設計によりその範囲は異なるが、一般に高回転高負荷の状態では、エンジン内部の燃焼室を構成する部品の耐熱限界もあり、ある程度空燃比をリッチにして(これを出力空燃比とも呼ぶ)、燃料による冷却により燃焼室構成部品を耐熱温度以下に保つということを行っている。

 また、現在でもガソリンエンジンにはDジェトロに相当する給気管負圧とエンジン回転数とECU内のマッピングテーブル参照で基本空燃比を算出する比較的安価なコスト重視の車両とといおいうか、もっと端的に記せばターボなりで吸気加給を行うエンジンではLジェトロに相当するエアマスセンサーを備える場合がほとんどだ。これは、給気管が正圧以上になるという環境で吸入空気マスが桁違いに増加するが、これは給気管負圧ではセンシングできないし、加給の過渡的状況も含めてマッピングでは対応できないというところにあるのだろう。

 最後に補足として記すが、現在のマイクロプロセッサーを使用したエンジンECUでは、基本噴射量を正規のフューエルトリムラインとして認識しており、ここでO2センサーや空燃比センサー信号で、増量や減量して理論空燃比に制御しているが、短時間の適正理論空燃比への以降は短期フューエルトリム(微調整)として問題にはしないが、一定時間の運行において、常に基本空燃比よりチッチ側もしくはリーン側に偏った制御が継続していると、フューエルトリムエラーという警告を出す(見かけ上はエンジンチェックランプが点灯するが、スキャナでDTCチェックするとフュエルトリムエラーの記録がなされている場合がある。このフューエルトリムは、およそ継続時間において、基本空燃比より20-30%程度リッチもしくはリーンに触れ続けていると検出される様だが、その原因としては様々な理由が考えられる。例えば、エアマスセンサーの特性狂い、O2センサーや空燃比センサーの不良、エアマスセンサーより下流におけるエアもれ、外部機器の接続による噴射増量などが原因となる場合が想定できるが、その範囲が広いだけに広範なエンジン知識に精通しており、修理書に記されていないアルゴリズムをある程度想定できる者でないとその不具合発見は難しい場合が多いだろう。

【参考過去記事】
O2センサーからA/Fセンサーへの移行は何故か?
2022-02-13 | 技術系情報
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/94255290d07899b588789e8cc0d796fa


#燃料噴射の昔話 #燃料噴射を使う利点


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。