昨日(7/7)、福岡市で観覧車の解体工事中のクレーン車2台が転倒すると共に、解体中の観覧車支柱も横倒しとなる事故が生じたと報じられています。この事故で、クレーン車の操縦者(オペレーターと呼ぶ)がキャビン内に挟まれ病院に搬送された他、付近に駐車中の車両4台が下敷きとなったといいます。
今回の事故原因は、今後の調査を待つことになるのでしょうが この様なクレーン作業中の転倒事故というのは、時々報じられるものです。そんな中、クレーン車の転倒原因のことを、知りえる知識の中で記してみます。
そもそも、クレーンには、固定式クレーンと移動式クレーンがありますが、転倒事故を起こすのは移動式クレーン車のみです。固定式とは、建屋天井に取り付けられた天井クレーンとか港湾荷揚用ガントリークレーン、造船所や大きなビル建設で設置されるクレーンなどになりますが、何れも、クレーン装置が固定または反固定されており転倒事故は起こりえないものです。
これに対し、移動式クレーンでは、車輪かクローラ(キャタピラ:履帯)の違いはありますが、自由に作業必用場所へ移動することが可能という利点があります。しかし、クレーン本体が固定されている訳ではありませんので、ちょっとしたアンバランス状態に陥ると、転倒事故に結び付くのです。このアンバランス状態ですが、種々考えられると思いますが、想定される代表的なものとして以下に記してみます。
①設置場所の地盤に関わる要因
ホイール式(タイヤ付き)移動クレーンでは、登録ナンバーが装着され路上走行可能です。当然、各車輪にはサスペンションが装着されていますが、クレーン作業時は吊り過重の反力を受けますから、そのままでは安定した作業はできません。そのため、車体の四角にアウトリガーという支持棒を直接地面に接地させ、車輪が浮き上がる程度まで車体を持ち上げ、サスペンションを効かなくさせます。この際に、アウトリガーの接地部は、軟弱度合いに応じて十分な面積の当木や鋼板を敷く必用があります。この手当が不十分ですと、大きな反力を受けた該当アウトリガー接地部が地面に沈み込み、転倒事故に至る場合があるのです。
なお、クローラ式クレーンでは、アウトリガーは装備されませんが、左右クローラの間隔(クルマで云うトレッド)を広げる機構を持っています。さらに、広い接地面積を持つクローラであっても、軟弱地盤地では、鋼板を敷き詰めるなどの手当は行われているはずです。
②旋回半径に関わる要因
今回の福岡での事故の写真は判り難いのですが、よく観察してみると10輪くらいの多軸トラッククレーンであり、最大吊り過重80t~120tクラスだと判ります。クレーン車でもクレーン装置(固定式)でも同様ですが、クレーンは最大吊り過重で呼ばれる場合が多いと思いますが、この最大吊り過重とは、最小の旋回半径(ブーム(ジブ)を最短に縮め、起伏角を最大とした状態)でのものです。従って、ブームを伸ばした状態では、旋回半径が大きくなります。さらに、あるブーム長さで吊り上げ可能な過重でも、起伏角を小さくすることにより旋回半径は大きくなりますから、その際の吊り上げ許容加重を越える過加重の状態に陥りいり、ブームの曲損やクレーン本体の転倒という事故に陥ることがあるのです。
なお、この様な過加重状態の危険を防止を図るため、警報装置やインターロック装置が装備されてる様になっているのですが、それでも事故は多々起こっているのが現状なのです。
③複数台の連携不正に関わる要因
今回事故もそうですが、大きく重い対象物など、複数台以上のクレーン車が協調して吊り上げ作業を行う場合があります。これらの場合、その連携不良などから、吊り対象物のバランスを崩し、個別のクレーン車だけに加重が集中し、過加重状態からブーム曲損および転倒に至ることが想定されます。
今回事故の写真を観察すると、一方のクレーン車(左側)は大きくブームが曲損して転倒しており、もう一方のクレーン車(右側)はブームの変形は見られないまま転倒していることが判ります。
④突風など外乱要素に関わる要因
クレーン装置というのは、特にブームを伸ばして起伏角を大きく高く持ち上げた状態では、突風の影響を受けやすいものです。ですから、風の強い環境での、大型物件の作業は通常は行わないはずです。
追記
クレーンのブーム(ジブ)のことで補足しますが、5段とか6段の箱状ブームが伸縮するものを通称「箱ジブ」と呼びます。ホイールタイプの路上走行の可能な移動式クレーンでは、このタイプがほとんどでしょう。一方、クローラ式クレーンで多いのですが、トラス状の骨組みで作られた伸縮不能なジブを使用するもので、この様なものを「ラチスジブ」と呼んでいる様です。
ところで、ペーパー免許ですが移動式クレーン免許を持つ者として、僅かながら実感するのは、先に述べたブームの方式の違いによる剛性感の違いの大きさのことです。すなわち、ラチスジブに比べ多段箱ジブは、格段に剛性感が低く(上下にしなる)、そのことは吊り上げて停止した時の、吊り荷の前後振れとして現れますから留意が必要なものです。

そもそも、クレーンには、固定式クレーンと移動式クレーンがありますが、転倒事故を起こすのは移動式クレーン車のみです。固定式とは、建屋天井に取り付けられた天井クレーンとか港湾荷揚用ガントリークレーン、造船所や大きなビル建設で設置されるクレーンなどになりますが、何れも、クレーン装置が固定または反固定されており転倒事故は起こりえないものです。
これに対し、移動式クレーンでは、車輪かクローラ(キャタピラ:履帯)の違いはありますが、自由に作業必用場所へ移動することが可能という利点があります。しかし、クレーン本体が固定されている訳ではありませんので、ちょっとしたアンバランス状態に陥ると、転倒事故に結び付くのです。このアンバランス状態ですが、種々考えられると思いますが、想定される代表的なものとして以下に記してみます。
①設置場所の地盤に関わる要因
ホイール式(タイヤ付き)移動クレーンでは、登録ナンバーが装着され路上走行可能です。当然、各車輪にはサスペンションが装着されていますが、クレーン作業時は吊り過重の反力を受けますから、そのままでは安定した作業はできません。そのため、車体の四角にアウトリガーという支持棒を直接地面に接地させ、車輪が浮き上がる程度まで車体を持ち上げ、サスペンションを効かなくさせます。この際に、アウトリガーの接地部は、軟弱度合いに応じて十分な面積の当木や鋼板を敷く必用があります。この手当が不十分ですと、大きな反力を受けた該当アウトリガー接地部が地面に沈み込み、転倒事故に至る場合があるのです。
なお、クローラ式クレーンでは、アウトリガーは装備されませんが、左右クローラの間隔(クルマで云うトレッド)を広げる機構を持っています。さらに、広い接地面積を持つクローラであっても、軟弱地盤地では、鋼板を敷き詰めるなどの手当は行われているはずです。
②旋回半径に関わる要因
今回の福岡での事故の写真は判り難いのですが、よく観察してみると10輪くらいの多軸トラッククレーンであり、最大吊り過重80t~120tクラスだと判ります。クレーン車でもクレーン装置(固定式)でも同様ですが、クレーンは最大吊り過重で呼ばれる場合が多いと思いますが、この最大吊り過重とは、最小の旋回半径(ブーム(ジブ)を最短に縮め、起伏角を最大とした状態)でのものです。従って、ブームを伸ばした状態では、旋回半径が大きくなります。さらに、あるブーム長さで吊り上げ可能な過重でも、起伏角を小さくすることにより旋回半径は大きくなりますから、その際の吊り上げ許容加重を越える過加重の状態に陥りいり、ブームの曲損やクレーン本体の転倒という事故に陥ることがあるのです。
なお、この様な過加重状態の危険を防止を図るため、警報装置やインターロック装置が装備されてる様になっているのですが、それでも事故は多々起こっているのが現状なのです。
③複数台の連携不正に関わる要因
今回事故もそうですが、大きく重い対象物など、複数台以上のクレーン車が協調して吊り上げ作業を行う場合があります。これらの場合、その連携不良などから、吊り対象物のバランスを崩し、個別のクレーン車だけに加重が集中し、過加重状態からブーム曲損および転倒に至ることが想定されます。
今回事故の写真を観察すると、一方のクレーン車(左側)は大きくブームが曲損して転倒しており、もう一方のクレーン車(右側)はブームの変形は見られないまま転倒していることが判ります。
④突風など外乱要素に関わる要因
クレーン装置というのは、特にブームを伸ばして起伏角を大きく高く持ち上げた状態では、突風の影響を受けやすいものです。ですから、風の強い環境での、大型物件の作業は通常は行わないはずです。
追記
クレーンのブーム(ジブ)のことで補足しますが、5段とか6段の箱状ブームが伸縮するものを通称「箱ジブ」と呼びます。ホイールタイプの路上走行の可能な移動式クレーンでは、このタイプがほとんどでしょう。一方、クローラ式クレーンで多いのですが、トラス状の骨組みで作られた伸縮不能なジブを使用するもので、この様なものを「ラチスジブ」と呼んでいる様です。
ところで、ペーパー免許ですが移動式クレーン免許を持つ者として、僅かながら実感するのは、先に述べたブームの方式の違いによる剛性感の違いの大きさのことです。すなわち、ラチスジブに比べ多段箱ジブは、格段に剛性感が低く(上下にしなる)、そのことは吊り上げて停止した時の、吊り荷の前後振れとして現れますから留意が必要なものです。
こういった発言は撤回していただきたい。
今回の事故に関しては、報道でもされている通り、先に解体していた支柱が折れ、その支柱がクレーンに乗り掛かるようにして、倒れたものです。
クレーンがいても、いなくても支柱が倒れて、事故になっていたはずです。
たまたまクレーンに乗り掛かって、転倒したものです。
あくまでも、あのクレーン業者は被害者であって、一方的に悪者扱いされるのはどうかと思います。
クレーンだって作業ルールを守れば安全な乗り物です。
危険な乗り物に乗る運転手なんていませんよ。
当方の事故原因の理解不足もあった様です。下記のニュース報道によれば、観覧車の支柱解体に関わる支え吊り作業は、手前側3台のクレーン車で行われており、転倒した支柱により待機中の2台のクレーン車が薙ぎ倒されたとのことの様です。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/252375
依然完全な原因は事故調査を待つしかないことでしょうが、手前側3台のクレーン車による支えに問題があった可能性は残る様に想像されます。
なお、この様なクレーン作業による事故が、すべて危険だなどと云っているつもりはありません。クレーン作業は産業発展のためには、なくてはならぬものだと思いますし、多くの作業は、十分な安全確保の基に行われているものと信じています。