私の思いと技術的覚え書き

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下らないタワーバー

2020-06-09 | BMWミニ
 今日、Net画像で発見したタワーバーだが、あまりに下らない製品であることが直感的に判り、ちょっと触れてみたい。

 そもそもタワーバーとは、ストラットタワー部間の寸法変化を、それなりの応力を受けた際に、極力生じない様に補強するのがその意味であろう。つまり、部材に応力が働いた際に、寸法や形状変化(逃げ)が生じるが、応力が去ると元の寸法に戻る。この様な変形を弾性変形と呼ぶ。一方、さらに大きな応力を加えると変形はさらに大きくなるが、一定限度を超えると応力が去っても変形は元に戻らなくなる。これが塑性変形とか永久変形と呼ばれる訳だ。この弾性と塑性との境目を降伏点と呼ぶ。

 図の普通鋼と高張力鋼(ハイテン)の応力歪み線図を見て、比例限度に達するまでの直線的な傾きをヤング率(定数)と呼ぶ。つまり、物の剛性(応力対する寸法変化のし難さ)を上げるのは、①ヤング率の高い材質を使う、②部材の板厚を上げる。③部材の断面形状を工夫する、などのことが考えられる。

 最近のクルマは、重量を増さずに衝突時の変形量を抑えるなどの目的で高張力鋼板が多用されるが、これは剛性を上げるというより、より降伏点の高い引っ張り引っ張り強さの高いことを求めていることが判る。つまり、単に普通鋼を高張力鋼に置き換えただけだと、剛性は上がらないことが判る。

 さて、本題の下らないタワーバーだが、エンジンルーム内の配置の形状に沿って、ぐねぐねと曲がっている訳だ。一方、ストラットタワーバーとしては、この部材間の寸法の増減を抑制することを、機能の命題にしたパーツだ。同径の棒材だとして、その部材の縦方向の剛性が、直線的かぐねぐねと直線的でないかによって、大幅に剛性は変わることは理解できるだろう。理解できないという方は、0.5mm程の細い針金で、直線とぐねぐね非直線的なモデルを作って、指先で剛性感の差異を感じ取ってもらえば判るだろう。

 だいたい、棒状部材で、写真の様な形状の部材は、スタビライザーバーを想起させる。これは、捻れをバネとして、ロール量を抑制させる機能を持っているのであって、部材間の寸法変化を抑制しようというものではないから、あの様な形状が許されているのだ。

 ということで、結論は、正に下らないタワーバーであると玄人としは断じざるを獲ないのだ。こんな製品を5万円で売っているショップがある様だが、そもそもこういう製品を平気で売るショップとは、その他の製品も怪しく感じるのが普通の心理ではないだろうか。



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