私の思いと技術的覚え書き

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樹脂脆化の問題

2018-01-13 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 近年、クルマの軽量化要求(それでも過剰装備と共に重くなっているのだが)と共にコスパ追求からだろうが、やたら樹脂成形品(射出成形)が増加した。この樹脂については、クルマ以外の一般商品でも感じられることだが、経年すると脆くなると云う脆化の問題を内包している。特に気温の低い冬期は、ちょっと室内のトリム類を無理い外そうとすると、たわいもなく割損を生じてしまう。

 樹脂はその種別が極めて多く、例えばクルマに一番多く使用されるPP(ポリプロピレン)など、その成分の違いから亜種が極めて多い。また、カーボンやガラスなどの繊維材とコンポジット化させ、それなりの強化させたものもあるから複雑だ。

 クルマと樹脂との関係で、最も古いものは塗料であろう。塗料も樹脂皮膜を薄く形成したものであり、経年すると表面が白く細かい粉状になり、その艶感が失われてしまう。(チョーキングと呼ばれる)また、クリヤー塗料に多いが、細かいクラックが無数に入り、その内にクリヤー層が剥がれ落ち、やはり艶感が失われてしまうという現象は今でも多く見られる。

 ドイツといえば世界最大の化学工業会社であるBASFを要し優秀な樹脂原料(塗料も含め)を作っているハズだ。しかし、ドイツ製輸入車などで経年したものは、ラジエータ関係のタンクなど(ポリアミド?)が亀裂や破裂を起こし過ぎる。室内内装材のトリム関係でも、多分ABS系樹脂だと思うが、手から床面に1m程を落下させただけで、ガラスの様にパリンと割れる。驚く様な脆化を生じていると実感するのだ。

 話は発展するが、クルマでもF1等レーシングカーでは、かなり以前から、カーボンファイバーモノコック成型品が使用されて来た。最近はスーパーカーもだが、BMW i3の様な小型車にも、カーボンモノコックが使用され初めている。航空機でも、ボーイング787では、胴体外皮の円形をカーボンファイバー材で構成している。これらカーボン材は、長尺カーボン繊維をエポキシ樹脂に混浸させ半固形状態で出荷するプリプレグという素材を製品型に張り込み(必要強度に合わせて積層する)、ビニールパックして真空引きし、その状態でオートクレーブ(圧力釜)内で過熱・加圧して焼き上げ硬化させるものだ。しかし、カーボン材は炭素だから劣化はないだろうが、それを繋ぎ止める樹脂は劣化は避けられないのだろうと想像している。これが、ワンシーズン持てば良いレーシングかーならともかく、航空機では、その高価格を吸収し利益を出していくためには最低でも20年は使用するのだろう。当然、それなりの素材シミュレーションや実験を繰り返し、大丈夫だとしてのものだろうが、クルマの実例を眺め、その脆化の実態を知る者としては懸念を持つところだ。


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