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身障者の遺失利益を考える

2023-02-21 | 事故と事件
身障者の遺失利益を考える
 ここで、遺失利益とはあまり聞いたことのない方のために記すと、事故で死亡した場合、その方が平均余命まで得られたであろう収入のことを指す意味だ。
 さて、今日、Netで知った死亡事故の対人賠事案だが、事故は2018年2月1日、被害者は11才の聴覚障害者の通う通学での途上の事故だった様だ。事故は重機(大型特殊自動車)で、てんかんの持病を隠し免許更新手続きをしていた加害運転者が、同重機運転中に持病を発症し、通学途上の被害者を死亡させる事故で、加害運転者は刑事罰で懲役8年の判決となった様だ。これは、致し方ない問題として、被害者の対人賠償で、おそらく加害者の任意保険会社が委任した弁護士の主張だろうと思うが、被害者が身障者だから、健常者より60%少ない遺失利益だという主張をしているというのだった。

 ところが、遺族側の訴えとしては、この11才の聴覚障害被害者だが、話しもできるし、知的能力もなんら健常者と変わりなく、なんで聴覚障害者の遺失利益が6割になるのか納得できないというものだが、当然の感情と思えるところだ。そもそも、遺失利益は高齢者ほど少なくなるのは当然だが、特にこの被害者の様に幼い場合、平均余命は長く、どういう未来の展望となるか未知数な部分が多い。それを、おそらく何十年か前の、年齢別年収とかの統計値を元に理由付けして聴覚障害者の遺失利益は健常者の6割と決め付ける主張は違和感を感じるところだ。

 特に、今の時代、昔と違いIT革命後の時代であるし、聴覚障害というハンディが必ずしも負の要素ばかりでなく、その聴覚障害故に、他の機能が発揮されて、例えばプログラム開発で成功するなんて場合だってあるかもしれないし、小説家とか別の面で花開く未来がある場合もあり得るだろう。

 この記事内でも、ある大学教授は、人の価値の平等という面では違和感を感じるという様に述べているが、まったくその通りと思う。しかし、裁判所は、過去の判例からその様に思考するし、おそらく保険会社というより委任を受けた弁護士も、被害者が障害者施設の通学者というところで、まず先に過去判例から障害者は健常者より遺失利益が少ないという前提の思考を行っているのだろう。と云う様な、矛盾を感じさせる記事だ。

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重機に命を奪われた娘 4年たっても遺族を苦しめる「逸失利益」の考え どうして障害があると将来を否定されるのか
関西テレビ 2022年2月19日 土曜 午後6:00
https://www.fnn.jp/articles/-/316074


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