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身障者の遺失利益の公平感を思考する

2023-03-05 | 事故と事件
身障者の遺失利益の公平感を思考する
 近日、大阪であった難聴身障者(11才女子交通事故事故)について、難聴身障者は健常者の60%認定が通り相場と云う現実があるが、これについてはさまざまな異論も出ていたのだが、大阪地裁判決は85%認定という妥協値で判決を下した。

 この判決については、下記に示す通りツイッターで金子勝氏も古いモノサシでなく、新しいモノサシ(思考)が必用だとツイードしているが、まったく同感を思うところだ。

 交通死亡事故(11才難聴女性)の損害賠償請求訴訟だが、問題はその被害者が平均寿命まで生きるとした場合の遺失利益であるが、相当昔の統計と過去判例により健常者の60%を主張しているが、判事は85%認定したというものだ。時代も変化し、IT時代ともなり、身障者が必ずしもその身体的デメリットが傷害賃金の格差にならない事例も多くで始めている。未知のものを想定する時、そういう差別が妥当なのか、判事の思考の浅さというか人権意識の低さ、序列前例主義の強さを感じる判決だ。

 そもそも論として筆者は20数年損保の調査員として勤務したが、その業務は物損事故を前提としたものであったが、損保における、死亡事故の損害賠償事案となると自賠責の死亡上限金3千万で済むケースは少なく、上乗せ保険としての対人賠償保険の出番となる。この場合、対人賠償金額が1千万とかを超えると、本社稟議事案となり、個別損害調査センターで勝手に案件を決裁できなくなる。しかも、担当センター長(責任者)は自己保身からも、顧問弁護士に委任する対応になる場合が通常であろう。

 この損保の顧問弁護士だが、決め付けるつもりはないが、有能弁護士が多いかと問えば、必ずしもそういうことはないと云えると思っている。昨今の弁護士特約で、契約者が指定する弁護士も利用できるが、弁護料に一定の枠があるので、巷の有名弁護士を依頼することは難しいだろう。

 それと、弁護士の有能さは、その法知識を有効に生かした弁護活動にあるのだが、その根底には深い職業正義感が欠かせないと思っているところだが、この正義感が欠落した弁護士が目立つところだ。

 本件の賠償損保側の顧問弁護士も、古い判例とかおよそ相当以前の身障者と健常者の遺失利益統計資料などを持ち出し、この案件は訴額(相手が要求する額)とこちらが抗弁する額の乖離が大きいことを持って、成功報酬の大小にまず思考が働いた様に思える。つまり、判決報道から被害者側の遺失利益は健常者相当の4400万円だとして、これの60%減となる1760万減額出来れば、この20%程度350万円を収入できるともくろみ、その様に当該損保に訴訟での主張同意を取り付けていたのだろう。

 おそらく、本件訴訟中にも、担当判事は何度か、当事者双方に歩み寄っての示談を進めたに違いないと想像している。つまり、端的に記せば、60%と100%の昼間での80%での示談だ。この民事訴訟における示談を必ずしも否定するつもりまではないが、訴訟のことを審理とも呼ぶが、それは私には真理を追究してもらいたいものだと思うとことだ。つまり、裁判官とは、ことに積極的に取り組み、何処が正しいのかという思考を深めつつ、ことの決裁をして戴きたいと思うところだが、裁判官とは国から給与をもらい、その成績の優劣の基本は、処理件数にありと云われる、正に官僚であるからして、到底その様な真理の追究などは望むべくもないのだろう。その結果が、85%としての判決で、中間値から5%分が、この判事のささやかな良心というべきか、必ずしも金がない訳でない損保側代理人への懲罰的な思いも含まれているのではないかというのが思いだ。

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ツイッター 金子勝ツイード
https://twitter.com/masaru_kaneko/status/1631805655622500352

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聴覚障害の女児死亡事故 逸失利益は85%3700万円余判決
NHK 02月27日 15時47分
 5年前、大阪・生野区で聴覚に障害のある女の子が交通事故で亡くなり、遺族が賠償を求めた裁判で、27日、大阪地方裁判所は3700万円余りの損害賠償を運転手側に命じました。
女の子が将来得られるはずだった収入について、労働者全体の平均賃金をもとに算出するよう求めた遺族の訴えを認めず、その8割余りをもとに算出しました。
 5年前の平成30年、大阪・生野区でショベルカーが歩道に突っ込み、近くの聴覚支援学校に通う井出安優香さん(当時11歳)が亡くなり、遺族は運転手と勤務先の会社に対して損害賠償を求める裁判を起こしています。
安優香さんが将来得られるはずだった収入にあたる「逸失利益」について、被告の運転手側が労働者全体の平均賃金のおよそ6割にとどまる聴覚障害者の平均賃金で算出すべきだと主張した一方、遺族側は障害を前提にせず、労働者全体の平均賃金で算出するよう求めていました。
27日の判決で、大阪地方裁判所の武田瑞佳 裁判長は「年齢に応じた学力を身につけて将来さまざまな就労可能性があった」などとした一方で、「労働能力が制限されうる程度の障害があったこと自体は否定できない」としました。
そのうえで、安優香さんが将来得られるはずだった収入について、労働者全体の平均賃金の85%をもとに算出する判断を示しました。
そして運転手と会社にあわせておよそ3770万円の賠償の支払いを命じました。

【両親“差別認める判決”】
 判決のあと、井出安優香さんの両親は弁護士とともに会見を開き、差別を容認する内容だと批判しました。
 母親のさつ美さんは「娘は努力を重ねて頑張って11年間生きてきましたが、それは無駄だったのでしょうか。聴覚障害者というだけで社会に受け入れてもらえないのでしょうか」と涙ながらに話しました。
 父親の努さんは「結局、裁判所は差別を認めたんだなというがっかりした気持ちです。なぜ娘の努力を否定されなければいけないのか。悔しくてたまらないです」と話していました。
控訴するかどうかについて、会見に同席した弁護士は、今後、検討したいと述べました。

【専門家“偏見抜き判断を”】
 民法の専門家で障害者の損害賠償についても詳しい立命館大学の吉村良一名誉教授は、判決について「社会の変化や安優香さんの頑張りについて肯定的な評価はあるものの、障害があれば労働能力が低いという決めつけになっている」と指摘しました。
 今回の訴訟について、吉村名誉教授は、過去の判例に比べても、より積極的に健常者と変わらない賃金で算定すべきケースだったと言います。
 そのうえで「社会の障害者雇用の制度の変化やIT技術によるコミュニケーションツールの進歩を判決に反映させる流れがあった中で、もう一歩進めていいケースだったと思う。裁判所は、障害者が置かれている状況を理解し、偏見を抜きに社会がどうあるべきだという判断をすべきだ」と述べました。

【障害者の「逸失利益」の判例】
 障害者の「逸失利益」をめぐって、過去にはゼロと判断されることもありました。
 しかし、障害者を支える技術が進歩したことや、企業に義務づけられている障害者の雇用率が引き上げられたことなどから、裁判所の判断も変わりつつあります。
 4年前の東京地方裁判所の判決では、事故で死亡した重い知的障害のある少年について、特定の分野での優れた能力を評価し、障害のない少年と同じ水準の「逸失利益」が認められました。
 一方、おととしの広島高等裁判所の判決では、事故による障害で介護が必要になった全盲の女性について、労働者全体の平均賃金の8割が妥当だと判断され、健常者と同じ水準までは認められませんでした。
障害者の働く場が広がる中、時代にあった判断をすべきだという声が社会的に高まっています。


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