私の思いと技術的覚え書き

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カルネアデスの舟板

2021-06-15 | コラム
カルネアデスの舟板
 同名は古代ギリシアの哲学者たるカルネアデスが出したといわれる題目だ。(Plank of Carneades)

 船が難破し乗組員は海に投げ出された。一人の男が命からがら、壊れた船の板切れにすがりついた。するとそこへもう一人、同じ板につかまろうとする者が現れた。しかし、二人がつかまれば板そのものが沈んでしまうと考えた男は、後から来た者を突き飛ばして水死させた。その後、救助された男は殺人の罪で裁判にかけられたが、罪に問われなかった。という題目だ。

 この題目は、法科の講義でも使われていて、いわゆる緊急避難の法学の起源として説明されているという。

刑法第37条(緊急避難)
 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

 緊急避難の例として、現代でもしばしば引用される題目である。現代の日本の法律では、刑法第37条の「緊急避難」に該当すれば、この男は罪に問われないが、その行為によって守られた法益と侵害された法益のバランスによっては、過剰避難と捉えられる場合もある。

 また、各国が対向国に優るもしくは拮抗する防衛力たる武力の保持に地道を上げるのも、万が一の緊急避難の事態に陥っても、自ら生き残るという発露に他ならないのだろう。


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