1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 追記その8(横転車のシフトレバーがニュートラルが示すこと)
本事故8回目の記述となる。
下記報道を先ほど見たところだが、事故現車の調査では、シフトレバーがニュートラル状態だったことが記されている。このことを知り、これは2016年の軽井沢スキーツアーバスでも同一の状態だったことが記録されていたことを記憶している。
なお、軽井沢バスでも今回の富士山バス事故でも同じだが、事故の衝撃で入っていたギヤが抜けてニュートラルになったことが考えられるのだろうが私はその可能性は低いと判断している。
それと、一般の乗用車などのレッカーとか牽引作業を行うなり知見している者の中には、牽引するために当然シフトレバーをニュートラルにするだろうと思う方もいるだろうから補足しておきたい。今回の様な大型バスにしてもトラックにしてもしても、大重量車の後輪アクスルは専門用語となるがその軸受け方式に「全浮動」という方式が採用されている。この「全浮動式」は、リヤアクスルの垂直荷重(車両重量を支える荷重)はアクスルハウジングでベアリングを介して受け、エンジン駆動力および減速時の反力つまりリヤシャフトには捻り応力しか負荷されない方式を云う。
ちなみに乗用車とか小型トラックでは半浮動もしくは2/3浮動式と呼ばれるリヤアクスルの負荷方式が採用されていて、リヤアクスルシャフトには垂直荷重と捻り過重の両方をリヤアクスルシャフトで負担している。
なお、この様なリヤアクスルの構造のことを長々記して来たのかというと、この様な全浮動方式のレッカーを行うレッカー業社は、よほど短距離の牽引でない限り、リヤアクスルシャフトを左右現場で抜いて、それかレッカー牽引するのが通例となっていることを知っているからだ。
また、事故車の場合は、今回の場合もパーキングブレーキは、エアチャンバーを使用したスプリングブレーキが採用されているが、この方式は事故車のエアが抜けるとスプリングブレーキが作動して牽引ができない。そのため、この様な大型車を牽引するレッカー車にはエアコンプレッサーが搭載されており、このレッカー車のエアコンプレッサーから事故現車のエア配管へ高圧エアを接続してからレッカー作業を実施する。なお、車両側にも、そういう万一に備え車両の前後に外部エアを接続するためのエアキャプ(ねじ込みカバー)が用意されている。
ところで、前回の記事で、運転手とガイドの間で「ブレーキが効かない」などの叫びが聞こえると共に警報音が鳴っていたいうことがあったが、このエアブレーキはエア圧低下が死線を制するものであり定常圧800KPa程度だが低下して500
KPa程度以下になると警告音が鳴る装置が装着されている。事故前、この警報音が鳴ると云うことは、ブレーキが効かない状態が継続し、運転手は必死にブレーキを何十もしかすると100を越えるまでブレーキを連続して踏み直したと思える。また、サイドブレーキを掛けると、エアーは排出されてスプリングブレーキが作用するが、この場合もエアが抜けてエア圧は下がる。こういう多頻度ブレーキとか、バスの場合は乗降扉の開閉とかサスペンションにもエアを使用しているので、エアコンプレッサーはエンジンンで駆動する一機だが、エアタンクは少なくとも5個は装着されている。
ちなみに、筆者自身が実験したしたことがあるが、車両を駐車状態でエンジンを停止させておき、ブレーキペダルの踏み離しを繰り返す実験をして見ると、どんどんエア圧が低下して行く様が判る。エンジン停止だと数十回繰り返すと警報ブザーがなる500KPa程度までエア圧は低下する。
さて、シフトの話しに戻るが、MT仕様のバスに採用されているシフトコントロールは、俗にフェンガーシフトと呼ばれるものだ。これが中大型トラックだと、パワーシフトと呼ばれ、物理的にシフトコントロールロッドは、操作レバーとトランスミッション間を接続しており、この操作力を軽減するためにエア圧が利用される方式だ。
しかし、フィンガーシフトは、操作レバーとトランスミッション間には、機械的なリンクロッドは一切ない。シフトレバーは云うなれば単なるスイッチボックスであり、電気信号でトランスミッション上部にあるシフトコントロールアクチェーターを動かすものだ。しかも、単純にシフトレバーの電気スイッチとトランスミッションアクチュエーターのエア電磁弁が直結されている訳ではなく、間にシフトコントロールECUが入っており、主にシフトダウンの際は、その速度でそのシフトポジションだとエンジン回転が過回転となる場合は、シフトできないという処理が行われる様になっている。
これは、大型トラックも含め乗用車のMTでも時々生じる事例として、例えば2速で最高回転数で80km/hが限界のところを、120km/hで5速で走っているのを4速にシフトダウンしようとして間違って2速に入れたとすると、エンジン回転は2速の最高回転の1.5倍で回転することになり、過回転でコンロッド折損からシリンダーブロック破損とエンジンが壊滅的なダメージを生じる事態を防ぐためだ。
ここで想像できるのは、ブレーキが効かない、何とか速度を落とそうとシフトダウンを試みた運転手の姿が垣間見えると云うことだ。しかし、最終体に事故カーブを何キロで進入したかは、これから運行記録計で記録されているだろうが、おそらく5、60km/h出ていたろうと思う。この速度域だと、6MTを持つ大型バスのシフト毎の速度レンジとしては4速以上
で、それ以下にはシフトダウンできないだろう。
しかし、従前までの本ブログでも記していることであるが、この道で幾らちょっと直線部分があったからといえ、4速まで入れる速度域にまで速度を上げてしまったのが大問題なのだ。こういう長い左右に曲がる下り坂で走行ペースを上げたとき、それは多頻度ブレーキとなり取り返し付かない今回の様な事態となる。
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観光バス横転事故 車両のギアはニュートラル…エンジンブレーキに影響か 運転手「ブレーキ利かなかった」
テレビ静岡 10/21(金) 12:00配信
静岡県小山町で起きた観光バスの事故で、ギアがニュートラルに入っており、エンジンブレーキが利かなかった可能性があることが分かりました。
1人が死亡 26人が重軽傷を負った横転事故を受け、警察はメーカーと車両を検証しました。その際、ギアはニュートラルに入っていたということです。
このバスはエンジンの故障を防ぐため一定の速度を超えている時は一段ずつしか「シフトダウン」できず、二段三段と飛ばしてギアを落とすことはできない機能が備わっています。
レバーを一気に低速の位置に動かしても、実際にはギアは変わらず、ニュートラルに入って警告灯と警告音で知らせる仕組みになっているということです。低速のギアに入らずニュートラルだった場合、エンジンブレーキは利きません。
またフットブレーキは踏みすぎによる「フェード現象」が起き、利かなかった可能性が高いとみられ、引き続き分析が進められています。
警察は来週(24日~)にも運転手を事故現場に立ち会わせ、どの地点でどのような運転操作を行っていたか詳しく調べる方針です。テレビ静岡
本事故8回目の記述となる。
下記報道を先ほど見たところだが、事故現車の調査では、シフトレバーがニュートラル状態だったことが記されている。このことを知り、これは2016年の軽井沢スキーツアーバスでも同一の状態だったことが記録されていたことを記憶している。
なお、軽井沢バスでも今回の富士山バス事故でも同じだが、事故の衝撃で入っていたギヤが抜けてニュートラルになったことが考えられるのだろうが私はその可能性は低いと判断している。
それと、一般の乗用車などのレッカーとか牽引作業を行うなり知見している者の中には、牽引するために当然シフトレバーをニュートラルにするだろうと思う方もいるだろうから補足しておきたい。今回の様な大型バスにしてもトラックにしてもしても、大重量車の後輪アクスルは専門用語となるがその軸受け方式に「全浮動」という方式が採用されている。この「全浮動式」は、リヤアクスルの垂直荷重(車両重量を支える荷重)はアクスルハウジングでベアリングを介して受け、エンジン駆動力および減速時の反力つまりリヤシャフトには捻り応力しか負荷されない方式を云う。
ちなみに乗用車とか小型トラックでは半浮動もしくは2/3浮動式と呼ばれるリヤアクスルの負荷方式が採用されていて、リヤアクスルシャフトには垂直荷重と捻り過重の両方をリヤアクスルシャフトで負担している。
なお、この様なリヤアクスルの構造のことを長々記して来たのかというと、この様な全浮動方式のレッカーを行うレッカー業社は、よほど短距離の牽引でない限り、リヤアクスルシャフトを左右現場で抜いて、それかレッカー牽引するのが通例となっていることを知っているからだ。
また、事故車の場合は、今回の場合もパーキングブレーキは、エアチャンバーを使用したスプリングブレーキが採用されているが、この方式は事故車のエアが抜けるとスプリングブレーキが作動して牽引ができない。そのため、この様な大型車を牽引するレッカー車にはエアコンプレッサーが搭載されており、このレッカー車のエアコンプレッサーから事故現車のエア配管へ高圧エアを接続してからレッカー作業を実施する。なお、車両側にも、そういう万一に備え車両の前後に外部エアを接続するためのエアキャプ(ねじ込みカバー)が用意されている。
ところで、前回の記事で、運転手とガイドの間で「ブレーキが効かない」などの叫びが聞こえると共に警報音が鳴っていたいうことがあったが、このエアブレーキはエア圧低下が死線を制するものであり定常圧800KPa程度だが低下して500
KPa程度以下になると警告音が鳴る装置が装着されている。事故前、この警報音が鳴ると云うことは、ブレーキが効かない状態が継続し、運転手は必死にブレーキを何十もしかすると100を越えるまでブレーキを連続して踏み直したと思える。また、サイドブレーキを掛けると、エアーは排出されてスプリングブレーキが作用するが、この場合もエアが抜けてエア圧は下がる。こういう多頻度ブレーキとか、バスの場合は乗降扉の開閉とかサスペンションにもエアを使用しているので、エアコンプレッサーはエンジンンで駆動する一機だが、エアタンクは少なくとも5個は装着されている。
ちなみに、筆者自身が実験したしたことがあるが、車両を駐車状態でエンジンを停止させておき、ブレーキペダルの踏み離しを繰り返す実験をして見ると、どんどんエア圧が低下して行く様が判る。エンジン停止だと数十回繰り返すと警報ブザーがなる500KPa程度までエア圧は低下する。
さて、シフトの話しに戻るが、MT仕様のバスに採用されているシフトコントロールは、俗にフェンガーシフトと呼ばれるものだ。これが中大型トラックだと、パワーシフトと呼ばれ、物理的にシフトコントロールロッドは、操作レバーとトランスミッション間を接続しており、この操作力を軽減するためにエア圧が利用される方式だ。
しかし、フィンガーシフトは、操作レバーとトランスミッション間には、機械的なリンクロッドは一切ない。シフトレバーは云うなれば単なるスイッチボックスであり、電気信号でトランスミッション上部にあるシフトコントロールアクチェーターを動かすものだ。しかも、単純にシフトレバーの電気スイッチとトランスミッションアクチュエーターのエア電磁弁が直結されている訳ではなく、間にシフトコントロールECUが入っており、主にシフトダウンの際は、その速度でそのシフトポジションだとエンジン回転が過回転となる場合は、シフトできないという処理が行われる様になっている。
これは、大型トラックも含め乗用車のMTでも時々生じる事例として、例えば2速で最高回転数で80km/hが限界のところを、120km/hで5速で走っているのを4速にシフトダウンしようとして間違って2速に入れたとすると、エンジン回転は2速の最高回転の1.5倍で回転することになり、過回転でコンロッド折損からシリンダーブロック破損とエンジンが壊滅的なダメージを生じる事態を防ぐためだ。
ここで想像できるのは、ブレーキが効かない、何とか速度を落とそうとシフトダウンを試みた運転手の姿が垣間見えると云うことだ。しかし、最終体に事故カーブを何キロで進入したかは、これから運行記録計で記録されているだろうが、おそらく5、60km/h出ていたろうと思う。この速度域だと、6MTを持つ大型バスのシフト毎の速度レンジとしては4速以上
で、それ以下にはシフトダウンできないだろう。
しかし、従前までの本ブログでも記していることであるが、この道で幾らちょっと直線部分があったからといえ、4速まで入れる速度域にまで速度を上げてしまったのが大問題なのだ。こういう長い左右に曲がる下り坂で走行ペースを上げたとき、それは多頻度ブレーキとなり取り返し付かない今回の様な事態となる。
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観光バス横転事故 車両のギアはニュートラル…エンジンブレーキに影響か 運転手「ブレーキ利かなかった」
テレビ静岡 10/21(金) 12:00配信
静岡県小山町で起きた観光バスの事故で、ギアがニュートラルに入っており、エンジンブレーキが利かなかった可能性があることが分かりました。
1人が死亡 26人が重軽傷を負った横転事故を受け、警察はメーカーと車両を検証しました。その際、ギアはニュートラルに入っていたということです。
このバスはエンジンの故障を防ぐため一定の速度を超えている時は一段ずつしか「シフトダウン」できず、二段三段と飛ばしてギアを落とすことはできない機能が備わっています。
レバーを一気に低速の位置に動かしても、実際にはギアは変わらず、ニュートラルに入って警告灯と警告音で知らせる仕組みになっているということです。低速のギアに入らずニュートラルだった場合、エンジンブレーキは利きません。
またフットブレーキは踏みすぎによる「フェード現象」が起き、利かなかった可能性が高いとみられ、引き続き分析が進められています。
警察は来週(24日~)にも運転手を事故現場に立ち会わせ、どの地点でどのような運転操作を行っていたか詳しく調べる方針です。テレビ静岡