私の思いと技術的覚え書き

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エーミング調整のこと(現状システムは未だ初期段階のもの)

2019-12-05 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 自整業とか板金業さんと話していて、納入部品商とか工具商から聞いたりそれらが開催する研修会で扱う、PCSや半自動運転絡みのミリ波レーダーとかフロントウインド上部に付くカメラの調整のこと(以下エーミング調整と記す)に、大げさに記すと戦々恐々という思いを持っていることが伺える。

 写真は主にトヨタ関連の本体およびサプライヤたるデンソーのWEBサイトから引いたものだが、ミリ波レーダー波プリウス30の事例である。ミリ波レーダーの本体は3点のアジャストスクリューでマウントされており、全体の付き出し量と左右および上下のエーミングが調整できる仕様となっている。

 ここからは愚人想像を交えた記述であるので、間違いもあろうかと思う。それなりの機器の開発者などで詳しい方がいれば、間違いは指摘してもらいたいと思う。

 まず、結論から云えば、現在装着のミリ波レーダー波、その登場初期より小型化され、高分解能になって来たと云えども、未だ発展途上の中途半端な製品だと感じることがある。現状のミリ波レーダーは、レーダー発信部からおよそ30度ほどの円錐状に何ら走査されることなく放射される電波の反射波を捉える程度のものだろう。ただし、同一周波数でも自身の発射電波と他の発射電波を識別できないと、つまり例えばPCS車同士がすれ違う場合など、誤判定を起こす訳だからして、自身発信電波には固有の識別符号が重畳搬送されており、自機識別電波のみ反射波として認識するのだろう。なお、もっと短距離の測距に使われる超音波の発信および受信センサーと同様に、同一電波発信部と受信部は同一で、時分割で発信、および一定時間の受信を行い、その遅延時間と、移動速度を合わせて、検出目標までの距離を算出するアルゴリズムが組まれているのだろう。なお、このアルゴリズムには、ステアリング切れ角およびヨーレートおよびピッチレートなどの各種加速度センサーの値も同時に参照しており、あくまでも自社の進行想定方向前方に障害物があるかどうかというアルゴリズム判定が行われているのだろう。出始めの頃あったという、複数レーンのカーブで、隣の車線の他社と接近しただけで、危険接近として判じて急制動を起こしたなどという、お粗末なアルゴリズムはある程度改善されていると想像する。

 ところで、現代のレーダーシステムとして最も高度なものは、戦闘機とかイージス艦に装備されているヒューズドアレイという方式なのだろう。レーダーアンテナを機械的な首振り走査することなしに、電子的にある程度の角度(イージス艦で4面で360度をカバーしているので1面で120度程度があるのだろう)を電子的に超高速に走査(スキャニング)できるものだ。現状では、その素子のコスト上などからクルマ用に直ちに使えないだろうが、将来的には技術革新などで、低コストで類似機能を持たせ、しかも特定省電力機器として、何ら電波法に触れぬ機器も登場するのではないだろうか。この様になって来て、前方の広い面範囲をスキャニングしつつ、物体を動向を連続認識し、アルゴリズムとしても、究極の衝突を認識するだけでなく、要注意(アラート)という段階があり、速度を減じるという段階までが持てるということが、特に自動運転車では必須の機能の様に素人的には思うのだが・・・。

 もう一つ、先の完全ヒューズドアレイに至る以前でも、固定素子としての電波発信および受信素子であって、ある程度の広角範囲を有し電子的に指向性を制御できる時代になれば、現在エーミングなりで、イニシャル位置をセットする訳だが、いわゆるオートキャリブレーーション機能を持つのが普通のことになると予想される。これは、通常の走行時に、XYZ三軸の加速度センサーの値を適度に平均値に慣らし(ローパスフィルタリング)し、これに左右路肩からの反射波を検出するとか、前方車からの反射波の状態などから、オートキャリブレーション機能を持たせることは十分可能であろう。このことは実は、既に一部メーカーでは実現しているのだ。

 ということで、あくまで愚人の想像だが、エーミング調整という機能は、あくまで一時期の経過過程車における処置であって、将来的には陳腐化して人為的に行う必用もない機能となってしまうのだろう。

追記
 電波法ではミリ波レーダー用特定小電力無線局について、管轄当局に対し電波の利用状況調査として、メーカーから免許不要局の無線機器の出荷台数の報告を求めている。そのH26年~29年の出荷台数の推移だ。確実に著しく増加している。
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年度 周波数 出荷台数
平成26年度 60-61GHz  13
      76-81GHz  310,193

平成27年度 60-61GH  142
76-77GHz 1,008,506
77-81GHz 59

平成28年度 76-77GHz 0
76-77GHz 2,198,628
77-81GHz 121

平成29年度 76-77GHz 0
76-77GHz 2,543,891
77-81GHz 99
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