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メカニカルオクタン価とは?

2017-11-27 | 車両修理関連
 最近は、表題の表現が使われることは少ない。そもそもオクタン価とは、燃料たるガソリンのアンチノック性(ノッキングのし難さ)を示す値であり、日本だとレギュラーで90程度(EU諸国では95程度らしい、このことが欧州車はスポーツ車に限らずハイオク指定の理由となっている)、ハイオクだと100程度らしい。しかし、同じレギュラーガス指定の自然吸気エンジンでも、その圧縮比は9前後からマツダの最新エンジンでは14近くまでと差異があるのだ。圧縮比はBMEP(正味平均有効圧力)を高め、熱効率を向上させるためには高くしたい。しかし、そこにはノッキングなどの不正燃焼とのせめぎ合いが生じるから、なかなか高めることはできない。

 表題に上げたメカニカルオクタン価とは、同一のガソリンでも、エンジン型式によってノッキングの生じ易さの違いを表すものだ。マツダの最新ガソリンエンジンで14の圧縮を達成し得たのは、直接噴射は当然として燃焼室形状やピストン頭部形状、バルブ径や配置と吸排バルブ挟み角、各ポート径や形状の最適化、当然制御系としての多段噴射を含む燃料噴射と点火時期制御の徹底的な追求により為し得たのだろう。このマツダのエンジンは、今までにない最高のメカニカルオクタン価を持つと云えるが、従来エンジンでも低い圧縮比でもノッキングが生じ易いとか、その逆のことだがノッキングが生じるがために圧縮比を低くせざるを得ないということがあり、同じガソリンを使用しながら個別型式エンジンによってノッキングの生じ易さの違いをメカニカルオクタン価が高いとか低いと表現していたのだ。

 例えば、古いエンジンの話となるがL4・1200ccエンジンでトヨタの3Kと日産のA12というエンジンがあった。どちらもOHV形式(何れもカム軸をシリンダー中間まで持ち上げたハイカム型)の弁配置でバスタブ型燃焼室を持つが、A12の方が明らかにメカニカルオクタン価が高いエンジンであったことを、その力感や燃費などから感じ取れたものだった。しかし、これらエンジンの時代は、吸排気ポートがシリンダーヘッドの左右どちらか一方に装着されるリターンフローと呼ばれる方式で、吸排が180°逆転して流れることや、吸気マニホールドやキャブレターが排気マニホールドで過熱され易いとか、マニホールド形状に制限を受け易いとか問題があった。

 次の時代、時代は吸排気ポートが、ヘッドの左右それぞれに分かれているクロスフローと呼ばれる形式が主流となり、吸排気の流れは、より直線的でスムーズ流動が可能となった。さらに、吸排気弁をそれぞれ傾けるバルブ挟み角を付ける設計により、より大径のバルブにでき、ヘッド側の燃焼室形状を最小面積にできる半球型(もしくは多球型)燃焼室というのが主流となった。この半球型はSV比と呼ばれる表面積と容積の比が、なるべく小さいことが熱効率向上となると云われたものだった。しかし、半球型燃焼室が、それ以前のバスタブ型より圧縮比が高いという訳ではなく、逆にメカニカルオクタン価としては低い場合が多々あったことを思いだす。この理由は、バスタブ型でTDC付近で生みだせたスキッシュエリアが、半球型では生み出せなくなったことにある様だ。

 さらに新しい時代(ほぼ現代)、1シリンダー4バルブは常識的な設計となった。これにより吸排気ポートの面積は拡大され、著しく最大トルクも出力も高まった。なお、この4バルブであるが、極一部のエンジンで半球型に近いものも存在するが、ほとんどがペントルーフ型と呼ばれる屋根型の燃焼室となり吸排バルブを囲む方形とシリンダーボアの4隅には先のスキッシュエリアが形成される様に設計されている。これによりメカニカルオクタン価も高い、つまり圧縮比も吸排気効率も高いエンジンとなった。

 次世代エンジンであるが、既にマツダが自然吸気で14という高圧縮ガソリンエンジンを実用化している。この後に続くのは、たぶんマツダがHCCIエンジンでさらに高圧縮を目指すのか、可変圧縮を発表している日産なのか、はたまた水噴射を発表しているBMWなのか、加給もしくは自然吸気にしても、なるべく高い圧縮比で、熱効率を追求していくことは間違いない。


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