私の思いと技術的覚え書き

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F6Aターボ・エンジンブローダウン事例のこと

2017-11-18 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 今日のこと、知り合いの板金工場からの要請で、F6Aエンジン(スズキ車でK6以前のコグベルトカム駆動の主力エンジン)でクランクロックしているのを、原因追及のため分解を行った。これは、従前から相談を受け、板金工場では別途の中古エンジンを手配しており、「何もかも載せ替えれば良いだろう」みたいな話を聞いていたものだった。現車はスズキの軽トラ(AT・4WD仕様)で、走行は10万超だが外装は程度が良い。そして、既に中古エンジンを入手済みだが、こちらはFFのAT仕様だ。同じエンジン型式F6Aでも、トラックは大きくスラント(傾斜)した縦置きにエンジンを搭載している。FF用は比較的スラントは僅かで、見た目にもオイルパン形状だとか、補記類の配置が大幅に異なる。マニホールド関係は全然互換性がないが、ヘッドは互換性がありそうかなと見れば、どうやらFFの方が年式が古い様で、カムシャフト後端にデスビーが付いている。軽トラは、デズビーではなくカムポジションセンサーが付いており、カムシャフト後端部のシグナルピックアップ形状がまったく異なる。「少なくともカムシャフトは入れ替えないとダメだね」などとつぶやきつつ、ブロックの互換性を見ていくと、ブロックの後部左にオイルリターン用の15φ程度の差し込み口があるがFF用にはない。更にオイルレベルゲージが軽トラでは、オイルパンに直付けされているが、FF用はブロック前部のフロントカバーに挿入口がある等に気付いた。

 さて、今日の分解作業だが、軽トラの方のヘッド降ろしから始めた。先日の下見にて、クランクは完全ロックではないが、2/3周ほどの範囲でしか廻らない。どうやら、No1シリンダーが上死点近くでロックし、その他の範囲は廻るということの様だ。従って、できうることならブロック再使用の余地があればと、ヘッドを外して点検しようということにしたのだ。この結果は、写真の如くNo1のエキゾーストバルブ傘部が折損し、燃焼室内で暴れまくり、ヘッドは完全にダメ、ピストン穴あきという重傷だ。

 ここまでの課程を行ったが、「あなたなら次は何処を見ますか?」と問われたら、どう考えるだろう。当方は、これはターボのタービンインペラ(羽)がどうなのかと思考を進めた。つまり、損壊し細切れになった、ヘッド、ピストン、バルブ傘の破片が高速回転しているタービンインペラに直撃すれば、材質から脆性破壊を簡単に起こすだろうということだ。ターボのエルボを外し、小径なので指2本が入らず、プライヤーで摘まんで廻すが、当初ゴリ感があることが感じられたが、その内になくなった。これでは、タービンインペラの全体が見えないので、ハウジングを外しタービン全体を詳細に観察する。すると、タービン羽の外周付近に何らかのカス状異物が全周に付着しているのを確認する。更に、ハウジング内面を見ると、装着時に最下部となる付近に大量に何らかの融着物が確認されたのだ。これら融着した付着物は、ほぼアルミ合金(ピストンやヘッドだろう)と判じられる。通常、ここまでのダメージがあれば、リビルトなり交換が妥当となるだろう。ところが諦め悪いのを自認する中、板金屋さんに酸素アセチレンバーナーで過熱しつつ、細ドライバー等で異物をこそげ取るという作業を進めてもらった。この結果、目視では異物の付着はなくなり、タービンインペラの欠損もなく回転もスムーズであり、ハウジングをセットしても回転に異状はないという状態を確認し、これら部品を元通り組み付け直した。

 旧エンジンの作業は打ち切り、載せ替える新エンジン(実際には古い様だが)のカムシャフト入れ替え作業に取り掛かる。まずは、タイミングベルトカバーを外し、バルブタイミングの合わせマーク位置(クランクとカム)を確認する。そして、カムシャフトを後方へ抜き出すために、バルブクリアランス・アジャストスクリューを目一杯弛め引き出そうとするが、カム軸とロッカーアームのカム摺動面が当たってしまい抜き出せないのだ。旧エンジンのカムシャフトは、既に板金屋さんが外してあったが、驚いたことにロッカーアームをロータリーカッターで切り取ってあった。(やっぱ整備屋じゃないなぁと妙に感心する。)たぶん正規は、2本のロッカーシャフトを抜き取り、つまりロッカーアームを外してカムシャフトを抜くのだろう。ところがロッカーシャフトを固定している十字ネジが硬くて緩まない。ということで、整備屋としての知恵として以下の様にしてカムシャフトを引き抜き、更に交換用シャフトの挿入を行った。まず、全(6本)ロッカーアームアジャストスクリューを軸径程度ねじ込み、その突き出しボルトに8~12mm程度の小径メガネレンチ各6本を引っかけ、これをレバーとしてバルブを押し込んだ。つまり、ロッカーアームのカム摺動面は目一杯上に上がる。その状態で、スムーズにカムシャフトの抜き出しと挿入が完了した。

 今日の作業はここまで、正味作業時間は3時間程だろうか。ブロックのオイルリターン穴の加工やレベルゲージのめくら栓などは板金屋さんがやると云うことなのだが、未だ気づかぬ非互換部分が出て来そうに思えるのだが・・・。次回作業は未定ながら、何か参考になりそうなトピックがあれば記してみたい。




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