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修理する権利・ユーザーとメーカーの攻防

2022-02-09 | コラム
修理する権利・ユーザーとメーカーの攻防
 この修理する権利(もっと進めれば構造機能を知る権利と解しても良いだろう)だが、筆者も様々なモノがIT化が進められる中で、セキュリティ対策だとか知的財産権という大義名分の中で巨大企業側に優位に振れすぎる危険を感じつつあるのだ。

 以下引用した記事を転載するが、翻訳でしかもまとまりがなく、話題があっちへこっちへと振れすぎているが、内容として多分に近い将来の問題を含んでいると思える。そこで、筆者がこの中と連想する課題として、以下に列記して見たい。

①米国では所有者もしくは使用者もしくは代理人(法的なと云うよりクルマで云えば修理業者)は、修理する権利を持つことが一定理解されつつある。

②上記修理する権利をまっとうするに際しては、製造業社は修理情報とか修理パーツを供給する義務が生じる。

③これらの修理する権利を擁護する基本法律としては、自由民主とか独占禁止という法が前提になるだろうが、製造業の知的財産権とのせめぎ合いという側面が出てくる。

④下記の記事でもテレマティックという言葉で記されているが、自動車においてもITS(Intelligent Transport Systems)とかOTA(オーバーザエア)という、車両とメーカーが絶えず電波でやりとりしつつ、一般的には地図情報の更新とか緊急通報というユーザー側に都合の良い機能しか説明されていないが、製造業に取ってはユーザーの利用状況をあらゆる監視下に置き記録できるシステムであるとも云える。これは、自由民主とか個人情報の保護とは相反する要素を生み出す可能性がある。

⑤文中に「最近の新型車は、いわば車輪のついたコンピューターのようなものだ。それこそ1時間あたり25ギガバイトもの走行データを収集するとも言われている。」とある。必ずしもそこまで膨大なデータでなくとも、所有者、使用者などは、何が送信されているのか知らされていないと云うことを意識し、過剰な項目はブライバシー侵害として問題視する必用があるだろう。

⑥最近、リースとかサブスクという、利用権だけを売る商法が拡大しつつあるが、こういう中では当然において自からもしくは一般の修理工場での修理する権利は失われる可能性が高まるとみるべきだろう。

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「修理する権利」のおかげでクルマの最新機能を使えない? 米国で不可解な問題が起きる理由
WIRED.jp 2/6(日) 12:12配信
 スバルのSUVを2020年に購入したチエ・フェレッリは、その安心感のある乗り心地をとても気に入っていた。そこで夫のマークが新しいクルマを購入する時期が来た昨年の夏、夫妻はマサチューセッツ州南東部の自宅近くにあるスバルのディーラーを再び訪れた。

米国で「修理する権利」を認める法律が可決、それでもメーカー側の反発は止まらない
 ところが、そこには夫妻をいらだたせるような落とし穴があった。マークが購入しようとしたスバルのセダンでは、ネット接続いて利用する同社のテレマティクスシステムと、関連するスマートフォン用のアプリを利用できなかったのである。

 つまり、ニューイングランド地方の凍てつくような冬に、リモート操作でエンジンを始動することはできない。緊急時のアシスト機能も、タイヤの空気圧が低くなったりオイル交換が必要になったりしたときに自動でメッセージを表示する機能も利用できなかった。

 最悪だったのは、もしフェレッリ夫妻が自宅からわずか1マイル(約1.6km)ほど離れたロードアイランド州に住んでいれば、それらの機能が使えたことである。結果的にフェレッリ夫妻はスバルのセダンを購入したが、もしスバルのディーラーを訪れる前にこの問題を知っていたら、「おそらくトヨタ車を選んでいたでしょうね」と、マークは言う。

最新の機能を「使えない」
 マサチューセッツ州では2012年に自動車修理権法が制定され、メーカーに修理情報の提供が義務づけられた。さらに2020年には、クルマの所有者と一般の修理工場がテレマティクスシステムのデータにアクセスできるよう改正法案が提出され、有権者の圧倒的多数で承認されたのである。

 この結果、スバルはマサチューセッツ州で登録された新車を対象に、テレマティクスシステムとその関連機能を2021年に無効化した。

 法廷でも支持された「修理する権利」の法案は、自動車メーカーが消費者と独立系の修理業者に対し、クルマの内部システムに関するデータへのアクセスを拡大するよう求めたものだった。この法律は前提として「オープンなデータプラットフォーム」の構築を想定していたが、それがまだ構築されていないことから、自動車メーカーはこの動きを阻止すべく訴訟を起こしている。

 こうしたなかマサチューセッツ州で最初にスバルが、続いて韓国のキア(起亜)が最新の自動車のテレマティクスシステムを無効にした。それがフェレッリ夫妻をはじめとするドライヴァーたちをいらだたせる事態に発展したわけである。

 スバルの広報担当者は、「現時点では法律を遵守することは不可能です。今回の措置は法律を遵守するためではなく、むしろ法律違反を避けるための措置なのです」と説明している。キアはコメントの要請に応じていない。

自動車にも広がる「修理する権利」
 消費者が自分のクルマを修理したり修理業者を選んだりする権利、すなわち「修理する権利」を巡り、マサチューセッツ州と自動車メーカーの間では長年にわたって意見の相違が続いていた。今回の争いも、こうした対立が顕在化した最新の事例だ。

 マサチューセッツ州では2012年にも同様の法案が有権者投票で可決されている。この結果、すべての車両に独自の規格ではない標準規格の車載式故障診断装置(OBD)のポートを搭載するよう、自動車メーカーに初めて義務づけている。

 それから1年後、マサチューセッツ州の構想に基づく全国規模での合意が交わされた。自動車メーカーはクルマの所有者や修理業者に対し、自社のディーラーに提供しているものと同じ種類のツールやソフトウェア、情報を提供すると保証したのである。

 その結果、いまでは誰でもクルマのコネクターに接続できるツールを購入し、診断コードを入手すれば故障の原因を把握できるようになった。独立系の修理業者は、ツールや修理方法を説明するマニュアルなどを購入できる。

ハイテク化する自動車
 こうした経緯もあって「修理する権利」を支持する人々は、修理する権利が保証されている稀有な事例として長年にわたって自動車業界を挙げてきた。

 実際に独立系の修理業者は競争力を維持している。独立系修理業者を代表する米国の業界団体によると、自動車修理の70%は独立系修理工場でおこなわれている。自宅の裏庭で自らクルマを修理する人も少なくない。

 ところが最近の新型車は、いわば車輪のついたコンピューターのようなものだ。それこそ1時間あたり25ギガバイトもの走行データを収集するとも言われている。これはHD画質の映画5本分に相当するデータ量だ。

 自動車メーカーによると、収集される情報の多くは有用ではなく破棄されるという。ただし、一部の情報(車両の位置情報や特定の部品の動作状況)は匿名化され、自動車メーカーに送信される。車両識別番号などの個人を識別できる機密性の高い情報は、厳格なプライヴァシーポリシーに従って処理されているという。

 最近は、そうしたデータの多くは無線で送信されるようになっている。このため独立系修理業者や「修理する権利」の支持者たちは、自動車メーカーが診断用ポート経由では重要な修理情報を提供しなくなるのではないかと恐れている。そうなれば独立系修理業者は立ち行かなくなり、顧客の選択肢はディーラーに限られてしまう。

 マサチューセッツ州シチュエートで自動車とタイヤの修理店を経営するグレン・ワイルダーは、議員たちに対して2020年に懸念を表明している。独立系の修理業者がハイテク化したクルマの中心部にアクセスしようとした場合、自動車メーカーが「必要な情報をブロックする」可能性があることを恐れているというのだ。

 この争いの潜在的な影響は自動車産業に限られない。客が製品を購入したあとにデータをメーカーに送信するガジェットも多いからだ。今回の議論は、こうしたあらゆるガジェットに全米規模で影響を及ぼす可能性がある。

 「わたしはそれを『修理する権利 2.0』と考えています」と、ガジェットの修理用のツールと修理ガイドを提供するウェブサイト「iFixit」の創業者で、長年「修理する権利」を提唱してきたカイル・ウィーンズは語る。

 「自動車業界は、ほかの業界よりもはるかに進んでいます」と、ウィーンズは言う。「(独立系業者は)すでに情報や部品を入手できますし、いまはデータの送受信について議論されるようになっています。だからといって、この戦いが以前ほど重要ではないということではありません」

非現実的なオープンプラットフォーム
 自動車メーカー側は「修理する権利」の主張に対し、機械に関するデータを誰にでも公開することは危険であり、連邦法に違反すると主張している。

 マサチューセッツ州の有権者が「修理する権利」の修正法案を住民投票で承認した直後の2020年11月、大手自動車メーカーを代表する業界団体は同州を連邦裁判所に提訴した。この業界団体「自動車イノヴェイション協会(AAI)」は、自動車のテレマティクスシステムにアクセスできるユーザーは州でなく連邦政府が管理すべきという。さらにAAIは、この法律で義務づけられているオープンデータプラットフォームの構築を2022年という期限までに急ぐことが、特に無責任かつ危険であるとも主張している。

 これに対して、マサチューセッツ州の1,600以上の修理工場を代表するマサチューセッツ州修理権委員会は、自動車メーカーには準備する時間が十分にあったと主張している。バイデン政権は21年の夏、消費者が自らのデータや修理ツールを入手しやすくするルールづくりを米連邦取引委員会(FTC)に指示した。支持者たちは、このルールが自動車にも適用されることを望んでいる。

 ミシガン州立大学工学部助教授でコネクテッドカーのセキュリティを研究しているジョシュ・シーゲルは、法律が想定しているシステムは、自動車メーカーが主張する通り技術的に実現不可能かもしれないと指摘する。シーゲルによると、この法案は「よかれと思って」つくられたかもしれないが、「自動車のテレマティクスシステムの複雑さを十分に理解」していたわけではないと言う。

 自動車のテレマティクスシステムは、故障した箇所やその原因に関するデータだけでなく、緊急ブレーキを可能にする運転支援システムや、ドライヴァーがクルマを制御する上で役立つドライヴ・バイ・ワイヤーのシステムなどにもアクセスできる。安全でオープンなテレマティクスシステムをわずか数カ月で開発するように自動車メーカーに求めることは現実的ではないと、シーゲルは言う。

 「自動車メーカーは、可決された法律が求めている要件の一部を満たすようなプラットフォームをつくることはできると思います。しかし、個人的には自分のクルマにそれを搭載したいとは思いません」と、シーゲルは語る。

 自動車イノヴェイション協会は訴訟を理由にコメントしていない。しかし、AAIの代表は20年の公聴会で、独立系修理工場は修理のためだけでなく顧客への宣伝・販売のためにクルマのデータの入手を望んでいると主張している。

さらに大きく不透明な問題
 自動車ディーラーは、この論争のまっただ中に巻き込まれている。半導体不足でクルマの生産と販売が減っているいま、こうした論争に巻き込まれることはディーラーにとって特に痛手になっているのだ。

 マサチューセッツ州自動車ディーラー協会副会長のボブ・オコニウスキーは、「メーカー側が率先して話し合いに参加しなかったことは恥ずべきことです」と言う。しかし、彼は独立系修理業者に対しても腹を立てており、「金目当て」と非難している。

 マサチューセッツ州自動車ディーラー協会は、25年までに自動車メーカーにオープンデータプラットフォーム法に準拠させるべく、ふたつの法案を提出した。この法案はマサチューセッツ州議会で審議されている。

 この論争はより大きく不透明な問題を提示していると、ミシガン州立大学のシーゲルは考えている。自分の自動車からどれだけのデータが流れ出し、そのデータがどこに送られるのか、消費者がどれだけど理解できているかという問題である。

 クルマのGPSの位置情報、温度データ、生体情報、そして主要部品のデータは、収益の手段にもなりうる。シーゲルは数年前、同僚と共に米国のコネクテッドカーのデータ市場は最大920億ドル(約1.1兆円)の価値があると推定した。メーカーから部品サプライヤー、ディーラー、保険会社まで、誰もがそのシェアを争っているのだ。「最も重要なことは、誰がどんなおこぼれにあずかろうとしているのか理解させることです」と、シーゲルは言う。

 冒頭で紹介したマサチューセッツ州のマーク・フェレッリは、スバルのセダンを購入して体験したことを「いい勉強になった」と言う。「割を食うのはわたしたちのような消費者ですから」と、マークは語る。なお、彼はスバルのセダンを購入する際に、ディーラーの担当者から「誰か住所を使わせてもらえるような友人はロードアイランド州にいませんか?」と聞かれたという。AARIAN MARSHALL

#修理する権利・セキュリティとプライバシーの相反


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