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最新ディーゼルテクノロジー動向

2022-02-09 | 技術系情報
最新ディーゼルテクノロジー動向
 世はEVフィーバーで、10年後はすべてEVになるかの如くマスゴミの提灯記事が盛り沢山だ。しかし、例え乗用車のEV化が適ったとしても、商用車でGVW(車両総重量)が増える程、EVでの航続距離を確保するのは困難になることは確かだろう。つまり、電車の様に常時架線から給電できるなら、変速段も必用ない固定ギヤだけで、発進時の最大トルクから後は、可変周波数と電流値の制限の中で、どんな内燃機関にも適わぬ動力性能は確保できる。しかし、EVではバッテリー容量という限界が、その航続距離を決めてしまうことで、GVWの大きい大型車ほど、バッテリーの容量を巨大化させることは、イニシャルコスト、搭載スペース、充電時間という制限がある中で、その困難さは乗用車の比ではないだろう。しかも、商用大型車の走行距離数は、一般家庭の乗用車が年間1万キロ程度だとすれば、年間10万キロと桁が1段高く、その生涯累計走行距離数は100万キロを超える場合も珍しくない。

 表題に最新と記したが、筆者が無知なだけで、必ずしも最新とはいえぬのかもしれないが、最近認知したという意味で捉えて欲しいが2つの現在技術動向を記してみたい。

1.i-ARTという噴射補正技術
 これはデンソーが、2014年頃に開発し技術発表しているものだが、既にトヨタ、イズズ、ボルボなど、ディーゼル商用車や乗用車の市販エンジンに採用されている。[i-ART(Intelligent Accuracy Refinement Technology):自律噴射精度保証技術]

 この技術の核は、コモンレール用の個別インジェクターに圧力センサーを持つところにある。コモンレールインジェクターは、エンジンECUからの電気信号で、インジェクターを電気的に駆動して開弁させるが、実際の噴射弁の開閉は、この圧力センサー値の変化で確かめられると云うことなのだ。

 従来、コモンレール用のインジェクターは、その噴射バラツキを、バーコード表示などで管理しており、インジクター交換した場合など、ECUの基本パラメーター値としてコーディングすることで、その噴射精度を確保してきたが、それも生涯に渡る保障はない。

 ところが、このデンソーのi-ARTでは、絶えず噴射信号と噴射時の圧力変化のズレを検出しつつ、フィードバック補正し続けることで、生涯に渡るインジェクターの応答遅れなどの補正を自動で行えると云うものだ。

 なお、現在のコモンレールでは、多段噴射でなるべく燃焼を均一化させることに努めているが、多段の噴射が続くと、コモンレール内とかインジェクター内の空間の圧力変動の影響を受け、必ずしも精度が保てないという問題もあったが、このi-ARTでは10μsec(10万分の1)の精度で噴射精度を確保できると云う技術だ。

 インジェクターには圧力センサーを持つ他、ECUとの通信を行う機能と走行時の学習値を保持するメモリー機能を持つチップが内蔵されているとのことだ。もっと詳しい内容が知りたい場合は、以下のデンソーテクニカルレビューでpdfファイルを見ることができる。

デンソーテクニカルレビュー Vol.19 2014 ディーゼル噴射系の進化
https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/19/19-doc-26-ja.pdf

2.イズズ エルフ搭載 4JZ1でDPD(DPF)をエンジン直下に装着
 DPF(ディーゼルパテキュレートフィルター)はPMをトラップするものだが、旧来は排気管の後方に装着される場合が多かった。このため、トラップされたPMが堆積して詰まるという状態があり、それを焼き飛ばすのがDPF再生機能で、ポスト噴射(排気行程での噴射)で燃料をDPF前段の酸化触媒に送り込み燃焼させた高温でPMを燃焼させていた。ただし、この再生動作を繰り返すと、噴射された燃料がシリンダー壁を下がりエンジンオイルを希釈(ダイリューションと呼ぶ)する問題もあった。この新型4JZ1では排気タービン出口直下にDPFを2段構えに装着することで、DPFを高温下に置き、絶えずトラップしたPMを焼き飛ばす効果を持ち詰まりを減らすという思想だろう。



 なお、DPFが2つの筐体に別れているのは、搭載スペースの関係と、DPFは蜂の巣状のセラミック担体なのだが、曲面状に成型することはできない理由からとは筆者の推察である。また、従来DPFが装着されていた場所辺りに尿素SCR触媒が装着される。

#ディーゼルの新技術2つ


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