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 私の思いと技術的覚え書き

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大型トラックのホイール締め付け方式

2022-01-17 | 技術系情報
大型トラックのホイール締め付け方式
 大型車のホイール脱落事故が絶えない。しかも、この脱落事故の発生頻度は、年間を通じた中で月別に2度のピークがあることが知られている。つまり、1つ目のピークは10月~翌年1月頃までと、2つ目のピークは、3月~5月頃までと云うことだ。このことは、この次期に、夏用タイヤと冬用(スタッドレス)タイヤへの交換が行われていることと相関があると考えて良いだろう。

 それと、もう一つの傾向として、左側の後輪の脱落が目立つという報告がある。これは何を意味しているのだろうか。

 最近の大型車のホイール脱落事故を2件記してみる。

①21年12月に広島県東広島市の国道2号線八本松トンネル内で、走行中の事業用大型貨物自動車から左後輪のタイヤ2本が脱落し、対向車などに衝突する事故が発生した。

②つい先日22年1月12日群馬県渋川市の国道17号線で走行中の大型ダンプ(後輪2軸)の左後後輪2本が脱落し、約400m転動して対向車線の歩道にいた歩行者に衝突し重傷を負わせた。

 この大型車のホイール脱落事故は、2000年代初頭頃から散発的に増加する傾向があり、その中には三菱自の大規模リコール隠蔽の発端となった大型トレーラートラクタの前輪事故の脱落などがあった。これは、ホイールの取り付けボルトが緩んだものでなく、ボルトが装着されているハブ自体が亀裂損傷して脱落に至ったものだった。

 そんなこともあり、2010年より大型車のホイール取り付け方法が、従来のJIS方式から、欧米で主流となっているISO方式に変更されるに至っている。その違いは、添付図の通りなのだが、主な違いを列記すると以下となる。


①22.5インチホイールでは、締結本数をJISの8本からISOでは10本に増やしている。
②PDCという各ボルトが描く円弧のサイズを増やし、締結力を増している。
③ホイールのセンタリングを、JISではナットの球面座(テーパー座)に頼っていたが、ISOではハブインローの嵌合に変更した。
④ホイールナットを、すべて右ネジに変更すると共に、JISの球面座をISOでは平面座にした。
⑤後輪のダブルタイヤの締結を、JISではインナーナットとアウターナットの2つのナット締結だったのを、ISOでは1つのナットで共締めとした。
⑥これはJISでもISOでも同じなのだが、鋼製ホイールとアルミホイールでは、ヤング率の違いにより、ホイール板厚がアルミの方が1.4倍(後輪はダブルなので2.8倍)ほど厚くしなければならず、アルミホイールを装着する場合は長いボルトに交換しなければならない。

 という様な変更で、JISの球面座では過トルクとか多頻度脱着により、ホイール側の締結穴が押し広げられることによる疲労で、ホイール亀裂の生じる場合(添付写真参照)があったが、ISOでは平面座により、その様な弊害をなくした。


 一方、ISOでは左側ホイールでも右ネジなので、明かな緩みがあると、制動慣性によりナットは緩む方向への力が促進されてしまう。また、ダブルタイヤの場合は、共締めなのでナットが全数外れると2本同時に脱落してしまう。

 なお、全国トラック協会などでは、脱落事故防止に向けて、タイヤの脱着もしくは交換作業実施後ご、50~100キロでの増し締めを求めている(下記参照)が、そもそもタイヤ装着面(ハブ着座外面やホイール着座内面)の錆や異物の付着などを十分清掃し、基準トルクで各軸に締め付ければ、そもそも緩みが生じることはあり得ないとは私見である。もし、こういう増し締めが必用なら、厳格なトルク管理が求められる、シリンダーヘッドボルトや、クランクキャップ、サスペンションの締結ボルトも増し締めが必用になると云う理屈からだ。
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全ト協、「増し締め」徹底要請 冬用タイヤ脱落防止へ 2022.01.17
 全日本トラック協会(坂本克己会長)は、大型車の冬用タイヤ交換作業後のタイヤ脱落防止に向けて「増し締め」を徹底するよう各都道府県トラック協会への要請を開始した。国土交通省が事故を防止するため交換作業後に50~100㌔㍍走行後の増し締めを求めており、これを踏まえて確実な実施を呼び掛ける。


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