何とも痛ましい、労災事故の記事を見ましたので下記に紹介いたします。
12月6日午後1時半ごろ、上伊那郡中川村葛島のタイヤ修理・販売業「中川タイヤ商会」作業場で、パンクの修理を終えた5トントラックのタイヤを動かそうとした同所、家業手伝い野村正子さん(68)の顔に、タイヤに取り付けた金属製リングがはじけて当たった。野村さんは駒ケ根市内の病院に運ばれたが、あごを粉砕骨折するなどし、約2時間後に死亡した。
駒ケ根署によると、リングは直径44センチ、重さ約3キロ。ホイールがタイヤから外れないように取り付けてある。野村さんは同商会を経営する男性の妻で、事故当時、1人で作業していたという。
大型車等のホイールは、タイヤの脱着を簡便にする為に片側のホイールリム部が取り外せる構造(ホイールリング)となっている訳ですが、このリングがホイール本体の溝ににしっかりと嵌り込んでいない状態であったのか、リングもしくはホイールに腐食を生じていたのかが原因と想像されます。ホイールにタイヤを組み付け空気を注入していきますが、最終的にタイヤビード部がリム部にバシッと押し付けられて密着しますが、この時がもっとも危険な瞬間であると思います。
次に、12月8日午前9時20分ごろ、羽生市上新郷の別所橋で、欄干を突き破り停止した事故車のレッカー作業をしていた騎西町多田ヶ谷、会社員、中野敦史さん(34)が、約2メートル下の用水路(幅約15メートル、水位約2・5メートル)に転落。用水路は急斜面だったことから救出作業は難航し、中野さんは約1時間半後に引き上げられたが水死した。
レッカー作業中の事故というのは、時々耳にします。日頃懇意にしているレッカー専門業者の方とも話しますが、特に夜間や凍結地、高速道路での事故処理中に、他の車両が再衝突して、車に挟まれたりして重傷や死亡に至る事故です。レッカー業者だけでなく、事故原因捜査中の警察官も同様な事故に遭っています。道路公団車両や高速道路でのレッカー車には、強力な光を放つ後方警戒灯が装着されていますが、その理由も判ろうと云うものです。
ところで、自動車整備および鈑金塗装業の方々についても、以下の様な作業には特に留意した作業を行う必要があると感じます。
①バッテリーの取扱い
充電直後や走行直後のバッテリー液上部には、水素が充満しています。そんな中で、ターミナルの接続等で火花を出すと、希にバッテリー上部が吹き飛ぶ様な爆発を起こす場合があります。この様な爆発では、バッテリー内の希硫酸も一緒に吹き飛びますから、目に入ると失明の危険があるのです。
②HV車の取扱い
HV(ハイブリッド)車では、高電圧部位にオレンジを色の電線もしくは被覆チューブが使用されています。HVバッテリーは300ボルト弱の高電圧があり、しかも直流ですから非常に危険であり感電に要注意です。また、動作中にはインバーター(たいていエンジンルーム上部にあり)を介して600ボルト以上の交流電圧に昇圧され、モーターに印加さますから、これまた要注意です。
これらHV関係の作業に当たっては、労働安全衛生法第59条ならびに労働安全衛生規則第36条に基づく、安全又は衛生のために必要な事項についての教育を受けた上で、必ず絶縁手袋を着用しての作業が必要となります。そして、作業の最初に絶縁手袋を装着してHVバッテリー部のサービスプラグクリップを引き抜きます。そして、10分程度の間を置き(回路内のコンデンサー類の放電を待つ)、必要な作業に入ります。
③エアバック類の取扱い
エアバック類を取り付けたまま、フレーム修正等の作業を行う場合は、バッテリー端子を外し、10分程度を経過(回路内のコンデンサー類の放電を待つ)してから行います。また、未作動のエアバックを取り外す場合は、当然に先のバッテリー端子を外してから行います。そして、取り外したエアバックの端子をサーキットテスター等での導通テストは絶対厳禁です。思わぬエアバック作動により大怪我を負う恐れがあります。
取り外したエアバックの保管は、必ずエアバックの表面を上にして保管します。下向きに保管中に、静電気等の印加で万一作動すると、エアバック本体が飛び上がり、大変危険なこととなるからです。なお、エアバック類の本体やセンサー類のコネクターを抜いたままIGキーは、止むない場合を除き出来るだけオンにしない方が良いでしょう。そうしないと、エアバックECUは回路の異常として検出し、メーター内のエアバックランプが点灯したままとなります。こうなりますと、対応できるOBDスキャンテスターでリセットさせるか、専用テスターを有したディーラーへ車を持ち込まなければならなくなります。