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 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

クルマの中でのラッシュとは

2011-06-21 | 技術系情報
 クルマのメカニズムを表す用語としてラッシュ(lash)が入る2つのことについて、知る範囲のことを関連した内容と共に記してみます。なお、ラッシュ(lash)の意味は、むち打ちだとか激しい衝突を表し、混雑などを意味する同音のラッシュ(lush)とは異なります。

①バックラッシュ(backlash)
 主に歯車でのあそびやがたを表します。この歯車のバックラッシュですが、適切な範囲になければなりません。
 大きすぎると、駆動、比駆動の際などの打音などが大きくなり、歯の噛み合い(歯当たり)が浅くなることも相まって歯欠けなどの重大なトラブルに結び付く恐れがあります。
 一方、小さすぎると、油膜が保持できず、歯面同士の金属が直接接触に至り、歯面は高温となり焼き付いてしまいます。
 ところで、内燃機関のエンジンは、出力軸の回転振動を生じてます。つまり、角速度の増減を繰り返している訳です。特にアイドル回転では、回転数の絶対値が低いこともあり、比較的低い周期での回転振動が生じ、関連するギヤのバックラッシュによるガタ打ち音が問題になることがあります。その対策として、シザースギヤという薄い歯厚のギヤを重ね弱いスプリング反力で押し付けることにより、見かけ上のバックラッシュを無くしたものが、カムシャフと間の駆動ギヤとかマニュアルトランスミッションのインプットシャフトとカンターシャフト間のギヤなどに使用されています。

②ラッシュアジャスター(lashadjster)
 ラッシュアジャスターとは昔は、ハイドロリックリフターとかオイルタペットと呼ばれていたものと同意語です。
 ラッシュアジャスター採用以外の内燃機関のエンジンでは、吸入、排気の各バルブ(ポペットバルブ)は、OHV、OHC、DOHCなどの弁駆動機構による違いはあるものの、熱膨張時にも各部品の微少な位置の変位が生じます。その熱影響により変位を吸収し、バルブを確実に閉じるために最小寸法が、また大きすぎると打音(タペット音と呼ばれる)が生じてしまいますので最大寸法が設定されています。これをバルブクリアランスと呼びます。
 なお、バルブクリアランスが小さくなり過ぎて、バルブが弁座に密着しなくなると、当然正常な圧縮が得られないことになりますが、稼働中のエンジンで生じると、バルブ傘部の放熱不良から傘部過熱しつつ、バルブ傘部で僅かな隙間をジェット噴流様に噴き出すことになり、傘部の溶損を生じる事例があります。
 昔のエンジンでは、バルブクリアランスがあることがほぼ当たり前で、定期的もしくは随時調整することが行われてきました。しかし、最近の多くのエンジンでは、ラッシュアジャスターを採用することにより、メインテナンスフリー化を意図したものです。
 機構としては、バルブの駆動機構の間に伸縮機能を持っており、バルブ閉時に伸縮機構内部の弱いスプリングで、クリアランスをゼロにするまで伸びて内部にオイルを充填し、バルブ開時にはチェックバルブを閉じ、オイルの液圧によりバルブを駆動するというものです。
 しかし、このラッシュアジャスター機構も、オイルメインテナンスの不良などを要因として、チェックバルブの密着不良などを起こし、エンジン始動後のしばらく、もしくはずっとカタカタ音が止まらないというクルマを見掛けることがあります。先日も、「これディーゼルかい?」と運転者に聞く様なクルマに出会いました。また、高速回転まで廻るスポーツ系エンジンでは、ラッシュアジャスターを使用しない場合も多いようです。これは、高速回転においてラッシュアジャスターの伸び過ぎによるバルブ閉時の密着不良や焼損の懸念があるためでしょう。



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