私の思いと技術的覚え書き

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水性塗料のこと

2007-09-22 | 車両修理関連

 今回は純技術系の情報として記してみます。(興味のない方は読み飛ばして下さい。)

 水性塗料関連のことについて、現時点で私が知り得ている知識と感じること等を記してみます。

 水性塗料は新車製造ラインでは、かなり以前より使用されて来ていました。欧州車(ダイムラーベンツ等)では相当以前から、国産車でも90年初頭のホンダNSXでは全色水性塗料が採用されて来ていました。(ルーフのブラック塗装部や樹脂部品部を除く。)現時点では、ホンダに限らず多くの自動車メーカーでの新車製造ラインで水性塗料が使用されている来ているのが実態の様です。しかし、水性塗料の使用は、下塗りのEDコート(いわゆるカチオン電着塗装)、中塗り塗装、カラーベース塗装までです。トップコートクリアー塗装は、従来同様の油性系の焼き付け硬化型塗料(熱硬化型アミノアルキド樹脂塗料(通称メラミン)または熱硬化型アクリル樹脂塗料)である様です。

 次に自動車補修用(以下自補修用と記す)の水性塗料のことですが、水性塗料の乾燥性の悪さ等の欠点は改良されつつあり、その使い易さは相当程度までに改善されて来ている様です。また、欧州等では法的なVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化物)規制の関係で、BPショップでの水性塗料の使用率はかなり高まって来ている様です。しかし、現時点での我が国では、そこまでの法的規制はありませんし、あえて新商品であることの導入リスクや、塗装ブースの水性対応への改造コスト、塗料原色セットの入れ替えコストを等を考えれば、現行使用塗料を水性へ切り替える工場は、少ないのが実情なのは仕方のないことだと思います。(原色セットを揃えれば100万を超える程度は要すると思います。これは従来の外資系の2液ウレタン塗料でも同様ですが。)
 それと、新車ライン塗装と同様に自補修用塗料も、水性ベースとしては、サフェーサーとカラーベースまでです。トップコートクリアーは従来同様の2液ウレタン塗料(水性カラーベースに対応した専用品)の使用となります。
 なお、水性塗料の欠点として極低温状態で塗料がゲル化(ゼラチン状となる現象)を起こすと、再び温度を上げても使用不可能となってしまうこともあります。ですから、寒冷地のBPショップ等での使用は、その輸送や保管といったことに留意(恒温庫内に保管する等)する必要がある等、なかなか困難な問題が想定されます。以上の様な内容が、我が国で水性塗料が普及して来ない要因ではないのかと想像しています。

 現時点で自補修用水性塗料を本格導入しているのは、一部の輸入車系大型BPサービスセンターや輸入車系のPDI(Pre Derivery Inspection:新車納車前整備)工場位のものだと想像されます。一般のBPショップでは従来の2液ウレタンと併用し、極一部が実験的に使用している程度なのが実態なのだと思いますし、その数も僅かなものであると想像されます。
 なお、私見ですが環境に優しく、よりVOC排出量の少ない水性塗料への変換は、我が国でも促進されてしかるべき問題だと思っています。また、近い将来、我が国での法的なVOC規制もより強まって来るものと思います。

 最後に、水性塗料を利用した塗装料金のことに関して私見を記します。先に述べて来た様に、現時点で水性塗料を導入した場合に、施工する工場側には一定のコストアップ要因が生じることが想定されます。しかし、そのコストアップの総てを塗装料金に反映しきれるかという問題については、困難な場合があるとも想定されます。
 その理由として、現時点で世界中のカーメーカーで、補修用塗料として水性塗料を使用でなければならないとしているメーカーはありません。そして、ユーザーとしては一般的な補修用塗料を使用してもらえば良いのであって、特定の工場の都合により、そのコストが増えた分までを負担する必要があるのかという問題があります。ですから、水性塗料が一般的な自補修用塗料として世間一般に普及する必要がまずあります。そして、信頼できる機関等で水性塗料での作業時間および材料費等の基礎資料の発表がなされ、それが信頼に足るものであると認知される必要もあると思います。それまでは、工場とユーザーとの十分な打合せによる料金の決定とならざるを得ないと私は感じています。 なお、これも私見ですが、水性塗料に限らず、元々塗装費用は要求される仕上げレベルの差異等も考慮して、ある程度の上下幅のあるのも致し方のない問題ではないかとも感じています。


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