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 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

ウォーターハンマー事例(S2000・F20C)

2018-06-22 | 技術系情報
 一昨晩(6/20)も結構な大雨が降り、地区によっては冠水し、クルマ関係の水害も生じているのかもしれないなんて思うのだ。そんなことを思い、10年程前に強い関心を持って眺めた、ホンダS2000・F20Cエンジン(H11年登録)の典型的なウォーターハンマー事例の記録として掲載してみる。

 さて、ウォーターハンマーという意味だが、走行中のクルマがある程度の水深のある水中へ勢いよく走り込んだ場合、エンジン内部の損壊が生じることは既知のことだろう。ゆっくりアイドル状態で入れば、単にストンとエンストして、引き出して再始動すれば損壊までは生じないだろう。しかし、威勢よく水中を走行すると、例え水位がエアクリーナー吸い込み口以下だとしても、半ば閉塞されたエンジンルーム内の水位は高まり、大量の水が一気にシリンダー内に入り混む。そこで、車両の慣性力も働くから、液圧縮されたピストンとクランクを結合するコンロッドには、とてつもない大きな力が作用し、コンロッドを曲損もしくは折損させ、酷い場合は折れたコンロッドがシリンダブロック下部を突き破る(通称:足出し)という現象に至るものだ。そんな実例(しかもスペシャルエンジンたるF20C)として紹介してみたい。

①分解前のエンジンルーム外観
 エアクリーナーの吸い込み口に注目。結構高い位置だけど入ってしまうのだ。それと、ヘッドカバーが異様に高く(深く)見える。これは、バルブがリフターを直接押す直動式でないことが一つあるだろう。もう一つに、カムとバルブ間にロッカーアームが入る方式となると、多くのエンジンがヘッドの上にカムホルダー(つまりカムシャフトジャーナル)を乗せ、薄いヘッドカバーが乗る方式なのが多い。しかし、このエンジンはカムジャナールを個別ジャーナルとしてヘッド上に固定しているが故に、深いヘッドカバーとなっている様だ。

②同じく分解前のエンジン左方向からの外観
 今ではほぼ絶滅したスロットルワイヤーが見える。つまりアクセルバイワイヤーではない。我思うに、この方が好ましい。今のエンジンルームで空吹かしもできないエンジンは嫌いだ。それと、ペダルとスロットル開度の非線形特性はまだしも、燃費だけを指向した遅延だとか、排ガス上だろう閉時の遅延など恣意的制御から感じる僅かなラグを感じた時、心は冷える。

③カム関係を外したヘッド上面
 各バルブスプリング間にあるプランジャーは何か?ラッシュアジャスター様に見えるが、マニュアル調整機構があるし、VTEC関連かよく判らない。VTECの低高速切り替えは、ロッカーアーム間の連結ピンで連結と非連結を切り替えているのだが・・・。

④カムシャフトとジャーナル関係
 低速用カムと高速用カム(中央)の配置がよく判る。ロッカーアームはローラー式。

⑤ピストン関係
 ピストンは鍛造製だという。しかも、ピン脇左右にオイルジェットから吹き付けられたオイルを還流させるためと想像されるホールがあるのに注目した。

⑥ヘッドを外したブロック上面。
 カム駆動はチェーンだ。ボアピッチはかなり少ない。

⑦ブロック下面より
 オイルストレーナーの網目はそれ程細かくないが吸い出し口が狭められている。その明確な理由は説明しかねる。このエンジン、クランクジャーナルは、ロワブロックとしてジャーナル一体でアッパーブロック下面に密着する。

⑧問題の折損したコンロッドとブロックの干渉部
 打痕が観察されるが・・・。

⑨オイルパン部
 アルミキャスト製でしかも、ベルハウジング下方と一体化させ強固な結合剛性を意識していることが判る。

⑩ブロック内面
 先の打痕だが、亀裂など見られず傷の深さもそれ程のものでなく再使用となった。シリンダー毎に付けられたオイルジェットノズルに注目。この様なジェットは、通常エンジンではコンロッドに儲けられたジェットで行うクルマが多いが、オイルギャラリー直結の専用ジェットからピストン裏面に強力にオイルを吹き付け冷却している。故に、オイルポンプ容量も考慮されているハズだ。

⑪ブロック側面
 アッパーブロックとロワブロックの関係がよく判る。

⑫クランクシャフト
 素材はダクタイル鋳鉄で、当然において熱間鍛造品だろう。折損したNo2コンロッドとピストンが判る。

⑬折損コンロッドとピストン その1
 今回はウォーターハンマーによる折損だが、このエンジンはNetを見るとオーバーレブだと思われる折損事故も起きている様だ。

⑭折損コンロッドとピストン その2
 これだけ折れるのだから、高回転状態であれば、クランク側に残された残部は振り回され、軽くブロックを突き破る訳だろう。

⑮シリンダーブロック上面より
 先に述べた通りボア間ピッチは小さくボアアップの余裕はない。2.2L仕様もある様だが、ボア同一のストロークアップの様だ。

※総合的な感想
 とにかくアルミの鋳肌とかパーツの面が、仕上げ面以外においても非常に美しい。それなりに力を込めて作ったエンジンというのが感じられるところだ。
 なお、追記するが、車両保険(一般型のみ)に入っていた場合、通常の故障損害は”偶然外来”でなく支払いされぬが、今回の様な偶然外来の損害は支払いされる。類似で、オイルパンだとかをぶつけてのオイル漏れからエンジン焼き付きだとか、MTでシフトダウンミスでオーバーレブなども、エコノミー(車対車)でない一般型では支払いされる損害となる。ただし悪用されぬ様に。保険会社もバカではないので、悪質な場合は保険金詐欺として告訴される場合もあるだろう。
















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