フェードを起こしパーキングを引いても効果はない→中期ブレーキ規制のあや
ふじあざみライン事故では、急な長い下り坂で多頻度ブレーキの使用により、各車輪のブレーキ装置摩擦体が高温となることで摩擦体の摩擦係数低下による、いわゆるフェード現象が起きたと云われている。このフェード現象は、乗用車でも限界までブレーキを連続使用すると生じる場合がある。しかし、乗用車ではいわゆる油圧ブレーキでブレーキの倍力作用もトラバスの様な大重量車に比べ小さく、必用減速度を得るための踏力が増加することで認知し易い。一方、大重量車では、高いブレーキ倍力作用を生み出すために高圧エアを使用してブレーキペダルの作動踏力を助勢している。従って、そもそも通常のブレーキ操作力が小さく、そのこともあって乗用車の様な強い制動を行う場合にも乗用車の様な強いブレーキペダル踏力は必用ないので、軽いタッチでデリケートな操作を行える様に、アクセルペダルの様なオルガン式ペダルが採用されている。
つまり、構造的に説明すると、乗用車の油圧ブレーキは、強い制動力を出すには強いブレーキ踏力を与え、その反力を感じつつ制動を行うのに対し、エアブレーキは単にブレーキペダルはエア通路を開くだけの踏力で、踏み込み量によりエア通路の通過流量を可変し制動力の制御を行っているのだ。ただし、エアブレーキでも、多少のペダル反力がないと、踏み過ぎてしまうので、通過エア通路の開放度合いの応じて、擬似的な反力を生み出す機構が採用されており、踏み過ぎに応じた反力を生み出す機構となってはいるが、乗用車より圧倒的に小さい反力となる。
この反力の小ささが、ブレーキフェードなど制動能力の低下による反力の増加を少なくすることで、ペダル反力としてのフェードの認知がし難いということがある。重量車のエアブレーキにおいては、ブレーキペダル反力による制動能力の低下を認識し難く、ペダル反力と云うより車体そのものの減速感で制動能力の低下を認識するということで、乗用車に比べると、ブレーキフェードに対する認知が遅れる要素がある。
一方、ブレーキ装置とは、運動エネルギーを摩擦体の擦れ合う摩擦力により、それらを昇温させることで、機能を発揮する。つまり、ブレーキ装置とは、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置と云える。この運動ネルギーだが、一般的な小型乗用車が1トンちょっとに対し、大型重量車では10倍もしくは20倍を超える重量を持つので、運動エネルギーもその重量増加分だけ大きいことになる。一方、重量車の制動装置を、対乗用車比で、その重量増加に見合った熱エネルギー吸収容量を与えることは、その容積キャパシティから難しいということがある。特に、単発制動においては、ブレーキ装置に熱容量という装置自身が熱を溜め込む機能があるのだが、この熱容量が十分あれば、放熱性能が間に合わない急制動であって、冷却が間に合わない場合であっても、熱容量の分だけブレーキ摩擦体の温度を昇温させることで、青銅能力の低下は落とさないで済む。しかし、連続制動などで熱容量の限界まで達すると、その後の放熱は間に合わないから、制動装置の加熱は急速に上昇しつつ、フェードが急速に進行してしまう。
この熱容量は、摩擦体たるブレーキドラムもしくはブレーキディスクの体積でほぼ決まる。そのため、乗用車では高性能車ほど、より大径およびディスクローターの厚みを増すことで体積を増やしている。しかし、バストラ重量車では、それなりにブレーキドラムの径や厚み、でディスクの径や厚みを増すのだが、低扁平タイヤがないこともありホイールサイズの限界があり、やたらブレーキサイズを大きくすることは困難という宿命がある。大重量車でも最近はディスクブレーキが増加しつつあるが、未だ低速時のブレーキ性能の良さなどもありドラムブレーキが多い。また、ディスク式であっても、ローター径はホイールサイズの制限を受けるため、主にディスクの厚みを増すことで熱量を上げているが、何故乗用車に比べると車重が大きく、乗用車に比べると対フェード性能に対する余裕は少ない。
ところで、ふじあざみラインバス事故では、運転者がブレーキが効かないと認知して、パーキングブレーキを作動させたこととが報じられているが、現在の大型バストラ(GVW8トン超車)では、ホイールパークブレーキが採用されており、パーキングブレーキと云っても、主ブレーキの後輪がスプリング力により作用するだけで、主ブレーキがフェードを起こしているとその効果は得られない。
このホイールパークブレーキだが、過去(1996年制定、2000年新型車から装備)以降に採用された方式であり、現在でもGVW8トン以下車などのパーキングブレーキは、主ブレーキとは別系統となる、トランスミション後端部に装着されたパーキング専用ブレーキ(通称センターブレーキとも呼称)が装備されている。中期ブレーキ規制以前であれば、大型車でも、このセンターブレーキがパーキングブレーキとして装備されていたのだが、パーキングブレーキの能力向上(18%勾配での車両拘束性能)が求められ、俗にホイールパークブレート呼ばれる、パーキングブレーキはエアチャンバーのスプリング室の高圧エアを排出することで、強いスプリング力で後輪主ブレーキを作動させる方式になっている。
今次事故みたいに主ブレーキがフェードを起こした場合、絶体制動能力としては格段に劣るが、センターブレーキがある車両であれば、パーキングブレーキを作動させることは効果があったと見込まれる。ただし、センターブレーキは小径であるし熱容量としても小さく、直線路でおもいっきり引いて一気にロックまでさせ得れば、ブレーキ昇温することもなく、後輪ロックで急減速できる余地があるが、後輪ロックにより方向安定性が乱れ後輪が横に流れる可能性もあるだろう。
【過去記事】
リヤブレーキ引きずりとホイールパークブレーキの因果関係?
2019-09-22 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/a0cd389f8ae6ed6fbbd9787f2b215107
ふじあざみライン事故では、急な長い下り坂で多頻度ブレーキの使用により、各車輪のブレーキ装置摩擦体が高温となることで摩擦体の摩擦係数低下による、いわゆるフェード現象が起きたと云われている。このフェード現象は、乗用車でも限界までブレーキを連続使用すると生じる場合がある。しかし、乗用車ではいわゆる油圧ブレーキでブレーキの倍力作用もトラバスの様な大重量車に比べ小さく、必用減速度を得るための踏力が増加することで認知し易い。一方、大重量車では、高いブレーキ倍力作用を生み出すために高圧エアを使用してブレーキペダルの作動踏力を助勢している。従って、そもそも通常のブレーキ操作力が小さく、そのこともあって乗用車の様な強い制動を行う場合にも乗用車の様な強いブレーキペダル踏力は必用ないので、軽いタッチでデリケートな操作を行える様に、アクセルペダルの様なオルガン式ペダルが採用されている。
つまり、構造的に説明すると、乗用車の油圧ブレーキは、強い制動力を出すには強いブレーキ踏力を与え、その反力を感じつつ制動を行うのに対し、エアブレーキは単にブレーキペダルはエア通路を開くだけの踏力で、踏み込み量によりエア通路の通過流量を可変し制動力の制御を行っているのだ。ただし、エアブレーキでも、多少のペダル反力がないと、踏み過ぎてしまうので、通過エア通路の開放度合いの応じて、擬似的な反力を生み出す機構が採用されており、踏み過ぎに応じた反力を生み出す機構となってはいるが、乗用車より圧倒的に小さい反力となる。
この反力の小ささが、ブレーキフェードなど制動能力の低下による反力の増加を少なくすることで、ペダル反力としてのフェードの認知がし難いということがある。重量車のエアブレーキにおいては、ブレーキペダル反力による制動能力の低下を認識し難く、ペダル反力と云うより車体そのものの減速感で制動能力の低下を認識するということで、乗用車に比べると、ブレーキフェードに対する認知が遅れる要素がある。
一方、ブレーキ装置とは、運動エネルギーを摩擦体の擦れ合う摩擦力により、それらを昇温させることで、機能を発揮する。つまり、ブレーキ装置とは、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置と云える。この運動ネルギーだが、一般的な小型乗用車が1トンちょっとに対し、大型重量車では10倍もしくは20倍を超える重量を持つので、運動エネルギーもその重量増加分だけ大きいことになる。一方、重量車の制動装置を、対乗用車比で、その重量増加に見合った熱エネルギー吸収容量を与えることは、その容積キャパシティから難しいということがある。特に、単発制動においては、ブレーキ装置に熱容量という装置自身が熱を溜め込む機能があるのだが、この熱容量が十分あれば、放熱性能が間に合わない急制動であって、冷却が間に合わない場合であっても、熱容量の分だけブレーキ摩擦体の温度を昇温させることで、青銅能力の低下は落とさないで済む。しかし、連続制動などで熱容量の限界まで達すると、その後の放熱は間に合わないから、制動装置の加熱は急速に上昇しつつ、フェードが急速に進行してしまう。
この熱容量は、摩擦体たるブレーキドラムもしくはブレーキディスクの体積でほぼ決まる。そのため、乗用車では高性能車ほど、より大径およびディスクローターの厚みを増すことで体積を増やしている。しかし、バストラ重量車では、それなりにブレーキドラムの径や厚み、でディスクの径や厚みを増すのだが、低扁平タイヤがないこともありホイールサイズの限界があり、やたらブレーキサイズを大きくすることは困難という宿命がある。大重量車でも最近はディスクブレーキが増加しつつあるが、未だ低速時のブレーキ性能の良さなどもありドラムブレーキが多い。また、ディスク式であっても、ローター径はホイールサイズの制限を受けるため、主にディスクの厚みを増すことで熱量を上げているが、何故乗用車に比べると車重が大きく、乗用車に比べると対フェード性能に対する余裕は少ない。
ところで、ふじあざみラインバス事故では、運転者がブレーキが効かないと認知して、パーキングブレーキを作動させたこととが報じられているが、現在の大型バストラ(GVW8トン超車)では、ホイールパークブレーキが採用されており、パーキングブレーキと云っても、主ブレーキの後輪がスプリング力により作用するだけで、主ブレーキがフェードを起こしているとその効果は得られない。
このホイールパークブレーキだが、過去(1996年制定、2000年新型車から装備)以降に採用された方式であり、現在でもGVW8トン以下車などのパーキングブレーキは、主ブレーキとは別系統となる、トランスミション後端部に装着されたパーキング専用ブレーキ(通称センターブレーキとも呼称)が装備されている。中期ブレーキ規制以前であれば、大型車でも、このセンターブレーキがパーキングブレーキとして装備されていたのだが、パーキングブレーキの能力向上(18%勾配での車両拘束性能)が求められ、俗にホイールパークブレート呼ばれる、パーキングブレーキはエアチャンバーのスプリング室の高圧エアを排出することで、強いスプリング力で後輪主ブレーキを作動させる方式になっている。
今次事故みたいに主ブレーキがフェードを起こした場合、絶体制動能力としては格段に劣るが、センターブレーキがある車両であれば、パーキングブレーキを作動させることは効果があったと見込まれる。ただし、センターブレーキは小径であるし熱容量としても小さく、直線路でおもいっきり引いて一気にロックまでさせ得れば、ブレーキ昇温することもなく、後輪ロックで急減速できる余地があるが、後輪ロックにより方向安定性が乱れ後輪が横に流れる可能性もあるだろう。
【過去記事】
リヤブレーキ引きずりとホイールパークブレーキの因果関係?
2019-09-22 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/a0cd389f8ae6ed6fbbd9787f2b215107