私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

リヤブレーキ引きずりとホイールパークブレーキの因果関係?

2019-09-22 | 事故と事件
 先にバス火災とリヤブレーキの引きずりに一定の相関関係が伺われる可能性を記したが、比較的新しい大型車には中期ブレーキ規制(1996年制定、2000年新型車から装備)との因果関係を疑ってみる必要がありそうに思えます。

 中期ブレーキ規制では、大型車を対象にブレーキの様々な性能向上を定めていますが、その一つとしてパーキングブレーキの能力向上も含まれています。中期ブレーキ規制以前の大型車では、駐車ブレーキとして、俗にセンターブレーキと呼ばれるトランスミッション後端部とプロペラシャフトの間に装着されるブレーキでした。それが、新しい駐車ブレーキの能力向上(18%勾配におけるブレーキ性能)に伴い、従来のセンターブレーキでは手動式のため運転手の腕力によっては制動不足になる可能性を払拭した、左右後輪をそれぞれ別途に固定するいわゆるホイールパークブレーキと呼ばれるものに変化しています。

 このホイールパークブレーキでは、写真1の様なエアチャンバーに、強いスプリングが組み込まれており、スプリングチャンバーに空気圧が作用するとスプリングは圧縮されて駐車ブレーキは開放されます。(SBブレーキと呼びます。))一方、スプリングチャンバーのエアを開放するとスプリングが伸びブレーキシューを拡張し駐車ブレーキが作動するという仕組みです。従って、駐車ブレーキレバーとしては、従来と同じく手動式レバーですが、そのレバー長さも短いもので、動作も単にエア流路を切り替えるだけのスイッチですから作動力も極めて軽くできる訳です。(写真2参照)

 なお、通常ブレーキは同じく写真1のブレーキチャンバーに作用する空気圧で行うフルエアブレーキ式と、通常ブレーキはブレーキフルードの液圧で作動する空油圧複合ブレーキ(エアオーバー式)がありますが、バスやトラックではエアオーバー式の方が多い訳です。この理由ですが、液体は圧縮してもほとんど体積変化はなく、遅延なく液圧は伝わるのですが、気体は圧力応じて伝わるため、その作用する部品の内容積にもよるのでしょうが圧力の立ち上がりは、空圧配管のエア圧発生源からの距離も関係して遅延して作用することになります。つまり、一般にはエア圧発生源の作用切り替え機となるエアバルブ(ブレーキペダル)は車両前方にありますから、前輪より離れた後輪は遅延して空圧が立ち上がる、すなわちタイムラグを生じて制動力が働く訳です。この弊害を軽減するためにリレーバルブなどを設置し、各輪の空圧の立ち上がり差を軽減はしているのですが、運転者の感じるフィーリングとしては液圧式と比べれば見劣りしてしまうのです。ただし、総てを空圧だけで作用させるフルエアブレーキは、トラクタとトレーラーを随時付け替えしたりする場合に、液圧式の様な配管中にエアが混入することによるブレーキ力の低下などの心配がないことから、バストラ含め単車以外のトレーラー式には、フルエアブレーキが多用される訳です。

 ブレーキ機構の解説を長々と費やしてしまいましたが、今回の火災を生じた比較的新しいバスということは、ホイールパークブレーキ装備車となります。そこで、何らかの理由で後輪ブレーキが引きずりを生じ、ブレーキ加熱の問題が生じたのが原因と考えると、そこには内在する何か問題がありそうに思えるのです。

 なお、補足しますが、このホイールパークブレーキだけで作動する、もしくは通常ブレーキもエアで作動するブレーキチャンバーと呼ばれる部品は、内部にダイヤフラムが使用されますが、そこに気密不良が生じるとブレーキの制動不良やSBブレーキの開放不良が生じる可能性があります。また、このブレーキチャンバーは一般に非分解パーツで、Assy取替が原則となるパーツとなります。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。