私の思いと技術的覚え書き

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一世代で消えたメカニカルデザイン・その2・BMWミニ R56のこと

2020-07-26 | 車両修理関連
 前回に続いて一世代限りで消えたメカニカルデザインのその2として、BMWミニの先代モデル、R56(2006-2013)のことを書き留めてみたい。

 R56にドア内部に初めてタッチしようとすると、非常に戸惑いを感じる。それは、通常の車であれば、ドアインナートリム(ライニング)を外し、ドアインナーの各ホールを塞いでいるビニール縁のブチルゴムを引き剥がしつつアタッチするというとが常識だ。そんな思いで作業を進めドアのインナートリムを外し始めるが、作業は写真1の状態となる。

 ここから、さらにインナートリム周辺のM6スクリューを10本程度外し、インナートリム+レギュレターレール類+ドアガラスAssyという写真2の状態を一体でドアから切り離す。その後のドア本体は、写真3のごとく、ほぼドンガラ状態となる。

 このドア構造は、BMWミニの先々代モデル(R50)や、現行モデル(F56)では採用されておらず、これらは一般的な構造だ。

 さて、なんでR56は、この様なドア構造を採用したのかをちょっと想像してみたい。このBMWミニだが、現行モデルには5ドアモデルもあり、いわゆるサッシ付きモデルもあるが、現行3ドアモデルとかR56やR50では、総てドアはサッシュレスドアとなる。ドアの総分解に近い作業を行った者なら、サッシュ付きドアとサッシュレスドアでは、ドア内部のガラス昇降機構の複雑さは、サッシュレスが増すことを理解できるだろう。つまり、サッシュレスドアは、昇降するガラスの動的位置や保持剛性を確保するため、構成部品が多いのだ。しかも、通常のドア構造だと、これら構成パーツをドア内部に組み込むのに、ドアガラス側から入れたり、その後ガラスを仮固定して、最小限位置や前後位置を調整したりと、サッシュ付きより、作業工数は大きくなるのだ。たぶんだが、この作業工程を、メーカー製造ラインでは、補助ラインで専用治具を利用して、より短時間に組立できるだろうと思考したんだろうと想像する。しかし、取り付けボルトやクリップ数など、総部品点数は圧倒的に増え、部品コストのアップは必置で、しかも総合的な工数が何処まで短縮できるかというと疑問だ。

 しかも、ドアは内部にインパクトビームを入れたりサイドインパクトに備えている。R56でもドアベルトラインの内側を、サイドインパクトを意識してのことだろうが、アルミの引き抜き材で強度を確保している。しかし、これでも、通常なら、高張力鋼をボックス構造にしたりと、ポール側突試験に備える強度を確保しているが、ネジ止めアルミ材では困難だろう。

 補足すると、R56までは、横幅1.7m以下の5ナンバー規格に入る車幅だったが、F56では車幅が増えており、エンジン排気量は1.5Lだが3ナンバー規格になっている。これは、シビックやカローラなど、多くの国産ファミリーカーも同様だが、サイドインパクト(特にポール側突試験)に好成績を得るための拡幅化が招いた現象なのだ。




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