私の思いと技術的覚え書き

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バルブシートリセッションのこと

2016-10-14 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 この用語は、現在40以上の方とか、相当な旧車に乗っているマニアでメカニカルな知識がある方なら、その意味もお判りのことであろう。今回は、そんな用語聞いたことないよという方向けに記すものだ。

 昔のクルマ(排ガス規制以前)は、例えガソリンがレギューラーもしくはハイオクの別なく、4エチル鉛がアンチノック剤として使用される前提で、エンジンが設計・製造されていた。ただ、ハイオクは、4エチル鉛の含有量が多いという違いだった。ところが、排ガス規制が実施され、酸化触媒や三元触媒が使用されることになり、触媒の早期劣化を生じることから、鉛の使用を制限せざるを得なくなった。この無鉛ガソリンの普及は、レギュラーで1975年、ハイオクで1987年に、それぞれ完全達成されている。

 なお、無鉛ガソリンにおけるアンチノック性能の確保としては、当初はMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)の含有などで行われたが、これも水に溶けやすく環境汚染の原因になるとして使用が中止された。現在はアルキレート精製処理にて、高オクタンガソリンの製造が行われているという。

 さて、本論であるが、無鉛ガソリンへの切り替え販売により、それ以前の古いエンジンにおいて、バルブシートリセッションなる現象が生じることが問題となった。これは、インテークおよびエキゾースト各バルブ(特に高温となるエキゾースト)のシートおよびバルブ傘部(フェース)が、従来の有鉛ガソリンであれば鉛の粒子がクッションとなり摩耗しなかったものが、無鉛化により異常摩耗しバルブがシートに沈み込む(リセッション)という現象である。そうなると、当然バルブとシートの密着が悪くなり、圧縮圧の低下から出力ダウンや、バルブクリアランスも詰まるので、バルブの放熱不良からエキゾーストバルブの溶損にまで至る怖れがある。

 無鉛ガソリン以降のエンジンでは、バルブシート(リング)に焼結合金など、より耐熱硬度が高い素材への変更が行われた。また、バルブフェースもシートとの当たり面にステライト(コバルト、クロム、タングステンなどの合金)盛り(放電溶射)処理が行われ対応している。

 問題になるのは、1975年以前の旧車となるが、完全対応するにはエンジン加工屋(内燃機屋)さんで、対応するシートリングの入れ替えとバルブの取替を行えば良い訳であるが、製品化した部品などあろうはずもなく、ワンオフで製作するとなると、かなり高額な費用を要することだろう。現在は、4エチル鉛は有毒物として使用できないが、別途の相当する効能のある添加剤があるらしいが、その辺りの知識は知るところではない。

※写真は1枚目が、バルブシート(リング)の外観を、2枚目が溶損して小さくなった排気バルブ(4バルブ式)。

余談
 確かフェラーリのエンジン製造プラントのビデオだったと思うが、シリンダーヘッドへのシートリング圧入に際し、たぶんヘッドは加温(これは100℃程だろう、それ以上ではオーバーヒートと同じく、ヘッドが歪むだろうから)しつつ、シートリングは液体窒素で極低温(-196℃)にして行っているのを見た。なお、フライホイールへのリングギヤの圧入は、昔からリングギヤを過熱して行う焼き嵌めという手法が取られてると聞くが、先のシートリングは冷やし嵌めと呼ぶのか?




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